目指せ三冠! アルピーヌF1移籍で監督不在のスズキは運営委員会方式で2021年のMotoGPに挑む

ダビデ・ブリビオの離脱で代表不在となったチーム・スズキ・エクスターは、チームのキーパーソン7名による『MotoGPチーム運営委員会』でマネジメントを行うことが判明した。

7名のキーパーソンで構成されたチーム運営委員会

 MotoGP復帰以来、チームマネージャーを務めてきたダビデ・ブリビオが突如離脱してアルピーヌF1に電撃移籍。2021年のチーム体制が取り沙汰されていたチーム・スズキ・エクスターだが、少なくとも今シーズン序盤は、チームのキーパーソン7名による『MotoGPチーム運営委員会』でマネジメントを行っていくことが明らかになった。

『MotoGPチーム運営委員会』の佐原伸一リーダー

 MotoGPプロジェクトの佐原伸一リーダーは「本当に信頼できるスタッフとライダーだから焦らずにチームワークで対応していく。一人ひとりがプロフェッショナルで、しかも家族みたいに結束もある」と過去にSNSから発信しており、述べた通りの形となった。

 自ら開発に携わったGSX-R1000Rを所有し、サーキット走行も楽しむ佐原氏によると「今のところ、非常にうまくいっています。全てがコントロールされ、チームは以前よりも団結力が高まっている」とのことで、じっくり時間をかけて、ブリビオの後任を選ぶ方針のようだ。

「私がやるつもりはありませんが、将来的には運営委員会の誰かが昇格するのがベストな解決策だと思います。でもそうなった場合、その人の後任が必要になります。状況に応じて外部の人間をチームマネージャーに選ぶ可能性もありますね。それはシーズン中にわかるでしょう」

ケビン・シュワンツの名前がダビデ・ブリビオの後任候補に挙がったが実現しなかった

 一時期、1993年の500cc王者、ケビン・シュワンツの名前が後任候補として挙がったが、スズキのレジェンドは「機会があればできるだけスズキを助けたいとずっと思っているけど、フルタイムでやる気はない」と否定。同じく候補として報道されたリヴィオ・スッポは「スズキから電話がかかってきたら話を聞く」と前向きとも取れるコメントを残している。

 イタリア人のスッポは、ドゥカティとホンダで重要なポジションを歴任。MotoGPの世界を知り尽くしており、スズキ・ファクトリーがイタリアを拠点にしていることからコミュニケーション面で考えても最適な人物のひとりなのは確かだろう。

 これまではブリビオがさまざまな事柄を一括して管理していたが、今後は佐原氏に加え、テクニカルマネージャーの河内 健氏が代表に就任し、技術面はジョアン・ミルのクルーチーフを担当するフランチェスコ・カルチェディとアレックス・リンスのクルーチーフを担当するホセ・マヌエル・カゾー、チームのコーディネートはミティア・ドッタと移籍したダビデの弟、ロベルト・ブリビオ、マーケティングの問題はアルベルト・ゴメスがそれぞれカバーし、互いに情報を交換する。

 チームを統括するマネージャーの不在は心配に感じられるが、運営委員会方式を採用したことによるメリットも大きいと佐原氏は話す。

「さらに緊密になりました。以前はさまざまなリクエストがダビデに集まり、その情報を私や河内が共有し、他のスタッフに伝えていました。時にはそれが正確に伝わらないこともありましたが、今は直接やり取りすることで、この困難な状況を一緒に克服しようとしています」

話題になっていたサテライト・チーム結成の行方は?

 ファクトリー2台体制での参戦を続けてきたスズキが、いよいよサテライト・チームを持つのでは? とパドックでたびたび話題になっていたが、こちらについても少しずつではあるが、進展しているようだ。

「私も関わっていましたが、ダビデがすでにさまざまなチームと話し合っていました。彼の離脱によって状況は少し複雑になりました。スズキの上層部にも説明してありますが、まだ多くのことを検討しているという段階です。サテライト・チームをどうマネジメントしていくかをより詳細に考えなければいけませんが、ゆっくりと前進しています」

サテライト・チーム結成に向けての交渉に佐原氏は今後臨む

 佐原氏はファクトリー・チーム運営のかたわら、サテライト・チーム結成に向けての交渉に臨む訳だが、2022年からの活動開始を想定した場合、今年の3月末までに大きな決定を下さなければならない。2021年いっぱいでアプリリアと袂を分かつ、グレシーニ・レーシングがサテライト・チームの有力候補だと見られているが、チームを率いるファウスト・グレシーニがCOVID-19に罹患して入院中のため、交渉も滞っていることに違いないだろう。

 しかし、さまざまなミッションに忙殺される佐原氏の目には一点の曇りもない。

「タイトルを守るのではなく、タイトルを獲得するための新しい挑戦と考えたい。今年の目標は明確です。ふたりのライダーがランキング1位と2位を獲得し、コンストラクターとチームでもチャンピオンになり、三冠に輝くこと。簡単なことではありませんし、プレッシャーもありますが、私たちはこの挑戦に取り組んでいきます」

【MotoGPチーム運営委員会メンバー】
プロジェクトリーダー:佐原伸一
テクニカルマネージャー:河内 健
ジョアン・ミル担当クルーチーフ:フランチェスコ・カルチェディ
アレックス・リンス担当クルーチーフ:ホセ・マヌエル・カゾー
マーケティング&コミュニケーションマネージャー:アルベルト・ゴメス
チームコーディネーター:ミティア・ドッタ
チームコーディネーター:ロベルト・ブリビオ

【了】

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Writer: 井出 直人

ロードレース専門誌時代にMotoGP、鈴鹿8耐、全日本ロードレース選手権などを精力的に取材。エンターテインメント系フリーペーパーの編集等を経て、現在はフリーランスとして各種媒体に寄稿している。ハンドリングに感銘を受けたヤマハFZ750がバイクの評価基準で、現在はスズキGSX-R1000とベスパLX150を所有する。
Twitter:@naoto_ide

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