2021年はココに注目!? 手に汗握るバイク草レースと、海外ビッグネームの新型車

『バイクのニュース』でもおなじみの、2輪メディア業界で活動するライター・中村友彦さんに、2021年の展望を伺いました。

多種多様なモンスターが戦う異種格闘技戦

 バイクは大好きでも、レースには興味がない。世の中には、そういうライダーがたくさんいると思います。また、MotoGPとSBKはチェックしていても、日本のレースには関心がない、という人もいるでしょう。

TOTに参戦した『チームカガヤマ』のレース車輌。リアはツインショック、気化器はTMRφ40mmキャブレター。ライダーは現役レーサーの加賀山就臣選手。2018年には春秋連覇。2020年「KAGURADUKI-STAGE」は予選4位、決勝3位

 2021年を迎えるにあたって、そういう方々にぜひとも注目していただきたい、できることなら会場に足を運んで欲しい、と私(筆者:中村友彦)が考えているのが、以下の2つのロードレースです。

 ひとつは、茨城県の筑波サーキットで、5月と11月に開催される『TOT(テイスト・オブ・ツクバ)』です。もっとも、1970年代から1980年代に生まれた旧車が主役のTOTは、わざわざここで紹介しなくても、毎回1万人前後の観客が集まる大人気イベントレースなのですが、新型コロナウイルスの感染対策として、初の無観客開催となった2020年の「KAGURADUKI-STAGE」を取材した私は、これは改めて宣伝せねば! と感じました。その一番の理由は最高峰クラスの「ハーキュリーズ」で、手に汗を握りっぱなしの、最高に面白いバトルが楽しめたからです。

 ハーキュリーズの魅力は、“鉄フレームなら何でもアリ”という規定の中で、現代の一般的なレースでは考えられない、異種格闘技戦が繰り広げられることでしょう。そういう意味では、以前からこのレースは予想外の展開が多かったのですが、2020年のKAGURADUKI-STAGEでは、なんと1970年代の空冷Z用エンジンを搭載する『ACサンクチュアリー』の「A16R」が、圧倒的なパワーを誇る水冷エンジン勢を抑えて、58秒071というタイムで総合ポールポジションを獲得したのです。ただし残念ながらA16Rは、決勝は序盤でリタイアしたのですが、以後の三つ巴のバトルに、関係者は完全に釘づけになりました。

 決勝レース序盤をリードしたのは、オリジナルフレームにGSX-R1000用エンジンを搭載する『チームカガヤマ』の「SUZUKI刀1000R」でした。ただし3周目以降は、ストレートで圧倒的なスピードを発揮するスーパーチャージャーを備えた、『ガレージ414&ウッドストック』の「H2R」がトップで周回を重ねます。とはいえ、その2台を抜き去り、ハーキュリーズ3連覇を飾ったのは、高度なチューニングが施された『パワービルダー』の「GPZ900R」だったのです。

 その光景を間近で見た私は、もしかしたら黎明期の鈴鹿8耐やAMAスーパーバイクは、こういう雰囲気だったんじゃないか……と感じました。もちろん1970年代と現代では、すべてのレベルが違うのですが、予想外の出来事が頻繁に起こること、マシンとライダーの創意工夫が存分に感じられることは、かつて多くの観客を集めた名レースとTOTに共通する要素のような気がします。

カワサキ「Ninja ZX-25R」の参戦で、JP250が面白くなる!

 TOTの話がずいぶん長くなりましたが、私がオススメしたいもうひとつのレースは、全日本ロードレース選手権と併催される、MFJカップ『JP250』選手権です。

ブルーチタンサイレンサーやカーボン製のカウルを装着した、カワサキ「Ninja ZX-25R」レースイメージ車輌

 2016年から始まったこのレースの排気量規定は、2気筒車が200から250cc、単気筒車が250から300ccで、2017年以降はノーマル状態で最もサーキット指向が強い「CBR250RR」が圧倒的な多数派になっていました。そういう意味では、TOTのような面白さはほとんどなく、若手ライダーの成長を楽しむレースという印象だったのですが……。

 2021年からは、並列4気筒を搭載する「Ninja ZX-25R」の参戦がOKになるのです。もっとも既存の並列2気筒勢とのバランスを取るため、ZX-25Rにはハンディが設定されるのですが(当面の設定は、ライダー込みの最低重量が2気筒車は200kg、4気筒車は220kg、音量測定回転数が2気筒車は7500rpm、4気筒車は11500rpm)、「2気筒 vs 4気筒」のガチンコバトルは、「2スト2気筒 vs 4スト4気筒」という図式だった、往年のTT-F3に通じるところがあって、かなり楽しめそうな予感がします。

「R 18」と「パン・アメリカ」の意外な共通点

 自分の購入対象になるかどうかはさておき、私が2021年の新型車で興味を抱いているのは、BMWがついに市場に投入した「R 18」と、ハーレー・ダビッドンが近日中の発売を予定している「Pan America(パン・アメリカ)」です。

2020年日本に上陸したBMW Motorradの新型車「R 18(アール・エイティーン)」。史上最大排気量となる伝統のボクサーツインエンジンを搭載。ドイツからやってきた巨艦

 大排気量クルーザーとアドベンチャーツアラーを一緒に語ることに対して、世の中には違和感を覚える人がいるかもしれませんが、実はこの2台には意外な共通点が存在するのです。

 まずひとつ目の共通点は、どちらもリベンジ、と言うか、再チャレンジであること。BMWは1997年から2004年に「R1200C」シリーズ、ハーレー・ダビッドソンは2006年から2009年に「Buell(ビューエル)」ブランドとして「ユリシーズ」を発売していますが、各社各様の理由で市場から撤退しました。ちなみにR1200Cとユリシーズは、いずれも既存のモデルから基本設計の何割かを転用していたのですが、大排気量クルーザー、アドベンチャーツアラーというジャンルに久しぶり参入するにあたって、R 18とパン・アメリカは全面新設計という手法を選択しています。おそらくBMWとハーレー・ダビッドソンは、過去の反省を踏まえて、やるからにはとことんやらねば、と決意したのでしょう。

ハーレー・ダビッドソン初のアドベンチャーツーリングバイク「Pan America(パン・アメリカ)」

 ふたつ目の共通点は、お互いの得意分野に真っ向勝負を挑んでいること。バイク好きならご存知だと思いますが、近年のBMWの稼ぎ頭はアドベンチャーツアラーの「GS」シリーズで、ハーレー・ダビッドソンは言わずもがな、昔からクルーザーが得意なメーカーです。つまりそれぞれのシェアを奪うべく、BMWとハーレー・ダビッドソンは本気を出して来たわけですが、この2台にはシェアを奪うのではなく、新規ユーザーを獲得する車両になって欲しい……と個人的には感じています。

【了】

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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