原2バイクに貼ってある「△」マークってナニ? なんとなくダサいから剥がしたけど、ダメ?
排気量125ccクラスのバイクを見ると、フロントフェンダーの先端に白い帯状のステッカーが、リアフェンダーには白い「△」マークのステッカーが貼ってあります。デザイン的には少々微妙に感じなくもありませんが、コレって何のために貼っているのでしょうか?
原付1種と「見分け」やすくするため
排気量125ccクラスの小型バイク、と言うか、正しくは50cc超125cc以下の「第2種原動機付自転車(原付2種)」のバイクは、フロントフェンダーの先端に白帯、リアフェンダー付近の後方から見やすい場所に白い「△(三角)」マークが貼られています。

この原付2種のみに貼られるマークですが、「三角ステッカー」とか「原付2種表示マーク」などと呼ばれており、正式名称はありません。本記事では「識別マーク」と表記します。
……で、何を識別するのかというと「第1種原動機付自転車(原付1種)」のバイクと異なることを、分かりやすく表示するためです。
免許や交通ルールは違うのに、見た目はソックリ?
ご存じの通り、原付1種と原付2種では、運転するための免許が異なり、交通ルールの制限も大きく異なります。
原付1種は「最高速度30km/h」、「3車線以上の道路での二段階右折」、「乗車定員は1人」といった決まりがあり、違反すると当然ながら罰則もあります。

ところが原付1種と原付2種で、ルックス的にかなり似通ったバイクも存在します。たとえばホンダの「スーパーカブ50」と「スーパーカブ110」はかなり似ています。
バイクに詳しい人からすれば「現行モデルは50と110でホイールの種類やマフラーの色も違う」と簡単に識別できるかもしれませんが、誰もがそのように違いが判るわけではありません。
また1990年代頃までは、同一の車体に基本的にエンジンの排気量のみ異なる(厳密には変速比や減速比なども異なる)スポーツバイクも多数ありました。
たとえばホンダのミニレプリカ「NSR50」と「NSR80」では、ルックス的には車体に描かれたモデル名しか違いが無いので、一目で判別するのは困難です。
そんな似通った原付1種と原付2種を、確実に見分けるために識別マークがあるのです。
「識別マーク」は、剥がしても良いの?
とはいえ、バイクのデザインやカラーリングも含め、前後フェンダーに貼られた識別マークが「なんとなくカッコ悪い」と感じるライダーも少なくないようです。が、もし識別マークを剥がしてしまったら、何らかの違反になったり、罰則があるのでしょうか?

じつはこの識別マークは、1954年に当時の通商産業省重工業局長(現在の経済産業省)/運輸省自動車局長(現在の国土交通省)/警視庁警備部長が、各バイクメーカーに出した「第二種原動機付自転車の標識及び速度計装備について」の通達の中で、「交通取り締まりおよび車両保安上必要」として、フロントの白い帯とリアの△マークの取り付けを求めたものです。
この通達に法的効力はありませんでしたが、バイクメーカーは政府に協力する形で識別マークの貼り付けを始めました。
また、これは日本のメーカーに対しての通達であるため、海外メーカーの原付2種の輸入バイクには識別マークが貼られていない場合が多いです。
というワケで識別マークを剥がしても、法令的に違反になったり罰則はありません。しかし……。
原付1種と間違えられて、しょっちゅう止められるかも……
繰り返しになりますが、原付2種の識別マークは「原付1種と確実に見分けるため」に存在します。したがって識別マークを剥がしてしまうと見分けにくくなるため、ともすれば警察の取り締まりで「原付1種と誤認」され、止められたり職務質問される可能性があります。

ちなみに原付1種はナンバープレートが白色で、原付2種は排気量50cc超90cc以下が黄色、90cc超125cc以下がピンク色になるので、後方からは△マークを見なくても識別可能ですが、車両を前から見た場合は見分けがつきにくいのは事実です。
また直近では、ついに「新基準原付」が発売されました。こちらは既存の原付2種モデルをベースに最高出力を4.0kW以下に制御しているので、ルックス的にはかつての「排気量違いの兄弟車」と同様にソックリです。そして新基準原付の交通ルールは。従来の原付1種と全く変わりません。
なので原付2種で2人乗りをしたり、二段階右折をしなかった時に、前方で見ていた警察官が原付1種と誤認して停止を求められる可能性は十分にあります。
そしてもしかすると新基準原付の登場により、誤認される頻度は以前より高まるかもしれません。
もちろんその場で原付2種と判明すれば問題ありませんが、その都度停止を求められるのは相応に時間のロスでありストレスにもなります。
そういった意味では、違法ではないけれど識別マークは剥がさないほうが無難、と言えるでしょう。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。


















