「足長」ダックスフント!? ホンダ「ダックス」シリーズは15種類も!! オフロード強化型の「マイティダックス ホンダST90」とは
現在でも販売されているホンダのレジャーバイク、動物名シリーズの「Dax(ダックス)」は、1970年代には前後14インチホイールを装備した野性味あふれるバリエーションモデル「マイティダックス ホンダST90」がラインナップされていました。
モノコックフレーム+前後14インチのブロックタイヤは他にない個性派
ホンダのレジャーバイク「Dax(ダックス)」は、昔も今も一目でそれだと分かる独特なデザインが特徴です。そのユニークなフレームはプレスで形作られた鋼板をモナカ合わせのように溶接したモノコック形状となっています。

1969年にデビューした初期型の「ダックスホンダST50」は、ダウンタイプのフロントフェンダーにダウンマフラーでファミリーバイク的な雰囲気のデザインでした。
しかし同時発売された輸出向けの「ダックスホンダST50エクスポート」は、アップフェンダーのアップマフラーでオフロード風味のスタイルとなっています。
輸出先の北米では、アウトドアレジャーの際にたくさんの遊び道具とともに「ダックス」を車に積み、キャンプサイトに着いてからのアクティビティとして楽しんでいました。それゆえ「エクスポート」には野山を走れるオフロード的な要素が盛り込まれています。
家族でバイクを気軽に楽しめるレジャーバイクですが「もっとオフロード性能の良いダックスを」という要望が生まれるのは、いかにもアメリカ人らしい発想です。
そんな時代背景の中、1972年に登場する「マイティダックス ホンダST90」は、「ダックスホンダST50」シリーズをベースにした悪路走破性の高さとタフな装備が特徴です。エンジンは「スーパーカブCS90」系の排気量89ccの空冷4ストローク単気筒SOHCで、低中速で粘り強く、誰にでも扱いやすいバイクでした。
「mighty(マイティ)」とは英語で「強い」という意味で、「マイティダックス」は「勇ましいダックス」という意味合いになります。ベースの「ダックス」に比べて大径となる前後14インチのスポークホイールとブロックタイヤが目を引きます。
フロントサスペンションは正立テレスコピックフォークを装備し、独特のモノコックフレームにも補強が加えられ、パイプ材を使用したスイングアームを採用し、ハンドルバーやシート形状はよりオフロード走行に適した装備とっています。
エンジン特性はキャブレターセッティングにより低中速に重点をおき、マニュアルクラッチのミッションはワイドなギアレシオとなっています。
またアメリカのアウトドアレジャーに配慮し、マフラーは山火事対策として火の粉の排出を防ぐ構造となっています。

当時、国内の「ダックス」シリーズは自動遠心クラッチのオリジナルスタイルとエクスポート、特別色のホワイトがあり、さらに4速マニュアルクラッチのスポーツモデル2機種、そしてそれぞれに排気量50ccと70ccがありました。
そこへ「マイティダックス ホンダST90」が加わり、全部で6タイプ、15機種という大所帯のラインナップでした。
1970年代の「ダックス」シリーズでは最大排気量となる「マイティダックス ホンダST90」ですが、国内ではヒット作とはならず、オリジナル「ダックス」に比べるとマイナーな存在です。
現在の「CT125・ハンターカブ」のヒットを見ると「ダックス125」にも追加して欲しいモデルですが、カスタムのオマージュモデルとしても魅力的です。
「マイティダックス ホンダST90」の当時の販売価格は9万3000円です。
■ホンダ「MIGHTY DAX HONDA ST90」(1972年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ
総排気量:89cc
最高出力:6PS/8000rpm
車両重量:83kg
フレーム形式:鋼板Tボーン(モノコック)
タイヤサイズ(前後):3.00-14
【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
Writer: 柴田直行
カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員