ようやく全貌が明らかに! いまだからわかるカワサキ「Ninja H2/H2R」ティーザー動画のアレやコレ

市販車で唯一、スーパーチャージドエンジンを搭載するカワサキ独自の新開発バイク「Ninja H2/H2R」は、2014年登場の際にティーザー動画を発信していました。登場と同時にオーナーとなった小林ゆきさんが、当時の様子を振り返ります。

ついに車両全体が映し出された!

 世界唯一のスーパーチャージドエンジンを搭載する市販車、カワサキの「H2」シリーズ。まさかのネイキッドスタイル「Z」にまで派生し、発売されたばかりの「Z H2」も話題です。

2014年の登場で真っ先に購入したカワサキ「Ninja H2」(初期型)に乗る筆者(小林ゆき:身長160cm)

 さて、2014年に世界を震撼させて登場した「Ninja H2」「Ninja H2R」は、国際モーターサイクルショー「INTERMOT(インターモト:通称ケルンショー)」で発表される1カ月ほど前から、YouTube上で五月雨式にティーザー動画を24本も発表していました。

 そのティーザー動画を振り返る本コラム、ついに全貌が明らかになる10本目(Vol.10)をご紹介します。

ティーザー動画10本目にしてついに全貌が明らかに! しかし、公道を走れない!?

 どの部分かもわからないシルエットから始まり、音だけの動画、カワサキの歴史を手繰る動画、エキゾーストパイプが真っ赤に熱せられるシーンだけの動画などなど、ディティールを切り取りながら次々に発表されていった「Ninja H2/H2R」のティーザー動画ですが、Vol.10にして初めて全貌が明らかになりました。

2014年9月30日に公開された10本目となるティーザー動画『Ninja H2: Vol.10 Ninja H2R – BUILT BEYOND BELIEF』

「Ninja H2R – BUILT BEYOND BELIEF」と題されたこの動画では……

「Born from the collective effort of the Kawasaki Heavy Industries Group(川崎重工グループの総力を結集して生まれた)」

 ……というテロップから始まり、いわゆる「さんぼんかわ」の「川」の字をアレンジした昔ながらのロゴマークが映し出されます。Vol.5の動画で明らかになったフロントカウルに付いたエンブレムですね。

2014年9月11日に公開された5本目となるティーザー動画『Ninja H2: Vol.5 Historical Emblem』に映し出された昔ながらの「川」をアレンジしたマーク

 そして、独特の形状をしたタンクのシルエットをカメラがパーンしながら捉えていきます。強烈なコントラストが映し出されるのは、いまにして思えばわかる世界初の「鏡面塗装」による効果なんですよね。照明の工夫など映像上の効果だけではないところに、あらためて凄味を感じます。

 そして“Supercharger”のエンブレム、Ninja H2Rのエンブレムへとカメラが移動します。

 じつはこの頃、すでに世界中のバイクメディアが「H2」の写真をスクープしていましたし、サーキット専用モデルの「H2R」というモデルからINTERMOTで発表されるということが報道されていました。ですから、Vol.10のタイトルでいよいよ「H2R」と出てきたので、これはレース仕様なのでは? と思い込んでいました。しかし!

 35秒あたりから浮かび上がるフロントマスクには、バックミラーらしき物体が見えます。レーサーなのにバックミラー!?

 50秒あたりでサイドビューを回転させながらのシルエットが映し出されますが、肝心のバックミラーらしき物体がなんなのかよく見えない。これぞジラしのテクニック。小出し上等、大きくて重いものが得意な川崎重工なのに……!!

 57秒あたりからは「Shaped for Speed(スピードのための造形)」のテロップとともに、後ろ側から俯瞰でカメラが舐めていきますが、バックミラーらしき物体の部分はブラックアウトされていてよく見えません。

「だから、さっきのバックミラーっぽいナニかはナンなんだよ!!」

フロントフォークのキャップはライムグリーンとなっている

 フロントフォークのキャップがきれいなライムグリーンになっているんだな、などと思いながら動画を進めていくと、再びフロントマスクがあらわになっていきます。

 さきほどのバックミラーらしき物体は、思いのほかペラっペラで、薄い翼のような形状になっています。ひょっとして、ここに電子制御によるモニターカメラやセンサーが付いているのかも? などと想像は膨らんでいきました。

 やがて大写しになる黒い謎の物体。

「いや、それ、単なる翼なのか? 羽なのか!!」

 のちにわかったのは、このバックミラーのようなものは「航空宇宙システムカンパニーが開発した遺伝的多目的アルゴリズムによる自動最適化技術を用いて,ダウンフォースが大きくなるように最適化を図った」「ストレークとドッグツース(Dogtooth)」(『川崎重工技法』2019年2月180号8頁)なのだそうです。

 つまり高速走行時に地面に押しつける力、ダウンフォースを発生させるための部品なのですね。

バックミラーの位置に取り付けられているウイング。三次元の複雑な形状をしており、 ドライカーボンでこの形状を作り出すのは非常に高度が技術が必要とされる

 航空機の技術が用いられたというだけでなく、川崎重工社内の航空機カンパニーが実際に開発していたとは。さすがに世界中どこの2輪メーカーを見回しても、このような開発ができるのはカワサキしかありません。

 そして、これものちにわかるのですが、「H2R」はレース用ではなく“サーキット専用”モデルだということ。レースに出られないサーキット専用モデル、だからこそウイングのような出っ張りのある部品が可能になったんですね。

 それまで30秒程度、長くても1分程度のティーザー動画でしたが、Vol.10の動画は2分42秒で構成されており、いよいよ「H2」「H2R」の全貌が明らかになる集大成を思わせるものでした。

 1分25秒あたりからはエンジンの紹介に移ります。エアインテークから真っ赤に塗装されているスーパーチャージャーへ空気が流れていく様子をCGで表現しています。

 続いて、カウルを外した状態の全貌が映し出されます。ここでようやく、本当にフレームがトレリスフレーム(一般的にはトラスフレームとして知られる、パイプ状の鋼鉄をハシゴ状に組み合わせた形状)を採用したのだとわかります。

 1990年代以降、高出力のスーパーバイクモデルはアルミツインスパー形状が当たり前でしたので、これは大きな驚きでした。

川崎重工の総力を挙げて開発された「H2」「H2R」。2014年の登場から明石工場内部に大型のガスタービンなどとともに展示されていた

 当時の状況を振り返ってみると、2014年に発表された「H2」「H2R」のティーザー動画は世界中のバイクシーンを震撼とさせ、大騒ぎになっていたことが思い起こされます。

 そして、今回紹介したVol.10の動画は、ドイツのケルンで開催されたINTERMOTでワールドプレミアとして発表した2014年9月30日に合わせて公開されました。

 その日、残念ながらわたし(筆者:小林ゆき)は日本にいたのですが、「H2」「H2R」にはただならぬ雰囲気を感じていました。

 公道モデルの「H2」は11月に開催されるイタリアはミラノのEICMAで発表されると聞き、歴史的瞬間を見たくなり、ミラノ行きの航空券を予約したのでした(まだまだ続く)。

【了】

【画像】ようやく見えた! カワサキ「Ninja H2/H2R」の全容(12枚)

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Writer: 小林ゆき(モーターサイクルジャーナリスト)

モーターサイクルジャーナリスト・ライダーとして、メディアへの出演や寄稿など精力的に活動中。バイクで日本一周、海外ツーリング経験も豊富。二輪専門誌「クラブマン」元編集部員。レースはライダーのほか、鈴鹿8耐ではチーム監督として参戦経験も。世界最古の公道バイクレース・マン島TTレースへは1996年から通い続けている。

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