高速道路に設置された「ワイヤーロープ」は危ない!何故なのか?

最近になって、暫定2車線区間の中央帯部分に「ワイヤーロープ」が設置された高速道路が増えてきました。このワイヤーロープは、いったいなんのために設置されているのでしょうか。

高速道路にワイヤーロープ?その正体とは

 高速道路というと中央分離帯で上下線が区切られた、片側2車線以上の比較的広い道路というイメージがあるのではないでしょうか。しかし高速道路のなかには、対面通行となる暫定2車線(片側1車線)の区間も全国に点在しています。バイクツーリングで日本のあちこちを旅をした経験がある人は、走った記憶があるかもしれません。

暫定2車線区間の中央帯部分には、これまでは柔らかい素材でできたラバーポールが設置されていた
暫定2車線区間の中央帯部分には、これまでは柔らかい素材でできたラバーポールが設置されていた

 暫定2車線区間の中央帯部分には、これまでは柔らかい素材でできたラバーポールが設置されていました。ラバーポールはオレンジやグリーンの目立つカラーリングが特徴で、目印として効果が高く柔軟性があるため、車体が接触したときの警告として優れた素材です。
 
 しかし最近になって、ラバーポールではなく「ワイヤーロープ」が設置される道路も目にするようになりました。このワイヤーロープは、高速道路を走るときに危険ではないのでしょうか。

 前述のラバーポールには、クルマが車線を逸脱して対向車線へ飛び出そうとするときに、衝突のエネルギーを受け止めることできないという弱点がありました。そこで対向車線への飛び出し対策として、ラバーポールの代わりにワイヤーロープが採用されたようです。

5本のワイヤーロープを張った防護柵でできている「ワイヤロープ式防護柵」
5本のワイヤーロープを張った防護柵でできている「ワイヤロープ式防護柵」

 正式名称は「ワイヤロープ式防護柵」。5本のワイヤーロープを張った防護柵でできており、クルマが衝突してもロープのたわみと支柱で衝撃を吸収して対向車線に飛び出すのを防いでくれます。

 ワイヤーロープの設置工事は2017年の春から進められてきました。全国の高速道路の約3割が暫定2車線区間となっており、2023年12月時点でワイヤーロープ設置がほぼ完了しているそうです。

 では、暫定2車線区間でのワイヤーロープの設置はどれくらい効果があったのでしょうか。

 まず、ワイヤーロープ設置前の2016年の1年間の対向車線への飛び出し事故の件数は、全国で194件発生しています。これに対し、ワイヤーロープ設置後の2017年から2021年の5年間の発生件数は、全国でわずか8件という水準まで激減しました。

 この8件のうち、ほとんどがトレーラーやバスなどの車両重量8トン以上の大型車です。クルマやバイクなどの小型車にいたっては、飛び出し事故件数は0件という結果がでています。ワイヤーロープが設置されている高速道路では、普通車やバイクであれば、反対車線への飛び出し事故をほぼ防げるといってもよいかもしれません。

 一方で、設置が進むにつれてワイヤーロープへの接触事故も増加傾向にあります。ワイヤーロープの接触事故は設置が始まった2017年が240件でしたが、2021年には913件まで増加し、5年間で2397件の接触事故が発生している現状です。

 このように、ワイヤーロープへの接触による単独事故は増加の一途をたどっています。ワイヤーロープの接触の原因はさまざまですが、居眠り運転やタイヤのバーストなどで右側へ斜行し衝突するケースが多いようです。そのほか、ワイヤーロープ自体が目立たないため、視認性が悪いことも事故の原因として挙げられます。

 これまでワイヤーロープの視認性を向上させるための対策には、支柱に反射テープを取り付ける手法がおこなわれてきました。

 またこのほかの接触事故対策として、支柱上部に反射材やデリネータを取り付けたり、支柱にカラーのカバー被せたりなどして、ワイヤーロープを目立つようにする工夫がおこなわれています。また、白色やオレンジ色の導流レーンマークをワイヤーロープの左右の路面にペイントして、運転者の注意を促す取り組みもおこなわれているようです。

ラバーポールが残る長大橋梁とトンネルの区間
ラバーポールが残る長大橋梁とトンネルの区間

 このように、ほとんどの暫定2車線の区間でワイヤーロープが設置されるなか、まだラバーポールのままの箇所が残っています。それが長大橋梁とトンネルの区間です。

 これらの区間は、土工部と比べて道路の幅員が狭く、路面下に排水溝の設備があるため、ワイヤーロープの支柱を打ち込めないという課題がありました。そのためこれらの区間では、対向車線への飛び出し対策の設置工事が未だに着手されてない場所が多いようです。

 そこでNEXCO各社は、これらの区間でも設置できる新たな対策案として、「センターパイプ」と「センターブロック」の導入を決定。

 センターパイプは2本のパイプを連結させた柵状のもので、センターブロックは鉄筋コンクリート製の低い壁状の区画柵を連結させて設置します。今後は、長大橋梁とトンネルの区間にも対策が進められていく模様で、2024年末までにすべての箇所で設置が完了する予定のようです。

※ ※ ※ 

 高速道路の暫定2車線区間では、ワイヤーロープが上下線のあいだに設置されています。これにより、ワイヤーロープへの接触事故が多発していますが、対向車線への飛び出しによる正面衝突などの重大事故は減少傾向にあるようです。

 バイクは身体をむき出しの状態で走行するため、もし正面衝突すればひとたまりもありません。ツーリングでよく高速道路を走るライダーにとって、ワイヤーロープは非常にありがたい設備と言えそうです。

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