絶景の山岳道路!! 自転車で越える北東北の大地と空の回廊 岩手と秋田をつなぐ『八幡平アスピーテライン』とは

岩手県と秋田県を結ぶ『八幡平アスピーテライン』は、標高1500mを越える天空の峠道です。深い森、静かな湖沼、荒々しい火山地形など、走るたびに変化する景色と、登った先で待つ大パノラマを楽しめる、東北屈指のヒルクライムルートです。

八幡平を貫く35kmの山岳道路「アスピーテライン」

 岩手県と秋田県の県境に広がる八幡平(はちまんたい)は、日本百名山にも選ばれていることから、急峻な「山」を思い浮かべる人もいるかもしれません。しかし実際に目にすると、その姿は想像と少し違います。

アスピーテラインは見返峠で秋田と岩手の県境を跨ぎます
アスピーテラインは見返峠で秋田と岩手の県境を跨ぎます

 八幡平は、標高1613mの主峰を中心に、同じような高さのピークが連なる「高原の台地」のような姿をしています。そびえ立つと言うよりも、ゆったりと広がっています。その独特の地形は爆裂火口跡にできた湖沼や湿原を抱き込み、悠然と北東北の空の下に横たわっています。

 八幡平を東西に突っ切るのが、全長約35kmの山岳道路「八幡平アスピーテライン」です。正式には岩手県側の中腹にある「緑ヶ丘ゲート」を起点とする、約27kmをアスピーテラインとするようですが、ここではヒルクライム全区間を含めた35kmとします。

 1970年に開通し、見返峠(標高1541m)付近をピークに、八幡平の大きな山塊を通り抜けます。八幡平の山頂とわずか100mほどしか違わない高度を通過するため、空に飛び込むような浮遊感が味わえます。

「アスピーテ」とは、楯を伏せたような形をした火山を指すドイツ語の地質用語です。八幡平はかつて、日本におけるアスピーテ火山の典型とされました。しかし、近年の研究では富士山と同じ成層火山であり、なだらかな地形は長年の侵食によるものと判明しました。つまり、この道路名からは、かつての学説をそのまま受け継いだ、「地質学の歴史」を感じることができます。

岩手山に見守られるヒルクライムに挑戦

 まずは岩手県側からのルートを紹介します。起点は観光リゾートの安比高原も近く、補給や前泊の拠点にも便利なエリアです。

岩手県側のヒルクライムは、常に岩手山が大きな存在感を放ちます
岩手県側のヒルクライムは、常に岩手山が大きな存在感を放ちます

 全長19kmの長距離ヒルクライムは、序盤から容赦ありません。勾配のきつい区間が続き、次々と現れるスノーシェルターが冬の厳しさを物語ります。標高が上がるにつれて、地熱発電所や剥き出しの地表が現れて、活火山の息吹を感じさせます。

 中盤を過ぎると木々は背を低くし、岩手山が背後に堂々と現れます。斜度も少し緩み、短い下りや平坦区間が現れるため、呼吸を整えながら高度を稼げます。

 前方に見返峠のビジターセンターが見えてくると、ゴールまであとわずか。荒涼とした地形に蒸気が立ち上り、高山植物が彩りを添える光景は、北東北の夏そのものです。

 見返峠からの眺望は圧巻です。秋田県側には緩やかな丘が幾重にも続き、やがて奥羽山脈と溶け合っていきます。岩手県側を振り返れば、圧倒的な存在感を放つ岩手山と、遠くの街並みが一望できます。

秋田県側のルートは、入念な準備を

 秋田県鹿角市の市街地から約20km離れたところに、アスピーテラインの秋田県側の起点があります。市街地から遠く、補給場所もローカルな商店があるのみです。アプローチで少しずつ標高を上げていくので、意外とエネルギーを使います。鹿角市街地で、しっかり補給を準備しておきましょう。

見返峠の秋田県側の展望台からは、遠くまで連なる峰々を一望できます
見返峠の秋田県側の展望台からは、遠くまで連なる峰々を一望できます

 秋田側も岩手側と同じく、時折平坦や緩い下りを挟みながら標高を上げていきます。全長は16kmで、こちらの方がより深い森の中を登る印象があります。中腹に現れる後生掛温泉をはじめとした名湯が、この地が火山活動の活発な地であることを思い出させてくれます。

 見返峠が近づくと、展望が一気に開けます。見返峠の直前でアスピーテラインの最高地点を通過するので、最後はダイナミックな火山地形の中に、緩い下りで飛び込んでいくような「ご褒美」が待っています。

寄り道も魅力的な、大スケールのサイクリングエリア

 八幡平山頂付近には八幡沼や鏡沼があり、登山道も整備されています。麓には藤七温泉、蒸ノ湯温泉、後生掛温泉など、火山の恵みを存分に味わえる秘湯が点在しています。

 高原サイクリングを楽しめる安比高原や、東洋一の硫黄鉱山でもあった松尾鉱山跡などの観光地も、自転車旅の合間に立ち寄る価値があります。

 八幡平アスピーテラインには、春には雪壁が数メートルにもなる「雪の回廊」が出現します。夏は深緑、秋は紅葉と、季節ごとに全く異なる表情を見せてくれます。通行できるのは4月中旬から11月上旬まで。高地特有の天候急変や夜間通行止めには要注意です。

 ここはただの峠道ではありません。北東北の大地と空をつなぐ回廊です。ペダルを踏み続けた先に広がる景色と空気を、自らの力で体感する悦びは格別なのです。

【画像】圧巻の眺望!! 岩手と秋田をつなぐ大スケールの山岳道路「八幡平アスピーテライン」を見る(13枚)

画像ギャラリー

Writer: 才田直人

1985年生まれ。学生時代に通学用に購入したロードバイクをきっかけにトレーニングを開始。サイクルロードレースの全日本選手権参戦やフランスでの選手生活、国内での社会人兼選手生活を経て2023年に引退。日本だけでなく東南アジアなど自転車旅をこよなく愛し、現在はワーケーション自転車旅を続けている。専門的な知識と経験でTV出演やヒルクライムイベントのアテンド、講師なども務める。

編集部からのおすすめ

CB750Fにまたがって「バリバリ伝説」の世界をVR体験できる! バイク王がバイカーズパラダイス南箱根の7周年イベントに出展【PR】

CB750Fにまたがって「バリバリ伝説」の世界をVR体験できる! バイク王がバイカーズパラダイス南箱根の7周年イベントに出展【PR】

最新記事