「トラス」と「トレリス」は同じ? 別モノ? バイクのフレーム構造に見られる呼び名の違いとは?

バイクには多種多様なフレームがありますが、スチールパイプ(鋼管)を細かく組み合わせた「トレリスフレーム」と呼ぶタイプがあり、それに似た「トラスフレーム」と表記する場合もあります。何が違うのでしょうか?

別モノだけど……近しい?

 レースにも使うような、スーパースポーツ系のバイクではアルミ製の幅の広いフレームが主流ですが、それ以外ではスチールパイプ(鋼管)製のフレームを採用するバイクも多くあります。

 そしてスチールパイプのフレームにも様々な種類があり、海外製のバイクでは太さの異なる短いパイプを細かく組み合わせた「トレリスフレーム」も多く、近年では日本メーカーのバイクにも増えているように感じます。

 ところが、バイクの紹介記事やインプレッションを見ると、このタイプのフレームを「トラスフレーム」と表記していることも少なくありません。なんとなく似ているので「発音の微妙な違いかな……」とも感じますが、実際はどうなのでしょうか。

 まず「トレリス(trellis)」は「格子(こうし)」の意味で、日本古来の格子戸やガーデニングに使うラティスもトレリスに含まれます。

 バイクの場合もパイプを格子状に細かく組み合わせているので、その見た目からトレリスフレームと呼んでいます。

カワサキ「Ninja ZX-25R」のフレーム。スチールパイプを組み合わせた「トレリスフレーム」を採用
カワサキ「Ninja ZX-25R」のフレーム。スチールパイプを組み合わせた「トレリスフレーム」を採用

 そして「トラス(truss)」ですが、こちらは建築用語が語源になります。「トラス構造」とは、直線の部材(鉄骨など)を三角形に組み合わせた集合体で、有名なところでは東京タワーや、鉄道の鉄橋もトラス構造が多く採用されています。三角形の組み合わせは力学的に強く、工法的にも比較的容易なことから、古くから鉄塔や鉄橋の建設などに用いられてきました。

 バイクのフレームでは、イタリアの「ビモータ(bimota)」がドゥカティのエンジンを搭載した「db1」(1985年)に用いたのが有名で、曲げ部分の無い完全に直線のパイプのみを三角形に組み合わせたのが大きな特徴で、トラスフレームという呼び名はこの頃からメジャーになったと思われます。

 その後はパイプに曲げた部分があっても、全体的に三角形で構成されたフレームや、部分的にパイプを三角に配置したタイプも、総じてトラスフレームと呼ぶこともありました。

 これもルックス的にトラス構造に似ているからだと思われますが、その意味ではトレリスフレームと呼んだ方が正しいかも……という気がしなくもありません。

 とはいえ、建築におけるトラス構造は、本来は三角に組む部材同士は溶接などで強固に接合するのではなく、それぞれの部材の交点を蝶番(ちょうつがい)やピンなどの稼働軸で繋ぎ、自由度を持たせています。これが四角やそれ以上の多角形だと、内部や外部から力が加わった際に変形してしまいますが、三角形だと変形せずに外力に耐えられ、これがトラス構造の大きな特徴です。

 ところがバイクのフレームは溶接で組み立てているので、直線パイプのみを三角に構成した場合でも、厳密にはトラス構造ではありません……と言いたいところですが、じつは橋梁などの建設で溶接で組み上げている場合でも、実際は広義としてトラス構造と呼んでいるので、バイクの場合も間違いとは言えない……かもしれません。

 ともあれ、厳密な三角レイアウトや接合方法にも囚われないので、近年はトラスフレームも含めてトレリスフレームと表記する方が多いようです。

意外と多い? 国産トラス&トレリスのバイク

 というわけで、日本メーカーのトラス&トレリスフレームを採用したバイクを見てみましょう。

 まず「トラスフレーム」と表記しているのは、ホンダとスズキです。

 ホンダは排気量250ccの水冷V型2気筒エンジンの人気モデル「VT250F」(1982年~)の後継モデル「VTR」(1997年~)に、最終型(2016年)までトラスフレームを採用して「トラス構造のピボットレスフレーム」や「トラス構造のダイヤモンド型フレーム」と表記していました。

ホンダ「VTR」(1997年)は「トラス構造のフレーム」と表記
ホンダ「VTR」(1997年)は「トラス構造のフレーム」と表記

 スズキでは、2025年に生産終了となった排気量650ccのV型2気筒エンジンを搭載する「SV650/X」が「スチール製トラスパイプフレーム」です。

スズキ「TL1000S」(1997年)は「オールアルミ製のトラス構造ダイヤモンドフレーム」と表記
スズキ「TL1000S」(1997年)は「オールアルミ製のトラス構造ダイヤモンドフレーム」と表記

 しかし過去にはスポーツ車の「TL1000S」(1997年)に、量産車初のオールアルミ製のトラス構造ダイヤモンドフレームを使用しており、後継モデルの「SV1000/S」(2003年)には新開発の高真空アルミダイキャスト製法によるトラス構造のフレームを投入。スチールパイプ(鉄製パイプ)ではないトラスフレームは珍しいでしょう。

 ヤマハは1987年に、オフロードモデルがベースとなる排気量200ccの水冷2ストローク単気筒エンジンを搭載した「SDR」にトラスフレームを採用します。

 このフレームは少々変わっており、ヤマハの技術リリースには「トラス構造のダブルクレードルフレーム」と表記されています。

ヤマハ「SDR」(1987年)は「トラス構造のダブルクレードルフレーム」と表記
ヤマハ「SDR」(1987年)は「トラス構造のダブルクレードルフレーム」と表記

 よく見るとエンジンはメッキ仕上げのトラス部分ではなく、黒塗装のクレードル部分に搭載されています。また、スイングアームもトラス構造なのが特徴です。

 そして「トレリスフレーム」と表記するのがカワサキです。

 スーパーチャージャー装備のスポーツツアラー「Ninja H2 SX」や、ベースモデルとなる「Ninja H2」は200馬力オーバー(クローズドコース専用車は300馬力オーバー!)の高出力が話題になりましたが、フレームは細いパイプを組み合わせたトレリスです。

カワサキ「Ninja H2R」ストリップ
カワサキ「Ninja H2R」ストリップ

 他にも、250ccクラス唯一の並列4気筒モデル「Ninja ZX-25R」や400ccクラスの「Ninja ZX-4R」、2気筒エンジンの「Ninja250/400」や「Z250/400」もトレリスフレームです。

 さらに、レトロスポーツの「Z900RS」や「Z650RS」(ベースモデルのZ900やZ650)もトレリスフレームと表記しています。

 そしてカワサキが資本参加してグループに収めたイタリアのビモータが、スーパーバイクレースのホモロゲーション用に開発した「KB998 Rimini」も、メインフレームはクロモリ鋼管のトレリスです。

※ ※ ※

 スチールパイプを組み合わせたフレームは、トラスやトレリスだけでなく、総称としてダイヤモンドフレームと呼ばれる場合もあります。

 なんとなくスーパースポーツ系のアルミフレームより性能面で低く見られることもありますが、設計の自由度や乗り味、製造コスト面など優位な部分もたくさんあり、実際はスポーツバイクのフレームの主流であり、今後も進化を続けていくと考えられます。

【画像】見た目も美しい!? 「トラス」や「トレリス」と呼ばれるフレームのバイクを画像で見る(17枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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