アドレスでもスウィッシュでもないスズキ「アヴェニス125」! 性能・装備・価格、知るほどに欲しくなる!!

先代の『アドレス125フラットシート仕様』を新車で購入して以来、原二スクーターに対する熱意が高いバイクライターの青木タカオさんが、スズキのニューモデル『アヴェニス125』の実車を目の前に開発チームをアレコレと質問攻め。価格を含め、ユーザー目線でレポートしたします。

アヴェニスとは何者か!?

 原二スクーターというセグメントは、各社がしのぎを削る激戦区です。スズキは『アドレス110』『アドレス125/フラットシート仕様』『スウィッシュ/リミテッド』という強力な布陣で競合ライバルを迎え撃ってきましたが、最新ラインナップではそれを刷新。

スズキ「アヴェニス125」
スズキ「アヴェニス125」

 アドレスが1本化され、新型の『アドレス125』となり、『スウィッシュ/リミテッド』は生産終了。『アヴェニス125』が登場しています。『アヴェニス125』とは、いったいどのようなモデルなのでしょうか。

スズキ「アヴェニス150」(1998年)
スズキ「アヴェニス150」(1998年)

 初代「アヴェニス」は1998年12月に誕生しました。都市のAVENUE(アヴェニュー、南北の通り)とSTREET(ストリート、東西の通り)を自在に移動できるパーソナルコミューターとして命名され、流麗かつスポーティで個性的な外観デザインを備えていました。

 そのネーミングを踏襲し、インドで2022年1月より販売され、日本では同年10月より新型『アヴェニス125』が新発売されています。

 生産国は新型『アドレス125』と同じインドで、日本国内での年間目標販売台数は3000台。『アドレス125』は9500台を設定しています。

チーフエンジニアの森井秀史さん
チーフエンジニアの森井秀史さん

アドレスとの差別化も達成

 チーフエンジニアの森井秀史さんによると、開発コンセプトは「“The Urban Arrow”。キビキビと走る軽快なスポーティスクーター」とのこと。

 たしかに見るからにスポーティで、新型の『アドレス125』が街に馴染む丸みのあるお洒落デザインになったのに対し、『アヴェニス125』はエッジが効いた面構成で、テールへと跳ね上がるデザインになっています。

デザイン担当の斉藤航平さん
デザイン担当の斉藤航平さん

 デザイン担当の斉藤航平さんが、「デザインコンセプトは“Spirited Chic”。空気を切り裂くような軽快かつシャープでスポーティなデザイン」と教えてくれます。

 フロントからリヤに向かってせり上がっていくようなウェッジシェイプで、「機敏な走りのイメージを生み出します」と斉藤さんは言います。パネルを合わせたような部品構成は「面質にこだわることで上質感を演出しました」と、実車を見ると、さらに合点がいきます。

スズキのスポーツモデルのアイデンティティを感じさせる「アヴェニス125」のヘッドライト
スズキのスポーツモデルのアイデンティティを感じさせる「アヴェニス125」のヘッドライト

ハヤブサ譲りの縦2灯

 スズキスポーツモデルのアイデンティティである縦2灯に見えるようにLEDヘッドライトがデザインされ、顎を引いて構えたような凛々しいフロントマスクを演出。

 リヤまわりもテール&ストップランプをLED式にし、軽快感を生み出すバックビューとしています。インナーフェンダーは雨水等の跳ね上がりを低減するだけでなく、スポーティな印象をさらに強調しています。

プラットフォーム設計の松下太亮さん
プラットフォーム設計の松下太亮さん

やっぱりこだわった“平らな足もと”

 スズキは新旧アドレス、そして上級仕様であったスウィッシュにおいても広いフラットなフロアボードを採用し続け、ユーザーらに高く支持されています。

 プラットフォーム設計の松下太亮さんは、「足元に窮屈さを感じることなく、自由度の高いライディングポジションを実現しました」と胸を張ります。

 さらに松下さんは、「新型アドレス125のフレームをベースに大径パイプを採用するなど、スポーティなデザインに合わせたアヴェニス125専用設計です。コンピューター解析によるシミュレーションと走行実験を重ねることで、最適なフレーム剛性を実現し、高い安定性とコーナリング性能を発揮します」というから、走りの性能にも大きな自信を感じるのでした。

 フロントには安定感の高い12インチアルミ製ホイールを採用。リヤを10インチとし、タイヤサイズは新型『アドレス125』と変わりません。

 また、給油口をシート後方に設置し、シートを開けることなくガソリンを入れることができるのも新型『アドレス125』と同じです。

エンジン実験担当の杉 芳典さん
エンジン実験担当の杉 芳典さん

加速と燃費を両立したSEP

 心臓部はどうでしょうか。排気量124ccの空冷SOHC2バルブ単気筒もまた新型『アドレス125』と同様のSEP(SUZUKI ECO PERFORMANCE)で、「リニアなスロットルレスポンスを追求し、高い燃費性能だけではなく優れた加速力をもったバランスの良いエンジンとなりました」と、エンジン実験担当の杉 芳典さんは言います。

スズキ「アヴェニス125」で用いられているフル液晶ディスプレイ
スズキ「アヴェニス125」で用いられているフル液晶ディスプレイ

 左レバーを握ると、前後ブレーキが同時に作動し、安定した制動力をサポートするコンバインドブレーキを採用したほか、停車時に後輪ブレーキを掛けた状態に維持することができるリヤブレーキロックシステムも備わっています。

 インストルメントパネルにはフル液晶ディスプレイが用いられ、燃料計や時計などのほか、オイルチェンジインジケーターや燃費の良い運転をしているときに点灯するエコドライブインジケーターも表示されます。

スズキ「アヴェニス125」。シャッターキーのほか、フロントボックス内にはスマートフォンの充電などに便利なUSBソケットも備えられています
スズキ「アヴェニス125」。シャッターキーのほか、フロントボックス内にはスマートフォンの充電などに便利なUSBソケットも備えられています

30万円切りの価格設定に脱帽

 フロントボックス内にスマートフォンの充電などに便利なUSBソケットを装備したり、ちょっとした買い物袋を掛けるのに便利なフロントフックがあるなど、『アドレス125』に備わるものはすべて網羅しているのは言うまでもありません。

スズキ「アヴェニス125」「アドレス125」の開発陣と青木タカオ(筆者)。左からエンジン実験担当の杉 芳典さん、チーフエンジニアの森井秀史さん、デザイン担当の斉藤航平さん、プラットフォーム設計の松下太亮さん
スズキ「アヴェニス125」「アドレス125」の開発陣と青木タカオ(筆者)。左からエンジン実験担当の杉 芳典さん、チーフエンジニアの森井秀史さん、デザイン担当の斉藤航平さん、プラットフォーム設計の松下太亮さん

 それでいて車体価格は28万4900円とリーズナブルな設定。スウィッシュは32万4500円でしたから、よりお買い得感を感じますが、森井さんによると「スウィッシュの後継という位置づけではありません」とのこと。前後10インチの足まわりを持つスウィッシュとは、またコンセプトが異なるようです。

 ちなみに新型『アドレス125』は27万3900円ですから、価格差は税込みでも1万1000円だけというのが驚きます。スズキの原二スクーター購入を検討しているのなら、大いに迷う2本立てラインナップとなっています。

【画像】スズキの新型原二スクーター「アヴェニス125」を画像で見る(27枚)

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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