100万円以下で買える400ccクラス!! 大成功は難しそうでも刺さる人にはグサッと刺さる!? トライアンフ「トラッカー400」の魅力とは
排気量400ccクラスの水冷単気筒エンジンを搭載するトライアンフの「400」シリーズの中から、フラットトラックレーサーを彷彿とさせる「Tracker 400」に試乗しました。いったいどんな乗り味なのでしょうか。
大ヒットの理由
海外市場では2023年から、日本市場では2024年から発売が始まったトライアンフの400cc単気筒シリーズは、ヨーロッパのA2ライセンスやアジア市場を重視して開発されています。
当初は「スピード400」と「スクランブラー400X」の2機種だったこのシリーズには、2025年に「スクランブラーXC」が加わり、2026年からは「スラクストン400」と「トラッカー400」の販売が始まりました。

私(筆者:中村友彦)が考えるこのシリーズの最大の魅力は、古き良き時代の味わいと現代的な運動性能を高次元で両立していることです。
他メーカーの単気筒車を引き合いに出すなら、KTMの「390」シリーズとホンダ「GB350」シリーズに通じる特性を併せ持っていて、おそらく、そういった資質が評価されたからこそ、このシリーズは2年間で約15万台を生産する大ヒットモデルになれたのでしょう。
「スピード400」とは別物?
ここで紹介する「トラッカー400」は、その名が示す通り、アメリカで絶大な人気を誇るフラットトラックのレーサーをモチーフにしています。
もっとも、前後17インチというタイヤサイズから考えると、フラットトラックレーサーの基本は前後19インチなので、フラットトラックを本気で走るモデルではないのですが、開発ベースになった「スピード400」との相違点は多岐に及んでいます。

外観から判別できる特徴は、フラットトラックレーサーを彷彿とさせるサイドカバーとシートカバー、フライスクリーン、ティアドロップタイプのガソリンタンク、「スクランブラー400X」と同形状のマフラーとバックミラー、ブロックパターンの前後タイヤ(ピレリMT60RS)などですが、ヘッドライト+ステーも「スピード400」とは異なるデザインで、スポークを10本から14本に増やした前後ホイールも新作です。
そして「スピード400」を基準にするなら、ハンドルグリップ位置は134mm低く、23mm幅広になり、ステップバーは86mm後方、27mm上方に移設され、ライディングポジションがアグレッシブな雰囲気になっていることと、足まわりパーツを変更してディメンションの微調整を行っていることも、このモデルならではの特徴でしょう。
また、水冷単気筒エンジンは高回転・高出力化が図られ、最高出力は40ps/8000rpmから42ps/9000rpmに向上し、その一方で最大トルクは38Nm/6000rpmから37.5Nm/7500rpmに微減しています。
そしてこのエンジンは、同時期に開発された「スラクストン400」も採用しているのですが、低中回転域の扱いやすさを重視した結果なのでしょうか、「スピード400」と「スクランブラー400X/XC」は2026年型でも、従来型と同じパワーユニットを搭載しています。
機敏な反応と抜群の旋回性
前段で述べたように、「トラッカー400」はトライアンフ製400cc単気筒シリーズの基盤となった「スピード400」とは似て非なるモデルです。
とはいえ、当初の私は大同小異、「スクランブラー400X/XC」や「スラクストン400」ほどの別物感は味わえないだろうと考えていました。

ところが、実際の乗り味はしっかり異なっていたのです。ハンドル幅が広くなり、シート高が「スピード400」より15mm高い805mmになった効果で、乗り手の操作に対する車体の反応は明らかに機敏になっていますし、アグレッシブなライディングポジションのおかげで前輪に荷重が乗せやすく、それを意識して走るとより鋭い旋回性が実感できます。
ちなみに、同時期に開発された「スラクストン400」も、「スピード400」とは一線を画するコーナリング性能を備えているのですが、あちらをブリティッシュ、またはヨーロピアンテイストの正統派とするなら、こちらはアメリカ人が好みそうなストリートファイターという印象で、私は2台の作り分けに大いに感心しました。
兄弟車の存在
もっとも、このバイクが好セールスを記録できるのかと言うと、それは微妙なところかもしれません。私がそう感じる理由は兄弟車の存在で、フレンドリーなベーシックモデルを欲しているライダーには「スピード400」が最適ですし、ロングランでの快適性や悪路走破性を重視するライダーの場合は、前後サスペンションストロークが他機種より長くてフロントに19インチタイヤを履く「スクランブラー400X/XC」がしっくり来るでしょう。もちろん、カフェレーサー好きなら「スラクストン400」一択です。

では「トラッカー400」がどんなライダーに向いているのかと言うと、フラットトラックレース好きや、アップハンドルでコーナリングのキレ味を満喫したいライダーでしょうか。
いずれにしても兄弟車の存在を考えると、このモデルが幅広い層のライダーからの支持を集めるのは難しそうですが、その一方で、刺さる人にはグサッと刺さる資質を備えている……ような気がします。
そんな「トラッカー400」の価格(消費税10%込み)は80万9000円からで、開発ベースにしてベーシックモデルの「スピード400」よりは5~7万円ほど高いですが、他の派生機種より控えめな設定は、このモデルに興味のある人にとっては歓迎するべき要素になるでしょう。
Writer: 中村友彦
二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。



















