「洗車はメンテナンスの第1歩」 重要なのは「その後」!? しっかりと水分を飛ばす!!

昔から「洗車はメンテナンスの第1歩」と言われるくらい、愛車の調子を保つための大切な作業です。しかし「洗った後」にシッカリ乾かさないと、かえって故障の元になるコトもあるのです。

湿ったまま車体カバーをかけるのは……

 愛車をキレイに保つため、また故障を未然に発見するためにも「洗車」は大切な作業です。雨天の走行後や汚れがひどいときは水洗いやシャンプー洗車を行いますが、問題は「その後」です。吹き上げてワックスがけしたら、そそくさと車体カバーをかけていませんか?

「洗車はメンテナンスの第1歩」だが、「洗った後の処置」も重要
「洗車はメンテナンスの第1歩」だが、「洗った後の処置」も重要

 防犯の観点からも、洗車後は速やかに車体カバーをかけて車種の特定などを避けたいのはやまやまですが、それだとカバー内に湿気がこもるため、サビの発生や電装系のトラブルの原因になります。

 またガレージ保管などで車体カバーをかけない場合でも、見えないところに残った水分は意外と長時間乾かないので、やはりトラブルの原因になりかねません。

 したがって洗車後は入念に水気を拭き取り、十分に乾かすことが重要なのです。

「溜まった水」をいかに素早く拭き取るかが勝負!

 シャンプーを使って車体をキレイに洗った後は、まずは水洗いでシャンプー剤を洗い流し、その後、水気をすべて拭き取りましょう。そのためにウエスやペーパータオルを相応に用意しておくのが得策です。

メンテナンス用のペーパータオルは丈夫なので、水分を絞って繰り返し拭き取り作業に使える
メンテナンス用のペーパータオルは丈夫なので、水分を絞って繰り返し拭き取り作業に使える

 拭き取り作業はカウリングや燃料タンクなどの外装パーツを「上から下に向かって」、エンジンや足まわり(チェーンやブレーキなど含む)など「油分」のあるパートは後から拭くのがセオリーです。その際は同じウエスを使わずに、できるだけ拭くパートごとに区別して使いましょう。

 これはエンジンまわりやチェーンなどの油分や、ホイールやブレーキまわりに付着した細かな砂粒やブレーキダスト(金属を含む)を拭き取ったウエスで、カウリングやタンクなどを拭いて傷つけないようにするためです。

 そして拭き取りの際に注意したいのが「車体の右側」です。近年はサイドスタンドのみを装備するバイクが主流で、停車時は左側に傾いています。そのため洗車で濡れた水は車体の左側に流れていきますが、形状的に「水が流れずに溜まる」部分も少なくありません。

 たとえば前後ホイールの下側を見ると、大抵はリムの右側に水が溜まっています。他にもクランクケースやシリンダーヘッドの上面、空冷エンジンの場合はシリンダーの冷却フィンの間などにも、とくに車体の右側は水が溜まっていることが少なくありません。

 これを拭かずに放置すると、白い水染みが残るだけならまだしも、アルミや金属部分がサビたり、塗装が浮き上がってしまうこともあります。

 そんな「右側の水」を溜めないためには、車重の軽い小型車ならば、車体の右側に立ってバイクを支え、可能な限り右側に車体を傾けて揺すって水を流せば良い……ですが、重量のある中~大型バイクでは困難かつ倒れる危険があるので、現実的に無理でしょう。

車体を押し歩き、フロントブレーキをコツンとかけて急停止させると、各部に溜まっていた水をある程度は振り落とせる。路面に水やシャンプー剤が残っていない場所で行うのが鉄則
車体を押し歩き、フロントブレーキをコツンとかけて急停止させると、各部に溜まっていた水をある程度は振り落とせる。路面に水やシャンプー剤が残っていない場所で行うのが鉄則

 そんな場合は、バイクの左側に立って車体を起こし、取り回しでバイクを前進させ、フロントブレーキをコツンとかけて急停止させると、その勢いで車体の各所に溜まっていた水を振るい落とすことができます。これを何度か繰り返すことでけっこう水気を払えます。

 ここで注意すべきは、水やシャンプー剤で濡れた路面の上でやらないことです。タイヤが滑って「押しゴケ」する危険があります。

 また近年は水冷エンジンのバイクが多く、冷却用のラジエターを備えていますが、このラジエターコアの間に水がビッシリと溜まっていいて、車体を揺すったり「ブレーキでコツン」をやっても流れ落ちません。

 そこで乾いたウエス(十分に絞ったウエス)やペーパータオルを当てて水気を「吸い取り」ましょう。ゴシゴシこすって拭き取ろうとすると、薄いアルミ製の冷却フィンが潰れてしまうので、絶対にこすらずに「そっと当てて吸い取る」を何度も繰り返しましょう。これはオイルクーラーのコアも同様です。

カワサキ「Z900RS」の点火プラグ部分。水冷エンジンやバルブの挟み角が立った高性能エンジンだとプラグ孔が深く、水が溜まって点火プラグが錆びることも
カワサキ「Z900RS」の点火プラグ部分。水冷エンジンやバルブの挟み角が立った高性能エンジンだとプラグ孔が深く、水が溜まって点火プラグが錆びることも

 また旧車や現行車でも、空冷エンジンだと点火プラグがシリンダーヘッドに露出していて水が溜まりにくい車両が多いですが、近年の水冷エンジンだとプラグ孔が非常に深く、プラグキャップの隙間から水が浸入して点火プラグがサビてしまうパターンもあります。

 こういった場所に溜まった水を拭き取るのは容易では無く、バイクショップならエアコンプレッサーの圧搾空気で、エアガンを使ってプシューッ! と吹き飛ばしますが、一般ライダーはエアコンプレッサーなど持っていないのが普通です。

 とはいえ最近はUSB充電で使えるコンパクトな空気ブロワー(ポケッタブルファンやハンディブロワーなど製品名称は様々)が販売されているので、それらを使うのもアリでしょう。

 ハンドルスイッチやメーターまわりに溜まった水分を吹き飛ばしたり、サイドカバーやシートを外して電装部品に付いた水気を飛ばすのにも活用できます。

仕上げに「走って乾かす」!

 しかしどんなに気を使って拭いたり、エアガンや空気ブロワーを使っても、完璧に水気を無くすことは不可能です。

 そこで洗車の仕上げに、10~20分ほどで良いので走行しましょう。走行風とエンジンの熱で、燃料タンクの下など手が届かない細部に残った水分を乾かすことができるからです。

 もちろん走行後はエンジンやマフラーが熱いので、冷えるまではすぐに車体カバーをかけることはできませんが、時間が許すなら洗車後の走行はかなりオススメです。

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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