退屈な毎日から姿を消した主婦が向かった先は……

　リチャード・リンクレイター監督×ケイト・ブランシェット主演で話題のヒューマン・コメディ『バーナデット　ママは行方不明』。

　アカデミー賞6部門ノミネートの『6才のボクが、大人になるまで。』などで多くの映画ファンに愛されるリチャード・リンクレイター監督待望の新作は、2012年に出版されニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーに約1年間リスト入りした、アメリカの作家マリア・センプルによる小説「where’d you go Bernadette」の映画化作品。アメリカで長く愛されるこの小説は、全米図書館協会アレックス賞を受賞するなど文学作品としても高い評価を得ています。

　そしてもう一人、この小説に魅せられたのが、主演のバーナデット役を務めたオスカー女優、ケイト・ブランシェット。『ブルージャスミン』『キャロル』『オーシャンズ8』『TAR/ター』など多岐にわたるジャンルで幅広いキャラクターの主人公を演じてきたブランシェットは、破天荒で常識を超えた言動に走る主人公バーナデットを、チャーミングで憎めない人物に作り上げています。そんな深い共感を呼ぶキャラクターを生み出したブランシェットは、本作で見事10度目となるゴールデン・グローブ賞ノミネートを果たしました。

——シアトルに暮らす主婦のバーナデット。仕事のできる夫と仲良しの娘に恵まれ一見幸せそうに見えますが、バーナデットは極度の人間嫌いでいつもトラブルを起こし、ママ友たちからも煙たがられていました。かつては天才建築家として活躍していたのに夢を諦めたあの日から、日に日に息苦しさを募らせていたのです。そんななか、ある事件をきっかけに、この退屈な世界に生きることに限界を感じたバーナデットは、忽然と姿を消してしまいました。彼女が向かった先、それは……南極！

　圧倒的なスケールで観客を非現実へと誘う南極のシーンは、ブランシェットからの「海と氷は本物であるべき」という強い希望で、グリーンランドでの撮影を敢行。壮大な自然美が映画を彩ります。また、主題歌に使用されるのは1984年にリリースされるや全米1位を記録し、日本でも大ヒットしたシンディ・ローパーの「タイム・アフター・タイム」。早くから女性の社会的地位向上への支援を続けるシンディの優しくも力強い歌声が、明るい未来を予感させます。

　あらゆる名声を手にしながら難役にも果敢に挑むブランシェットは、もちろんバイクとも競演済み。華麗な窃盗チームの一員を演じた『オーシャンズ8』（2018年）でトライアンフのスラクストン1200Rに乗るクールな姿は、誰しもがうっとりしたことでしょう。

『バーナデット　ママは行方不明』は2023年9月22日（金）より新宿ピカデリーほかにて全国公開中です。