バイク用エアバッグ、車体装備ではなく人間がまとうスタイル ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.174~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、身を護るための装備は、ある程度の重みが安心感の源だと言います。どういうことなのでしょうか?

見た目も機能もスマート、煩わしさは皆無

 僕(筆者:木下隆之)が普通二輪免許(限定解除)を取得したその足で駆け込んだバイク用品店で、真っ先に購入したのは「身を護る装備」である。

ダイネーゼ社製ワイヤレスエアバッグシステム「D-air」を搭載した「スマートジャケット」
ダイネーゼ社製ワイヤレスエアバッグシステム「D-air」を搭載した「スマートジャケット」

 ヘルメットやグローブはすでに所有していたけれど、膝やくるぶしを保護するプロテクターと、エアバッグを購入したのだ。

 ダイネーゼの「スマートジャケット」は定価14万9600円と、値段だけ見ればなかなか高価な装備だけれど、これで万が一の際に自分の命が救えるかもしれないと思い込ませ、清水の舞台から飛び降りた。胸と背中を守ってくれる。

 印象が良いのは、いちいちバイクに何かを接続する必要が無いことだ。コントロールユニットのバッテリーは、事前にUSBで充電しておけば、最大26時間の連続使用が可能だと言う。徹夜のノンストップライディングなどはやらないだろうから、仮にロングツーリングをしても、旅先の宿でスマホに電力を注ぐかたわら、こいつをソケットに差し込めばいい。翌日の朝には満充電だ。

 胸のスイッチをオン。ウルトラマンよろしく、小さなランプが点灯する。ブルブルと微振動することでスタンバイ状態であることを伝える。だがその段階では、エアバッグは破裂しない。スマートジャケットがエンジンの微振動を感じることで、本格的な作動状態になるのだ。

 つまり、エンジンを切っていれば、たとえば乗り降りで立ちゴケしても安易には作動しない。エアバッグは一度作動させてしまうと、交換だのメインテナンスに費用がかかる。命を救ってくれた代償だと思えば安いものだが、立ちゴケで高額出費はあまりにも悲しい。心優しい配慮なのだ。

 着心地も悪くはない。ベストタイプで夏場にも対応する。通気性もある。ずっしりと肩に重みを感じるが、そもそもバイク乗りは重装備だから、慣れた体にはそれほど負担にはならないだろう。

 幸か不幸か、安全性は確認できていない。MotoGPの実践テストで開発したと言うから、おそらく防護力は高いのだろう。それを信じるしかないのだが、ずっしりとしたその重みが、かえって安心感の源である。

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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