【東京・足立区】日本一「バイク盗」対策が充実する自治体 警視庁出身の区長が“本気” 盗難割合はスズキ「アドレス」シリーズがダントツに多い!?

「バイク盗」から身を守る方法はいろいろありますが、これほどまでユーザーに寄り添ってくれる地方自治体があったでしょうか。「次の引っ越し先はココにしよう」と思うほどの至れり尽くせりの対策には驚きです。

スズキ「アドレス」ユーザーにU字ロックを無償配布

 コロナ禍で激減した「バイク盗」が、再び急増しています。警察庁によると、2021年に7569件まで減少した被害は、2025年には1万4552件とほぼ倍増。2026年も前年を上回るペースで発生しています。

 新車販売台数が伸び悩む中での被害増加は深刻です。

 そんな中、2026年のバイク盗被害件数が東京23区で最悪を更新する足立区が、本気の対策に挑んでいます。

 一般的なバイク盗対策は、バイクユーザーの自衛と、犯罪者の摘発の2本柱で成り立っています。被害件数を減らすには、まずは高い防犯意識を持つこと。「あだち広報」(2026年8月25日号)にもバイク盗急増に関する注意喚起が掲載されました。

 被害状況を掲載し、ユーザー自身で盗難防止に努めましょう、というのが一般的な市区町村の対応です。しかし、足立区の盗難対策は、そこからが違いました。1歩も2歩も区民の側に踏み込んだプッシュ型の施策を打ち出しているのです。

 足立区で盗難対策を担当する危機管理課に、その内容を聞きました。

「被害車両の多くは、(スズキの)『アドレス』シリーズだと警視庁からも聞いています。そこに絞って、まずはSNSなどで啓発、注意喚起。それだけでなく、昨年度から、『アドレス125』、『アドレスV125』の初期型をお持ちの方に、U字ロックを限定50セット、無償提供してきました。しかし、年末から今年にかけてもバイク盗が減らないという状況があり、今年度はさらに400セットを追加して、対象もアドレスシリーズに拡大をして、8月末から開始しました」

 乗用車と同じく、バイクは何でも盗まれる、というわけではありません。地域特性があり、首都圏ではスズキ「アドレスV」シリーズで多くの被害が発生しています。都内では全体の約8割を占める、とも言われています。

「アドレスV」シリーズはスタートダッシュの力強さに定評があるコミューターとして人気を集め、そこが狙われているのかもしれません。

 足立区の対策は、その最も被害が多発するモデルを対象にU字ロックを配布することで、最大多数の被害を低減させようという試みです。しかし、問題は無償提供をしていることを、どうやって区民に知らせるか。その伝達手法もプッシュ型でした。

「ウェブサイトで呼びかけるだけでは、バイクの保有者に届いていない状況もありますので、広報誌に掲載、さらに課税課に協力いただき、課税課から情報提供してもらおうと考えています」(危機管理課)

バイク盗と侵入盗対策の補助制度を組み合わせることも可能

「アドレス」シリーズが盗みにくくなったら、その影響が他のモデルに出るのではないか、という心配にも対応しています。

 足立区民であれば、所有するバイクのモデルに関係なく、チェーンロック、ディスクロック、U字ロックなどの施錠用品、バイクカバーの購入時に補助金が出ます。補助率は購入額の4分の3、上限は2200円です。

 さらに、足立区ではバイク盗と並行して、侵入盗対策にも補助金を出しています。個人住宅の防犯カメラ設置に上限4万4000円、センサーライトの設置に上限6600円などです。侵入盗対策とバイク盗対策を合わせて申請することも可能です。

スズキの原付(1種・2種)スクーター「アドレス」シリーズは、魅力的な走行性能を備えているがゆえに盗難割合がダントツに多い
スズキの原付(1種・2種)スクーター「アドレス」シリーズは、魅力的な走行性能を備えているがゆえに盗難割合がダントツに多い

 盗難被害は、駐車場など公共スペースより自宅で多く発生すると言われています。その対策は、離れる時は必ずキーを抜く、設置物と車体を施錠する、バイクカバーで車両を見えなくする。こうした対策が効果を上げるとされています。まさにそのほとんどを、足立区は防犯物購入補助の対象としています。

 こうした施策を後押しする足立区長は、2007年に都議から転身した近藤やよい区長です。都議になる以前は警視庁警察官として勤務していた経歴を持ちます。

 就任後は警視庁と協定を結び、「ビューティフル・ウインドウズ運動」(割れ窓理論:ブロークン・ウインドウ理論)を展開。区内の刑法犯認知件数の減少につなげてきました。

 今も治安、学力、健康、貧困の連鎖の4つのテーマをボトルネック的課題として取り組んでおり、バイク盗被害の削減もその一環です。

 警視庁出身という異色の経歴を持つ区長のもと、足立区の盗難対策は「言うだけ」で終わらない実務型に仕上がっています。

 バイク盗が全国的に増加する今、こうした実務型の対策が被害急増に歯止めをかけられるのか、足立区の取り組みの行方に今後も注目です。

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Writer: 中島みなみ

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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