「こんな“タンデムシート”アリ」!? 本当に乗れたのかナゾの装備 無いよりはマシ?
原付1種(および新基準原付)を除けば、多くのバイクは乗車定員が2名でタンデム(2人乗り)走行が可能です。大型ツアラーのような快適なタンデムシートもありますが、かつては「こんなのアリ!?」と目を疑うようなタンデムシートもありました。
バイクのカテゴリーに合わせた形状だが……
大型ツアラーやクルーザーは、ライダーの後ろに乗るパートナーが快適なように、クッション性の高い豪華なタンデムシートを備えているモデルが多くあります。
ネイキッド車だとスポーツ度が高いモデルはタンデムシートが小振りで、ネオレトロやクラシック系だと相応に厚手のタンデムシートを装備しているパターンが多いようです。

それではスーパースポーツ系はどうでしょう? そもそもタンデム走行に適したカタチではありませんが、現行モデルだとスポーティなスタイルを崩さないように、かなりコンパクトなタンデムシートを備える車両が多いようです。
ところがレーサーレプリカが盛り上がった1980年代後半~1990年代前半は、「こんなのアリですか!?」と2度見してしまうようなタンデムシートがありました。
「レプリカ」のシートは「皮1枚」!?
「レーサーレプリカ」は、「いかにレーシングマシンに近いか」が大きな魅力です。その意味では割り切った「シングルシート」が一番かもしれません。
しかし当然ですが、シングルシートは1人しか乗れないので、タンデムの可能性がゼロになります。
それが理由かは定かではありませんが、1980年代半頃から盛り上がったレーサーレプリカのごく一部はシングルシートだったところ、多くの車両は「非常用」とも言えるタンデムシートを装備し、そのサイズは日増しにコンパクト(?)になっていきました。
なかでも最たる例がホンダ「NSR250R」(1990年~)と、スズキ「RGV-Γ250SP」(1996年~)ではないでしょうか。写真を見れば一目瞭然、もはやシートというよりも「皮1枚」といった状態です。

しかも2ストロークエンジンのサイレンサーが高く跳ね上がっているため、タンデムステップも極端に高い位置に装備されています。
「NSR250R」のタンデムステップは外観からは見えませんが、じつは折り畳み式でテールカウルに隠れており、引き出すとやはりサイレンサーのステー辺りになります。
シートの座面とタンデムステップの位置関係を見ると、本当にタンデムできたのか、正直言って疑うレベルです。
乗車定員の保安基準では、「二輪自動車の後部座席があって、握り手および足かけを有するもの」と定められています。解りやすく言うと「座れる場所」と「タンデムステップ」と「ベルトまたはグリップ」が必要です。
確かに皮一枚のように見える極薄シートですが、よく見ると前部にベルトが備わり、タンデムステップも装備しているので保安基準的にはOKですが、なかなかスゴイものがあります。
ちなみにスズキは、1991年に単気筒スポーツの「Goose(グース)350」を発売していますが(翌1992年に兄弟車の250ccモデルも登場)、こちらは「RGV-Γ250SP」よりも先に「皮1枚シート」を採用しており、当時の尖がった時代性を感じさせます。
4スト・レプリカは利便性も追求
「NSR250R」や「RGV-Γ250SP」はいわゆる「2スト・レプリカ」で、SPレースへの参戦も考慮した作りのため、タンデムシートもかなり攻めたものになっています。
また当時は4ストロークの250ccクラスの4気筒車もレーサーレプリカのスタイルで人気がありました。そのため、ホンダ「CBR250RR」(1990年~)なども、やはり薄手のタンデムシートを装備しています。
とはいえ「4スト・レプリカ」は、そのスタイルとは裏腹に普段の街乗りやツーリングに使うライダーも沢山いました。そのため利便性も不可欠で、「CBR250RR」はタンデムシート下に容量5.5Lのユーティリティボックスを備え、なんとタンデムシートはキー操作でワンタッチで開閉できるヒンジ式でした。

ちなみに、同時期のヤマハの4スト・レプリカ「FZR250R」(1989年)も、タンデムシートはヒンジ式で開閉し、シート下に小物入れがありましたが、「CBR250R」とは逆に後ろヒンジでした。
現行バイクのタンデムシートは着脱式が主流ですが、ヒンジ式は便利なのでぜひ現行モデルでも復活して欲しいところではありますが……。
タンデムシート装備なら購入時に言い訳できる?
話は戻りますが、レーサーレプリカやスーパースポーツ車なら、シングルシートの方がカッコいいし理にかなっている、という考え方もあるでしょう。スポーツ度が高いバイクほど、その傾向は強いかもしれません。
ところが面白い例があり、現在MotoGPやWSBKレースで大活躍のドゥカティが、その名を世に知らしめた「スーパーバイク916」です。
1994年に登場し、革新的なメカニズムやデザインでバイクファンをうならせた「916」は、当初はシングルシートのみでしたが1996年に「916 Biposto」を発売します。「Biposto(ビポスト)」はイタリア語で「2座席」の意味になり、文字通りタンデム仕様でした。

生粋のドゥカティファンは驚きましたが、「916 Biposto」をラインナップに加えた理由は、パートナーや配偶者に「タンデムできるよ、一緒にバイクを楽しもう」という言い訳で、購入しやすくするための配慮だったのです。
1人しか乗れないシングルシートの高額なバイクを購入するのは、海外でもハードルが高かったというワケです。とはいえ、「916 Biposto」で実際にタンデム走行を楽しんだのかは謎ですが……。
現在はかつての2スト・レプリカほど過激(?)ではありませんが、やはりスーパースポーツ系のタンデムシートはかなり小振りで、快適性とは程遠い感があります。しかしタンデムステップとの位置関係を見ると相応に間隔も広がっており、昔よりは「座れそう」な気もします。
タンデムする予定はないけれど、タンデムできる可能性を残したいライダーにとっては、近年のスーパースポーツ車のタンデムシートは(昔より少しだけ)有効なのではないでしょうか……。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。











