“本格”「オフロードバイク」のはじまり!? ヤマハ「DT-1」爆誕 どこでも誰でも楽しめる高性能で大ヒットモデルに
1968年に発売されたヤマハ「DT-1」は、アメリカ西海岸から届いたオフロードバイク開発の提案からはじまり、開発中だった単気筒モトクロスバイクをベースに初のオフロード専用設計で誕生し、日米でオフロードバイクライディングという新しい世界を開拓しました。
スクランブラーからオフロードバイクへ
何ごとにも始まりがあるように、現在では一般的に呼ばれる「オフロードバイク」にも、その基となる存在がありました。多くのベテランライダーに「世界で最初の本格的オフロードバイクは?」と尋ねると、ほとんどが1968年に発売されたヤマハ「DT-1」を挙げるのではないでしょうか。
しかしそれ以前に、オフロードを走ったバイクはたくさんあります。そもそも歴史的には舗装路が普及する以前は、すべてのバイクは未舗装路を走っていたわけです。
市販車のロードスポーツモデルにオフロード用のキットパーツを装着した「スクランブラー」時代を経て、それぞれ徐々に進化していったオンとオフの境目をはっきり分けた、そのオフロードバイクへの分岐点が「DT-1」でした。
「DT-1」以前のヤマハのスクランブラーは、ロードレースで大活躍する2気筒エンジンを搭載していましたが、モトクロスレースでは単気筒の軽量なライバル勢を相手に苦戦を強いられていました。
この頃、世界モトクロスGPでは欧州メーカーの先鋭化したモトクロス用マシンが活躍し、大きなマーケットとなる北米へ輸出も始まっていましたが、乗りこなすにはレース用のライディングテクニックやメカ知識が必要で、短いコースを周回することに適していました。
オフロードと言っても、モトクロスから長距離のラリー、さらに競技ではない林道ツーリングなど様々です。ヤマハは「DT-1」の開発時に、アメリカ国内のオフロードシーンに注目しました。
北米のライダーが求めていたのは競技用ではなく、「ビギナーからベテランまで、コースだけでなく砂漠や荒野など、さらに森林地帯の獣道まで縦横無尽に走り回り、必要ならフリーウェイを走って自宅へ帰れる」それが「オフロードバイク」の条件でした。
ヤマハは北米からの提案を受け、開発が進んでいた単気筒モトクロスバイクをベースに「DT-1」の開発を始め、エンジンはもちろん、フレームやサスペンション、タイヤまで本格的なオフロード仕様となっています。

新設計となる排気量250ccクラスの2ストローク単気筒エンジンは、排気量が半分となる125ccクラスの「YA6」と同じ内部寸法(3軸配置)でコンパクト化されています。
前年に実用化されたばかりのヤマハの新技術5ポートを採用し、それまでのスクランブラーに比べて単気筒ながら低中回転域でも粘り強いエンジン特性でした。
泥水に浸からないよう上方に持ち上げられた排気管は車体側面に沿って追い込まれ、ライディングの邪魔をしません。
引き締まったスタイルを形作るフレームは、軽量で強靭な高張力管を使用したダブルクレードルです。開発初期にはギリギリの薄肉化に挑戦し、破損と折損を繰り返しながら軽量化を極めていきました。
フレームは角断面パイプのスイングアームを外側から抑える構造を採用しており、現代でも見慣れたオフロードバイクの形態をしています。それが、オフロードバイクは「DT-1」から始まった、と言えるところかもしれません。
ストロークの長いフロントフォークに3段階調整付きのリアショック、さらにヤマハ独自の防塵防水ドラムブレーキ、特別に設計された後輪の4.00-18サイズのブロックタイヤなど、機能中心の設計が徹底されています。
最高出力は18.5psで、ヤマハの純正チューニングキットに組み換えれば30psまで出力向上できました。モトクロスバイク並みのオフロード走行性能を有しており、実際に全日本選手権などのレースでも活躍しました。
さらに、5速ミッションとの組み合わせで最高速度120km/hで高速道路も走れます。オイル潤滑は分離給油のオートルーブ方式で、毎日の通勤・通学でも手間入らずという一面も持っています。

こうしてオフロード走行の機能を追求しつつ、ユーザーへの配慮も両立しています。
当時、アメリカにおけるすべてのヤマハ車の販売台数は、年間約4000台ほどでした。そうした中で、「DT-1」だけで初年度1万2000台という販売計画台数を立てました。一見無茶な数字ですが、結果的には生産が追いつかないほどの大ヒットとなりました。
「DT-1」が提案するオフロードワールドは、日本国内でも新しいジャンルの楽しみとして「トレール教室」の開催や「トレールランド」の開設へと繋がります。
その後もヤマハは「DT」シリーズや「セロー」などの名車とともに、オフロードファンを楽しませていきました。
ヤマハ「DT-1」(1968年型)の当時の販売価格は19万3000円です。
■ヤマハ「DT-1」(1968年型)主要諸元
エンジン形式:空冷2ストローク単気筒
総排気量:246cc
最高出力:18.5ps/6000rpm
最大トルク:2.3kgf・m/5000rpm
全長×全幅×全高:2060×890×1130mm
シート高:795mm
始動方式:キック式
車両重量:112kg
フレーム形式:ダブルクレードル
タイヤサイズ(F):3.25-19
タイヤサイズ(R):4.00-18
【取材協力】
ヤマハ・コミュニケーションプラザ(静岡県磐田市/ヤマハ発動機本社隣接)
※本記事中の写真は許可を得て撮影しています
Writer: 柴田直行
カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員


















