公道で見かける機会が減ったモノ 「部屋」や「室」を意味する「チャンバー」ナゼ必要? その仕組みとは

バイク歴の長いライダーや旧車好きがたまに口にする「チャンバー」ですが、会話の流れから2ストロークエンジン車のマフラーを指すようですが、4ストロークエンジン車とは何が違うのでしょうか?

パイプではなく「室」???

 バイク歴の長いライダーや旧車好きが口にする「チャンバー」ですが、一体ナニを指しているのでしょうか?

「チャンバー(Chamber)」は、英語では「部屋」や「室」といった意味になります。バイクのマフラーはルックス的にはパイプ(管)ですが、2ストロークエンジン車の場合はチャンバーと呼びます。

 先に「マフラー(muffler)」についてですが、こちらの語源は寒い時期に首に巻くマフラーと同じで、「巻く、包む」といった意味があり、バイクやクルマの場合は「排気音を下げるために包む装置」という意味になります。「サイレンサー(silencer)」とも呼ばれ、いずれも「消音機」を指しています。

 現在主流の4ストロークエンジン車の場合も、排気ガスを排出する装置を総称して「マフラー」と呼ぶことが多いですが、厳密に言えば、排気音を静かにする部分のみが「マフラー」または「サイレンサー」であり、そこに至るまでは「排気管(エキゾーストパイプ)」になります(他にも部位によって細かく名称が分かれる)。

ヤマハ「R1-Z」のチャンバー。バイクのキャリアが長いライダーや旧車好きにはお馴染みかもしれないが……
ヤマハ「R1-Z」のチャンバー。バイクのキャリアが長いライダーや旧車好きにはお馴染みかもしれないが……

 そこで話を戻して「チャンバー」ですが、正式には「エキスパンション・チャンバー(Expansion Chamber)」と呼び、「膨張室」という意味になります。

 これは2ストロークエンジン車では性能に関わる重要な部位であり、排気ガスを排出するパイプというより、エンジンの一部と考えた方が良いかもしれません。

2ストロークエンジンの大切な一部

 4ストロークエンジンは、ガソリンと空気を混ぜた混合ガスを燃料にして「吸気→圧縮→爆発(燃焼)→排気」の4つの行程を、ピストンが上下する4回の動き(ストローク)で行います。それをコントロールしているのが吸気バルブや排気バルブで、それらのバルブを開閉するカムシャフトが担っています。

 対する2ストロークエンジンは、ピストンが上がる際に混合ガスの「吸気」と「圧縮」を同時に行い、「爆発(燃焼)」と「排気」をピストンが下がる動作で行います。

 そのためクランクシャフトが2回転で1回爆発する4ストロークに対し、2ストロークはクランク1回転毎に爆発するため大きなパワーを得られ、かつてはGPマシンに使われ、それを元にしたレーサーレプリカにも採用されました。

 また2ストロークは吸気や排気のコントロールを、シリンダーの壁に開けた「ポート」と呼ぶ「孔(あな)」で行い、4ストロークのようなカムシャフトや吸排気バルブを持ちません。

 そのシンプルな構造も、摩擦ロス・躍動ロスが少ないため、大きなパワーを発揮するのに役立ちました。

2ストロークエンジンの動作行程
2ストロークエンジンの動作行程

 とは言え、2ストロークの構造図や行程図を見ると、ピストンが下がっていく爆発行程では、開いている吸気ポートから混合ガスがキャブレター側に逆流(吹き返し)してしまうように感じます。

 そして続く排気では、掃気ポートから入ってきた混合ガスが、排気ガスと一緒に出て行ってしまうような気がしますが……まさにその通りです!

 そこで、吸気ポート側には混合ガスの逆流を防ぐための「リードバルブ」などを設けており、排気ポートから混合ガスが出て行かないようにするのが「チャンバーの役目」なのです。

チャンバーの仕組みは?

