ストレートで加速時もブレーキ!? 中上貴晶が明かす仰天MotoGPテク!!
帰国後の楽しみは和食
●ツイッターでファンから質問を募集しましたので、いろいろと聞いていきましょう。
はい。
●久々の帰国。何がイチバン楽しみでしたか?
う~ん、イチバンは食事ですかね。和食は向こう(海外)で食べれなくはないのですが、やっぱり日本で食べると落ち着きますし、この味だよなっていうのがありますね。日本でしか食べられないものも、もちろんありますし。

●海外の食事に苦労する選手もいると耳にしますが、中上選手はどうですか?
レースウィークはチームのホスピタリティがあり、ビュッフェスタイルで提供していただいていますが、それ以外では日本の食材を大量に持って行っていまして、お米だと15㎏から20kgくらいがっつりと。調味料や炊飯器も含めて。
●しっかりと自炊をしているのですね。
はい。昨年は少し外食できるようになりましたが、感染リスクを避けるために徹底的に対策をしていましたから、2020年はまったく外で食事はしませんでした。自炊も楽しみのひとつと考え、料理は少しずつ上手くなっています。
●各国を転戦されていますが、食という部分でオススメの国は?
自分がいま住んでいる、スペイン・バルセロナは料理が美味しいです。日本人の口に合うのは、スペインとイタリアだと思います。
●リヤブレーキの使い方を教えてくださいという質問も来ています。マシンの性能やタイヤの進化で、最高速はついに時速360km以上と上がる一方、ブレーキングでスライドしたりリヤが浮いていたり、見ている限り走りは別次元です。
年々スピードが上がって、もうそんなに速くなくてもいいかなとも思いますが、乗っていると時速300km以上が出ている感覚とかはなくて、正直なところスピードがどのくらいなのかはわかりません。極端な話し、最高速が時速400kmになっても乗れると思いますが、減速にかかる負担も同時に増えています。ブレーキレバーを握る際にかけるのは人差し指と中指の2本でしたが、一昨年の後半戦から3本掛けに変わりました。

3本掛けにしたとき、最初のうちは感覚のズレもありました。時速350kmから100kmまで一気に落とすブレーキングは、バンっとブレーキをかけるので問題ありませんが、細かなところで調整が必要でした。ブレーキレバーに触れるか触れないかくらいの微妙なコントロールが必要なときもありますし、1本掛けにすることもあります。
●使い分けているのですね。
はい、質問はリヤブレーキでしたね。じつはMotoGPだと、加速の時にもリヤブレーキを使っていまして……。
–:えぇっ、加速時にリヤブレーキを使うんですか!?
中上選手:本当に細かい話なんですが、アクセルを開けたときにホイールがスピンしてしまい、空転を弱めるためにリヤブレーキを踏むことがあります。旋回中、立ち上がり、ストレートでも使うことがありまして、いかにリヤタイヤのグリップを得るかを考えたときに荷重をかけてあげるのです。
–:ストレートも!?
中上選手:いまはウイングレットが進化して浮き上がりを抑えていますが、自分がMotoGPクラスに上がった2018年頃は、ストレートでフロントが上がってきちゃうのでリヤブレーキをちょんっと触って姿勢を整えていました。(リヤブレーキを操る)右足の運動量はすごく多いですね。
–:そういったものすごく繊細なコントロール。実際に日本のファンが目の当たりにできるのは、日本グランプリでの茂木90度コーナーになりますね。
中上選手:そうですね。下っていくときもフロントが浮いちゃうので、微妙な角度調整をしつつ……。あれ、2年走っていないので、忘れちゃったなぁ。200メートルをかけるフルブレーキで、フロントをかけ過ぎちゃうと下りで前のめりになるから、身体を後ろに残しつつっていう微妙な体重移動が必要です。停まれーって、周回するたびに思いながらブレーキする面白いポイントでもありますね。

カラーモザイクの意味は?
–:レーシングウェアやヘルメットに施されているカラーモザイク。その意味は?
中上選手:カラフルなデザインが好きなのと、他の人がやっていないというのもあります。みんな単色のイメージカラーがあると思うんですが、自分はいろいろな色を散りばめたら面白いなって思いました。
–:22年シーズンに乗るRC213Vの出来栄えは?
中上選手:見た目もそうですし、フルモデルチェンジと言えるくらい進化しています。4年間乗ってきたバイクではない感覚で、すぐに好タイムも出て、いいシーズンになるなという印象で楽しみです。
–:今シーズンは期待できますね。
中上選手:MotoGP5年目ということで、結果を残すべき年になってきていますし、強いホンダを取り戻すのが自分の仕事だと思っています。開幕戦から優勝、表彰台を目指し、今年こそはシャンパンファイトもしてチャンピオンシップを争うシーズンにしたいです。
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。