未来へ続く唯一無二のキャラクター!! スズキの電動コンセプトモデル「e-VanVan」の魅力に迫る! ~高梨はづきのきおくきろく。~

毎月「8」がつく日は『高梨はづきのきおくきろく。』です。今回は、「Japan Mobility Show 2025」で出会ったスズキの電動コンセプトモデル「e-VanVan」についてお届けします。

ゲームセンターにあるような、レトロなイメージ

 皆さんこんにちは、バイク女子の高梨はづきです!

 本日の「きおくきろく。」は、「Japan Mobility Show 2025」(一般公開日:2025年10月31日~11月9日)のスズキブースで取材した「電動版のバンバン」、コンセプトモデル「e-VanVan」についてお届けしていくよ!

スズキの電動コンセプトモデル「e-VanVan」は、スズキが築き上げてきた唯一無二のキャラクター、バンバンの魂を未来に届ける存在だった
スズキの電動コンセプトモデル「e-VanVan」は、スズキが築き上げてきた唯一無二のキャラクター、バンバンの魂を未来に届ける存在だった

 展示会場でふと視界に入ってきたその子は、どこか懐かしい丸みを帯びていて、太い足をぽってりと伸ばしていた。近づいてみると確かにバンバンの雰囲気。でもどこか未来の空気もまとっている。

 そんな「過去と未来の間に立つバイク」を前にして、「なぜ今、バンバンを電動で?」という質問を担当の説明員に聞いてみた。

「バンバンって、昔から“遊べるバイク”なんですよね。気軽に乗れて、ちょっとワクワクして。その雰囲気は残したくて……今の時代に合う形でミックスした感じです」

「遊べる」、「ワクワクする」という言葉を何度も繰り返していたのが印象的で、「ああ、これがバンバンの核心なんだ」と妙にしっくりきた。

 そして今回のEVモデルについては、こんな言葉もあったよ。

「モーターサイクルを作ったらこうなるかな? っていうところを提案させていただいてます」

 この「提案」というニュアンスは、まさにスズキが言う「ファンバイクとしてEVの新たな楽しみ方を提案するコンセプトモデル」そのもの。昔の人気車の復刻ではなく、「バンバンの魂を未来仕様に翻訳する」という試みなんだと感じた。

 そこからデザインの話がまた面白くて、担当の方は少し照れながら、こんなふうに話してくれた。

「カラーリングは今のゲーム世代、デジタル世代の人にも響くように……ドット柄みたいな、ちょっと画質が荒い感じをわざと入れてます。ゲームセンターにあるようなレトロなイメージですね」

 実際に近づいて見ると、確かに小さなピクセルが散りばめられたような「昔のゲームが弾けた感じ」があって、懐かしいのに未来っぽい、不思議な質感。

 EVらしいクリーンさとは逆方向に思えるのに、なぜかすごく自然で、むしろ「バンバンらしさ」を強く感じる。

 昔のバンバンがビーチやキャンプの「遊び道具」だったように、「e-VanVan」はデジタル時代の遊び心をまとって生まれ変わっているんだなぁと、このカラーだけでも伝わってくるデザインだった。

「Japan Mobility Show 2025」で展示されたスズキの電動コンセプトモデル「e-VanVan」について、担当の説明員にお話しを聞いたバイク女子の高梨はづきさん
「Japan Mobility Show 2025」で展示されたスズキの電動コンセプトモデル「e-VanVan」について、担当の説明員にお話しを聞いたバイク女子の高梨はづきさん

 そもそも「バンバン」ってどんなバイクなのか──

 一言で表すなら、「太いタイヤ×ゆるい乗り味×気軽に遊べる」という唯一無二の個性を持ったレジャーバイク。

 初代登場は1960年代後半。「VanVan 90」(1969)、「VanVan 50」(1971)、「VanVan 75」(1973)が次々と発売され、当時のキャンプ・ビーチレジャーブームと共に人気を集めたんだ。

 2000年代には「VanVan200」が登場し、街乗りに適した現代版へ。特にヨーロッパでは「ヴィンテージとモダンの中間の雰囲気」、「写真映えする造形」などが評価され、ライフスタイル誌にもよく登場していたみたい。

