夜間走行時は「ハイビーム」が基本! それホント!?
夜間に道路を走行する際は、対向車や前走車が眩しくならないよう、ヘッドライトは通常「ロービーム」を使うのが常識……と思いますが、じつは法令で「夜間走行は原則的にハイビームが基本」と定められています。ご存知でしょうか?
「ロービーム」がマナーだと思っていたけれど……
バイクのヘッドライトは、前方を遠くまで照らす「ハイビーム」と、近くを照らす「ロービーム」に切り替えられますが、道路運送車両法の保安基準では、ハイビームを「走行用前照灯」、ロービームを「すれ違い用前照灯」という名称があります。

それぞれの名称からも想像できる通り、夜間の走行時は原則的にハイビームを使用し、対向車など他の車両とすれ違う時にロービームを使うよう定められています。この法令は2017年3月の改正道路交通法施行で明確化されましたが、じつはずっと昔の昭和35年(1960年)の道路交通法から制定されているのです。
現実的に、対向車や前走車が眩しくないようにと「基本はロービーム」のライダーが多いのではないでしょうか? ところが道路交通法では、夜間走行時は適切にハイビームを使用しないと、ライトが点灯していない状態と同等の『無灯火違反』が適用される可能性があります(違反点数と反則金アリ)。
とはいえ「他の車両と行き違う時」や、「他の車両等の直後を進行する場合」は、適切に減光(ロービームに切り替える)しないと、やはり道路交通法で『減光義務違反』になってしまいます(反則金アリ)。

なんだかややこしい感じもありますが、夜間に走行する際は『無灯火違反』と『減光義務違反』にならないように、かなりマメにハイビームとロービームを切り替える必要がある、ということになります。
ハイビームとロービームを切り替えるタイミングを間違えると周囲に迷惑だから……と、ずっとロービームで走っているライダーも多いかもしれません。しかし近年の調査では、夜間の事故がロービームの使用時に多いこともわかってきているので、面倒がらずに、マメに切り替えるようにしましょう。
自動で切り替える「オートハイビーム」も登場
じつは2017年3月の改正道路交通法施行で「夜間走行は原則的にハイビームが基本」が明確化されたことで、クルマは自動でハイビームとロービームを切り替える装置「AHB(オートハイビーム)」(※メーカーによって呼称は異なる)を装備する車両が増えてきました。

そしてバイクでも、カワサキが2023年モデルの「Ninja H2 SX」シリーズにオートハイビームを装備しました。これはカメラセンサーで対向車や前走車、街灯などの明るさを判断して、状況に応じて自動的にハイビーム/ロービームを切り替えてくれる便利な機能です。
おそらく今後は、大型ツアラー系のモデルなどから普及していくのではないでしょうか。

夜間の事故防止のためにも「原則的にハイビーム」は有効ですが、だからといって、ずっとハイビームのままで走るのがNGなのは言うまでもありません。対向する両車ともにハイビームだと「蒸発現象」を起こし、間にいる横断者が見えなくなる危険もあります。
また、自分の後方を走るクルマやバイクがハイビームだと、バックミラーが眩しいのは当然のこと、「煽られている」と感じて無用なトラブルに発展する危険もあります。
というワケで、法令で定められているから、だけでなく自分と周囲の安全のためにも、夜間はマメにハイビームとロービームを切り替えて走りましょう!
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。








