ジャガーやプジョーを思わせる!? 「ネコ足」を獲得したBMWモトラッド新型「R 1300 RS」&「R 1300 R」とは

2025年6月より国内導入されたBMW Motorrad新型「R 1300 RS」と「R 1300 R」は、排気量を1300ccに拡大した水冷ボクサーエンジンを「R 1300 GS」譲りのフレームに搭載する兄弟車です。全面刷新されたスポーツツアラーとロードスターの乗り味はどのようなものなのでしょうか。試乗しました。

2種類のフロントサスペンション

 近年のBMWモトラッドが販売しているボクサーツインエンジンを搭載する「R」シリーズは、フロントサスペンションがテレレバーの「GS」、「GSアドベンチャー」、「RT」と、テレスコピックフォークを採用する「RS」および「R」という2系統に大別できます。

BMW Motorrad新型「R 1300 R」(2025年型)に試乗する筆者(中村友彦)
BMW Motorrad新型「R 1300 R」(2025年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 そして2種類のフロントサスペンションの違いに安易な優劣を付けることはできないのですが、以下に記す2025年型の価格から推察するなら、コストの抑制という視点では、テレレバーよりテスコピックフォークのほうが優位なのかもしれません。

「R 1300 GS」285万円~358万7000円

「R 1300 GSアドベンチャー」333万5000円~368万4000円

「R 1300 RT」366万1000円~404万3000円

「R 1300 RS」218万4000円~301万7000円

「R 1300 R」210万5000円~281万6000円

「R 1300 GS」譲りのエンジンとフレーム

 さて、まずはシリーズ全体の話から始めましたが、当記事で紹介するのは2025年型で10年ぶり、2019年に登場した「R 1250 RS」と「R 1250 R」をベツモノとするなら6年ぶりのフルモデルチェンジを行った、スポーツツアラーの「R 1300 RS」とネイキッドロードスターの「R 1300 R」です。

 この2台の最大の注目要素は、排気量が1300ccの水冷ボクサーツインや板金シェル構造のスチールフレームなど、2023年に登場した「R 1300 GS」が基盤を作った構成を導入したことでしょう。

 ただし排気系は専用設計で、パワーユニットは吸気系や冷却系を改善、フレームはテレスコピックフォークに適合する刷新を実施しています。

 と言っても、アグレッシブな印象となった外装部品や運動性能の向上を目指した足まわり、多種多様な電子デバイスなども新規開発で、先代の「R 1250 RT」や「R 1250 R」との共通部品はほとんど存在しません。

新たな機能を導入した前後ショック

 そんな新型「RS」と「R」で私(筆者:中村友彦)が最も興味を惹かれたのは、ツーリングモデルが導入した「DSA(ダイナミック・サスペンション・アジャストメント)」です。

 既存のダイナミックESA(エレクトリック・サスペンション・アジャストメント)の進化型となるこの電子デバイスの特徴は、状況に応じて前後ショックのスプリングのプリロードと減衰力が自動で変化することと、スプリングレートがソフトとハードの2種から選択できることです。

BMW Motorrad新型「R 1300 RSツーリングASA」(2025年型)に試乗する筆者(中村友彦)
BMW Motorrad新型「R 1300 RSツーリングASA」(2025年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 もっとも、ボクサーツイン搭載の「R」シリーズは10年以上前から前後ショックをセミアクティブ式とした減衰力の自動可変機構を装備していますし、「RS」と「R」は先代の「R 1250」時代の途中から、リアショックにプリロードの自動可変機能を採用していました。

 また、フロントサスペンションがテレレバーの「GS」と「GSアドベンチャー」は、「R 1300」に進化した時点でDSAを導入しています。ちなみに「R 1300 RT」では、似て非なる電子デバイス「DCA(ダイナミック・シャシー・アダプテーション)」を採用。

 ただしテレスコピックフォークを採用する車両で、フロントとリアの両方にプリロードの自動可変機能とスプリングレートの選択機能を装備したボクサーツイン車は、おそらく「RS」と「R」が初でしょう。

 なお、この2機種のサスペンションには3種類が存在し、スタンダードはダイナミックESA、上級モデルのツーリングはDSAを装備し、ツーリングのパフォーマンスパッケージバージョンはDSA+スポーツ指向の前後ショック(全長が長く、減衰力がハードな設定)を採用しています。当記事では市場で主力になりそうな、ツーリングの標準仕様をテストしました。

ジャガーやプジョーを思わせるネコ足

 どちらのモデルも軸間距離が先代より十数ミリ短いのですが、車重は大差なく、先代より格段にスポーティでした。ベタな表現をするなら、よく走り、よく曲がり、よく止まるし、乗り手の操作に対する反応が機敏で、車体姿勢や接地感の変化がダイレクトに伝わってきます。

BMW Motorrad新型「R 1300 R」(2025年型)
BMW Motorrad新型「R 1300 R」(2025年型)

 そういった特性が構築できた一番の原因はやっぱりDSAで、とてつもなく守備範囲が広い前後ショックでしょう。

 2種類が存在するスプリングレートのどちらを選択しても、両車の足まわりは路面の変化に柔軟に対応してくれるので、どんな状況でも臆することなく思い切ってアクセルを開け、思い切ってブレーキをかけ、思い切って車体を傾けることができます。

 いずれにしてもこの路面追従性は、テレレバー式フロントサスペンションを採用する「GS」や「GSアドベンチャー」、「RT」のガッチリした感触とは異なっていて、私は4輪のジャガーやプジョーの評価でよく使われる、「ネコ足」という言葉を思い出しました。

 もちろん、両車のスポーティさの原因は前後ショックだけではありません。「R 1300 GS」譲りのエンジンとフレームの導入でマスの集中化を図ったことや、先代より低くなったハンドルグリップによってマシンとの一体感が得やすくなったこと、「S 1000 RR」系から転用したトラクションコトロールの効果でアクセルが開けやすくなったことなども重要な要素です。

 そして先代と比較するなら、エンジンがパワフルにしてトルクフルになり(最高出力は136から145psに、最大トルクは143Nmから149Nmに向上)、全域でシャープで軽やかな吹け上がりが堪能できるようになったことも、スポーティさには大いに貢献しています。

 ただし、足まわりを抜きにして両車の魅力は語れないですし、この2機種の開発陣には「テレスコピックフォークで、テレレバーに負けない運動性を構築しよう!!」という明確な目標があったのではないでしょうか。

BMW Motorrad新型「R 1300 RSツーリングASA」(2025年型)
BMW Motorrad新型「R 1300 RSツーリングASA」(2025年型)

 もっとも、冒頭に記したようにボクサーツインのテレスコピックフォーク車はテレレバー車より価格が安いのですが、現在の私はその理由はフロントサスペンションの差異ではない……と感じています。

 と言うより、BMWモトラッドが「RS」と「R」の価格を低めに設定している主な理由は、ボクサーツインシリーズの敷居を下げるためで、開発と製造コストは「GS」や「GSアドベンチャー」、「RT」と大差がないのかもしれません。

【画像】あえて注目すべきは「足」!? BMW Motorrad新型「R 1300 RS」と「R 1300 R」を見る(28枚)

画像ギャラリー

Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

編集部からのおすすめ

バイク王なら欲しいバイクが必ず見つかる! QUOカードキャンペーンの今がチャンス!!【PR】

バイク王なら欲しいバイクが必ず見つかる! QUOカードキャンペーンの今がチャンス!!【PR】

最新記事