全ての面で進化したアプリリア「RS-GP」 A・ドヴィツィオーゾのワイルドカード参戦はあるのか?

ロサイル・インターナショナル・サーキットで実施されたプレシーズンテスト初日にアレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)がトップタイムをマーク。総合でも6位に食い込み、仕上がりの良さをうかがわせていた2021年型のRS-GP。本番となった開幕戦、カタールGPでもエースのエスパルガロが予選Q2に進出し、8番手を獲得。決勝でも優勝したマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハ・MotoGP)から5.990秒遅れの7位と健闘し、マシンの競争力が向上していることを証明した。躍進の可能性を感じさせたマシンの進化したポイントを考察してみたい。

ダウンフォースが増加した新型フェアリング

 MotoGPクラスに参戦する6メーカーの中で唯一、コンセッション(優遇措置)を受けるアプリリアは、マシンに大きな変更を加えてきた。見てすぐにわかるのはフェアリングのデザインだ。

アレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)とウイングレットの形状変更によりダウンフォースが大幅に増加したRS-GP

 昨年型のフェアリングは十分なダウンフォース(走行するマシンを路面に押し付ける空気の力)を発生していなかったが、現在はエアインテーク両脇のウィングレットを2段にすることでダウンフォースは大幅に増加した。

 リアタイヤの前に装着される空力付加パーツ、通称“スプーン”の形状も若干変わり、エギゾーストまわりの処理もより空気の流れを意識したものになった。

 ウィングによってもたらされたダウンフォースは一方ではドラッグ(空気抵抗)ともなるため、トップスピードが落ちるというマイナス面もあるが、「身体への負担は増えたが、ウィリーが少なくなって、これまでより加速力が上がった。コーナーでの挙動も安定している」とエスパルガロは評価する。

 90度V4エンジンから飛び出すエギゾーストパイプのデザインも変更された。

 テールカウルの下からのぞく上側のエキゾーストは、エンド部の直前で2本から1本に集合され、取り回し自体は大きく変わっていないように見える。だが、カウル内で集合され、1本だけのぞく下側のエキゾーストは昨年型に比べてかなり短くなり、エンド部が斜めにカットされている。

 ヤマハ、スズキもエギゾーストエンドをスラッシュ形状にしているが、シートカウル内にはマスダンパー(振幅の大きい部分にウェイトを積んで振幅を相殺し、振動を小さくするもの)を内蔵していると思われ、全体の設計自体には同じ90度V4エンジンを搭載するドゥカティからの影響が感じられる。

 新型コロナウイルスの影響による経済的な理由でコンセッションが適用されないメーカーはエンジンの開発が凍結されているが、適用対象のアプリリアは開発を進められる。新しいシリンダーヘッドの採用によりパワー、トルクともアップ。出力特性も向上している模様だ。

 スペイン出身の31歳は「新しいエンジンは柔軟性があるので、より高い出力のトルクマップを使うことができるんだ」と語っている。

カーボン製スイングアームにより操縦性がアップ

 アプリリア・レーシングCEOのマッシモ・リヴォラは「シャシーは従来のものに似ているが、剛性バランスは大きく異なっている」と説明する。

アプリリア・レーシングCEOのマッシモ・リヴォラ

 新しく投入されたカーボン製のスイングアームは、マシンの軽量化、操縦性の向上だけではなく、タイヤの耐久性にも影響を与えているようだ。

 エスパルガロは「バイクのフィーリングが向上し、コーナリングとブレーキングもストロングポイントになってきた。乗り心地も良くなったし、ユーズドタイヤでのペースも悪くない。タイヤに優しいバイクなんだ」とその印象を話す。

 いまやスタートで必須のアイテムとなったホールショットデバイスも進化している。

アプリリア・レーシングが使用する最新のRS-GP

 ノアーレのメーカー(アプリリア)は、2019年からハンドル下のレバーを操作してフロントフォークを縮ませるタイプのデバイスを搭載していたが、リア用も用意された。

 フルタンク時の重量バランスにやや問題がある様子だが、今シーズンのマシンは最低重量の157kgを下回っているため、バラスト(重量を調整する重り)を積む位置を移動する等の方法で解決できる課題だといえる。

ドヴィツィオーゾのワイルドカードでの参戦も?

 ドゥカティを離脱し、サバティカル休暇中のアンドレア・ドヴィツィオーゾが、4月12日から14日の3日間、スペインのヘレス・サーキットでRS-GPをテストするというのも好材料だ。

アプリリア「RS-GP」をテストする予定のアンドレア・ドヴィツィオーゾ。ワイルドカードでの参戦は十分考えられる

 加入した2013年当時、不振にあえいでいたドゥカティを持ち前の開発能力で再び優勝争いが可能なレベルにまで導き、2017年から2019年までマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)に次ぐ3年連続ランキング2位の成績を残したベテランからのフィードバックは、大きな力となるに違いない。

 マネージャーを務めるシモーネ・バティステッラは「今後どうなるかは分かりませんが、アプリリアとの関係はあくまでも今回のテストのみです。2021年中の復帰は考えていません」と強調するが、このコメントの裏にはドヴィツィオーゾの市場価値を高めてから交渉したいという狙いもありそうだ。

 しかし、2022年の復帰を目指している本人がアプリリアのマシンにポテンシャルを感じ、納得できるだけの条件が整えば、ワイルドカードでの参戦は十分考えられる。

 今季レギュラーライダーに抜擢されたロレンツォ・サバドーリが、テストで右肩に負った怪我の影響もあって高いパフォーマンスを発揮できていないため、復帰の機会は意外に早く訪れるかもしれない。

 いきなり上位争いに加わるという訳にはいかないだろうが、漆黒に彩られたマシンが昨年のKTMのようにダークホースとなる可能性はゼロではない。

【了】

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Writer: 井出 直人

ロードレース専門誌時代にMotoGP、鈴鹿8耐、全日本ロードレース選手権などを精力的に取材。エンターテインメント系フリーペーパーの編集等を経て、現在はフリーランスとして各種媒体に寄稿している。ハンドリングに感銘を受けたヤマハFZ750がバイクの評価基準で、国産リッターSSと昭和スクーターを所有する。
Twitter:@naoto_ide

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