 しかし排ガス規制(ユーロ4)が重なり、2017年頃に生産終了。「消えてしまった名車」と呼ばれる存在に。

 バンバンは「ファットタイヤ×レジャーバイク」ジャンルの先駆けであり、ほぼ唯一のシリーズ。つまり、スズキが生み出し、スズキだけが長く続け、他メーカーは「ど真ん中のジャンル」へ参入しなかった、という意味で独壇場だったんだ。

 ただし「全く競争がなかった」わけではなく、「似ているけれど違うレジャーバイク」たちが同時期に存在していた。それはホンダの「TLR」や「DAX」、「モンキー」系。方向性は近いものの、ホンダでは「かわいく遊べるバイク」という共通点こそあるけれど、太いタイヤという決定的なポイントが違うため、競合というより仲間。

 カワサキからはレジャーモデルは存在したものの、ファットタイヤ車はなし。

 そんな中で唯一近い雰囲気を持っていたのが、ヤマハの「TW200」。1987年に登場し、太いタイヤでゆるい乗り味。そして「TWカスタムブーム」によって社会現象級の人気へ。

 しかし方向性は全く違い、「TW=都会派ストリート」、「バンバン=アウトドア派レジャー」という住み分けが自然とできていたんだ。

「バンバンらしさ」を象徴する部分のひとつが、太いタイヤとゆるい乗り味
「バンバンらしさ」を象徴する部分のひとつが、太いタイヤとゆるい乗り味

 担当者は「昔のバンバン200というものがありまして……その時のタイヤのパターンを用いてます」と語ってくれた。

「ストリートのスター」だった「TW」に対し、バンバンは「海や野外で遊ぶ相棒」。同じ太いタイヤでも、ルーツが全く違うんだ。だからこそバンバンは50年以上、孤高のキャラでいられたんだね。

 バンバンの魅力はスペックでは語れなくて、「ぽってり愛嬌のある見た目」、「どこでも行ける自由さ」、「ゆるい乗り味」、「初心者も乗りやすい」、「写真映え」、「速さではなく楽しさ」、こういった感覚的な魅力が重なって、他メーカーには無い「バンバンらしさ」になった。

 そんな歴史を背負って「e-VanVan」が現代に立っている。

「特徴的なマフラーの辺りは電動になると寂しい感じになってしまうのでどう埋めたらいいか」、「バッテリーだけだと面白くないので、どう遊び心を持って使えるか」、「昔の要素を抽出して、幅広のハンドルとかミラーを入れてます」など、EVモデルへの細かなこだわりをたくさん話してくれた。

 そして極めつけはこの一言。

「バンバンって、遊べるバイクなんですよね。その感じをどうEVで見せられるかというのを考えました」

 歴史を知ってこの言葉を聞くと、「e-VanVan」がただの電動コンセプトではなく、バンバンの魂を未来に届ける存在だとわかる。

スズキの電動コンセプトモデル「e-VanVan」
スズキの電動コンセプトモデル「e-VanVan」

 バンバンは「争わずに愛された唯一無二の存在」で、スペックやパワーではなく、雰囲気とキャラクターで愛されたバイク。こういう「感覚的な魅力」があったからこそ、他メーカーが真似しても「バンバンの雰囲気」にはならなかったのかもしれない。

 それがスズキが50年以上「独自ジャンル」を築き続けた理由なのかも。そして「e-VanVan」という未来版が登場した今、その歴史がまた動き出しそうで、なんだかワクワクするよね!

 もしこれが市販されたら、また多くの人が海辺やキャンプ場でのんびりと自由を楽しむ日々が戻ってくるのかなぁ。

 ……ということで本日はここまで。また「8」のつく日にお会いしましょ~♪

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Writer: 高梨はづき/hapi

(役者/YouTuber)17歳で普通自動二輪免許取得し、当時の愛車はホンダCB400T。声優を目指して専門学校に入学後、勉学に専念するため同車を手放し一時バイクを離れる。2020年3月にカワサキ・エストレヤを購入し、数年ぶりにバイクの世界にリターン。声優活動を経て、現在は舞台役者・バイカーモデルとして活動中。同時に"hapi"名義でYouTubeチャンネルを開設、自身のバイクライフをマイペースに投稿してます!チャンネル登録お願いします!!

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