カフェレーサー特有の“ネガ”をほとんど感じない!? レーシーなライディングポジションが好感触のトライアンフ「スラクストン400」の実力とは
排気量400ccクラスの水冷単気筒エンジンを搭載するトライアンフの「400」シリーズの中から、現代風にアレンジしたカフェレーサーモデル「Thruxton 400」に試乗しました。いったいどんな乗り味なのでしょうか。
「カフェレーサー」の難しさ
近年の2輪の世界では、古き良き時代の雰囲気を再現したネオクラシックモデルが人気を獲得していますが、この分野でカフェレーサースタイル、セパレートハンドル、バックステップ、ハーフ/ビキニカウル、シングル風シートなどを採用した車両が成功を収めるのは、なかなか難事業ではないか……と、私(筆者:中村友彦)は感じていました。
そのきっかけは、2017年にデビューしたBMW Motorrad「R nine Tレーサー」とドゥカティ「スクランブラー・カフェレーサー」、2022年に登場したホンダ「ホーク11」が、わずか数年で市場から姿を消したことですが、トライアンフが過去に販売した「スラクストン900/1200」シリーズや、スズキ「SV650X」なども、開発ベースのアップハンドル車ほどの人気は獲得できなかったように思います。
だから2025年にトライアンフが「スラクストン400」を発表したとき、私はどうして成功が難しいジャンルに手を出すのだろうという疑問を抱きました。

その背景には、2023年(日本は2024年)から販売を開始した「スピード400」と「スクランブラー400X」の販売が絶好調という事情があるのかもしれませんが、過去の事例を考えると、このモデルが成功を収めるのは容易ではないでしょう。
数多くの専用設計パーツを投入
さて、前フリ的な話が長くなりましたが、2026年から発売が始まった「スラクストン400」は、「スピード400」の基本設計を転用して生まれたカフェレーサーです。
ひと目でわかる専用設計パーツは、「スピード400」に対して246mm低く40mm狭くなったセパレートハンドル、86mm後方27mm上方に移動したバックステップ、ハーフカウル、シングルシートカバー、デザインを改めた燃料タンクとサイドカバーなどですが、ライディングポジションの変更に合わせて、前後ショックやディメンションも最適化されています。
また、ハーフカウルの採用に伴い、重量物であるヘッドライトやメーターをフレームマウントとしたことも、このモデルの特徴です。
そんな「スラクストン400」の価格(消費税10%込み)は、「スピード400」+約10万円の84万9900円からです。
専用設計パーツの数を考えればその設定は当然と思えますし、現在の400ccクラスは高額化が進んでいて、80万円以上のプライスタグを掲げる車両は珍しくないので、高いと感じる人はあまりいないでしょう。

なお水冷単気筒エンジンは、「スピード400」と比較すると高回転・高出力化が図られ、最高出力は40ps/8000rpm→42ps/9000rpmに向上し、その一方で最大トルクは38Nm/6000rpm→37.5Nm/7500rpmに微減しています。
ただしその数値は、同時期に開発された「トラッカー400」も同じですから、「スラクストン400」のために専用チューニングされたわけではありません。
レーシーな乗車姿勢の恩恵
「やっぱり、結構攻めているんだな……」と、今回の試乗で初めて「スラクストン400」と対面し、シートに跨ってハンドルに両手を伸ばした私はそんな印象を抱きました。
じつは試乗前の私は、外観は攻めていても、意外に楽なことを期待していたのですが、そのライディングポジションは十分にレーシーだったのです。
もっとも、レーシーは必ずしも悪いことではありません。このバイクで大小のコーナーが続くワインディングロードを走った私は、「スピード400」とは一線を画する旋回性と一体感に感心し、過去に体験したブリティッシュシングルの名車、BSA「ゴールドスターB32/34」や、ヴェロセット「ベノムスラクストン」などを思い出しました。

ちなみに、近年のカフェレーサーの中にはライディングポジションをレーシーにした結果として、車体のホールドが難しくなったり、ハンドルに妙な力が入りやすくなったりすることがありますが、「スラクストン400」にそういった気配は無く、セパレートハンドルやバックステップが運動性の向上に寄与することが実感できます。
だから同じワインディングロードで「スピード400」と「スラクストン400」を乗り比べたら、「スラクストン400」の方に好感を抱く人は少なくないのかもしれません。
予想以上に広かった守備範囲
もっとも、フレンドリーさやオールラウンダーとしての資質は、開発ベースになった「スピード400」、そして兄弟車の「スクランブラー400X/XC」や「トラッカー400」など、アップハンドル車の方が優位です。だから私は、このモデルの成功は難しいと感じていたのですが……。
「スラクストン400」でさまざまな状況を走るうちに、「アレ?」と思いました。同社が過去に手がけたバーチカルツインの「スラクストン900/1200」シリーズとは異なり、このバイクはセパレートハンドル+バックステップのネガをあまり感じないのです。その理由を考えた私は、車格が小さいから? ……という考えに至りました。
と言うのも、かつての「スラクストン900」の車重・軸間距離・シート高が「230kg・1490mm・820mm」で、「スラクストン1200」シリーズが「217kg・1415mm・805mm」(RとRSのシート高は810mm)だったのに対して、「スラクストン400」は「176kg・1360mm・795mm」なのです。
もちろん、車格が小さいからネガが感じづらいという見方はいささか安直な気がしますが、かつての「スラクストン900/1200」シリーズと比較すると、「スラクストン400」の守備範囲が相当に広いのは事実です。
逆に言うなら、市街地走行やツーリングにも普通に使える守備範囲の広さを把握したからこそ、トライアンフは400ccクラスのカフェレーサーの販売に踏み切ったのかもしれません。

いずれにしても今回の試乗を通して、前述した私の疑問は氷解し、トライアンフのカフェレーサーに対するこだわりをしみじみ実感することになりました。
他国のメーカーにとっては数ある2輪のジャンルの1つなのかもしれませんが、改めて考えると、イギリスはカフェレーサー発祥の地で、だからこそ同社はこのスタイルのバイクをさまざまな形で作り続けているのでしょう。
Writer: 中村友彦
二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。





