 2ストロークのチャンバー(エキスパンション・チャンバー)の形をよく見ると、エンジンの排気ポートに繋がる部分はパイプが細いですが、そこから太く広がった部分があり(ダイバージェントコーン)、ストレート部分を介して後半では再び細く狭められています(コンバージェントコーン)。

2ストロークエンジンの「チャンバー」の仕組み
2ストロークエンジンの「チャンバー」の仕組み

 爆発後にエンジンから排出された排気ガスは、チャンバーの広がり(ダイバージェントコーン)に合わせて急激に膨張し、それによってチャンバー内部の圧力が急激に下がるため、エンジンのシリンダー内の排気ガスの排出を促進します。

 ただし、このままでは掃気ポートからシリンダーに吸い込んだ混合ガスまで一緒に出て行ってしまいます。

 しかしチャンバーは出口方向で狭くなっており(コンバージェントコーン)、排気ガスがここで絞られることで圧力が高くなり、排気ガスと一緒に流れ出ようとする混合ガスをシリンダー内に押し戻します。

 これをエンジンの爆発毎に繰り返すわけです。

 このように、チャンバーが排気を促進したり混合ガスの吹き抜けを防ぐことで、エンジンのトルクやパワーを高めたり、混合ガスの無駄な流出を防ぐ=燃費の向上にも繋がります。

 もちろんエンジン性能やより良い加速特性を発揮するには、チャンバーの形状(コーンの角度や長さ、チャンバー全体の容量等々)が大きく影響します。そのためバイクメーカーはもちろん、アフターパーツメーカーも独自の技術や理論で性能を追求し、様々なチャンバーを開発・製造して販売していました。

 ちなみに、2ストローク車も排気音を消音する必要があるので、チャンバーの後ろにサイレンサー(マフラー)を装備しています。

 じつはずっと昔の2ストロークエンジンのレーシングマシンは、サイレンサーが非装備でつんざく様な甲高い排気音が特徴でした。しかし1970年代の半ば頃からはレーシングマシンもサイレンサーを装備するようになりました。

 市販車の場合は、2ストロークのオフロードモデルは比較的早くからチャンバー形状や、チャンバー後部にサイレンサーを装着した形状になりましたが、ロードスポーツ車は4ストローク車のマフラーと似た形状のバイクも多く(内部構造はチャンバー方式だったと思われる)、ロードレーシングマシンのようなチャンバー+サイレンサーの形状になったのは1983年頃からでした。

4ストロークエンジンもチャンバー化!?

 2ストロークエンジンは、構造的に排出ガスの清浄が難しい部分も大きく、平成11年排出ガス規制が施行された1999年以降には、多くの2ストロークのスポーツバイクが姿を消しました。

 現在、国内で販売されるのはヤマハとカワサキのモトクロッサーやエンデューロ用の競技専用車のみになり、公道を走れる市販車は皆無です。

 そのため、2ストロークのチャンバーを目耳にする機会もかなり減りました。

 しかし、4ストロークエンジンの場合もマフラーの長さ(正しくはエキゾーストパイプの管長)を長くとることで適切な排気効率=優れたエンジン特性を得られます。

 そこで、エキゾーストパイプとサイレンサーの間のエンジン下に容量を確保するための「部屋」を設けるバイクが増えてきました。

エンジン下の大きなボックス(チャンバー)を設けるスズキ「KATANA」のマフラー
エンジン下の大きなボックス(チャンバー)を設けるスズキ「KATANA」のマフラー

 また、排気ガスを浄化するキャタライザーという部品を、その部屋の内部に収めるパターンもメジャーです。そのため4ストロークエンジン車のマフラーの「部屋」を、「チャンバー」と呼ぶようにもなっています。

 構造的にもルックス的にも2ストロークエンジン車のチャンバーと異なるので、混同しない方が良いと思いますが、とは言え「パワーやトルクの確保」という目的においては2ストロークと近しい部分もあり、「部屋や室的な形状」でもあるので、4ストロークの場合も「チャンバー」という呼称でも良い……かもしれません。

【画像】コレが「チャンバー」と呼ばれる部位です!! 装備するバイクを画像で見る(17枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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