小さなボディに秘めた競技用マシンの本気!! ヤマハ「YZ85LW」2027年モデル 侮ると痛い目に!?

「2ストらしい鋭い加速はそのままに乗りやすくなっている。新型の戦闘力に驚きます!!」と、興奮気味に語るのは、モトクロスコースを周回してきたバイクライターの青木タカオさん。ヤマハが毎年開催する「YZ」シリーズのメディア向け試乗会で、2027年型「YZ85LW」の進化を体感しました。試乗コースは小排気量モトクロッサーにとっては手強いはずのSUGOスポーツランドですが、小さな車体に秘められた本格派競技マシンの実力と、さらに磨きがかかった走りに手応えを感じたようです。

こんなに乗りやすかったっけ!?

「エンジンの扱いやすさが、格段に増している!」クラッチやシフトを忙しく操作しなくても、思い通りにマシンが前へ出てくれるではありませんか。

 走り出してまず驚かされたのが、排気量84ccの2ストロークエンジンの印象を覆す力強さとスムーズさでした。

 かつて「YZ80」でモトクロスを始めた筆者(青木タカオ)にとって、小排気量モトクロッサーの強烈な加速は忘れられない魅力です。その刺激をしっかり残しながら、格段に乗りやすくなっているのですから、最新型の戦闘力には目を見張るものがあります。

 小排気量2ストモトクロッサーは、パワーバンドを外さないよう左手のクラッチ操作とシフトチェンジを頻繁に繰り返す必要がありました。回転数をうまく合わせられなければ、期待した加速が得られません。

 ところが、2027年型の「YZ85LW」は低回転域から粘り強く、そこから力強い加速へとつなげやすいのです。エンジンの回転を気にし過ぎることなく、コーナーへのアプローチや立ち上がりなど、走りそのものに集中できるようになった印象です。

小さくても本格派!!

 ヤマハのオフロード競技用モデル「YZ」シリーズのなかで小排気量クラスを担うモトクロッサーが、「YZ85LW」と「YZ85」です。

 一度でも体感したことがある人なら説明するまでもないでしょう。たかが84ccと侮ってはいけません。レースで勝つことを目的に開発された戦うためのマシンは、わずか70kg台の車体にパワフルな水冷2ストロークエンジンを搭載し、軽量コンパクトなボディから繰り出される加速は、まさに強烈としか言いようがありません。

ヤマハ「YZ」シリーズの小排気量2ストマシン「YZ85LW」(2027年型)に試乗する筆者(青木タカオ)
ヤマハ「YZ」シリーズの小排気量2ストマシン「YZ85LW」(2027年型)に試乗する筆者(青木タカオ)

 2027年モデルでは、エンジンと車体の両面に改良を実施しています。2ストならではのシャープな吹け上がりはそのままに、幅広い回転域でパワーを引き出しやすくなっています。

走破性と安定性が魅力の「LW(ラージホイール)」

「YZ85」シリーズには、フロント17/リア14インチのスタンダードモデルと、フロント19/リア16インチのラージホイール仕様の「YZ85LW」が用意されています。

 ホイールを大径化することで、コース上の凸凹やワダチを乗り越えやすくなり、荒れた路面での走破性や直進安定性の向上が期待できます。

 125~250ccクラスのフルサイズモトクロッサーはシート位置が高く、足つきに不安を感じることもあります。「YZ85LW」は小柄な大人や女性、成長して体格が大きくなったジュニアライダーにも適しています。

 また、車体が軽く、転倒しても起こしやすいことから、モトクロスやエンデューロを始める際の選択肢にもなります。

 2027年モデルの車両重量とシート高は、「YZ85LW」が75kg/885mm、「YZ85」が73kg/840mmです。LWはホイールが大径化される分シート高も高くなりますが、ライダーの体格や走るステージに合わせて選べるのが魅力です。

 参考までに、フルサイズモデルの車両重量とシート高は、「YZ250」が103kg/975mm、「YZ250F」が107kg/970mm、「YZ125」が96kg/980mmです。比較すると、「YZ85」シリーズの軽さとコンパクトさがよく分かります。

進化した2ストエンジン

 47.5×47.8mmのボア・ストロークで、排気量を84ccとする水冷単気筒クランクケースリードバルブエンジンは、2027年型で吸気系や排気デバイス、燃料供給系など幅広い領域で改良が施されています。

 なかでも注目したいのが、「Moto Tassinari(モト タシナリ)」製リードバルブ「VFORCE-4R」の採用です。独自のV字型構造によって吸気面積を確保し、混合気が通過する際の抵抗を抑えることで、エンジンへ効率よく混合気を送り込みます。

 こうした吸気系の見直しは、アクセル操作に対するシャープなレスポンスや、低回転域から高回転域までの扱いやすいトルク特性に貢献しています。

 エアフィルターはエレメント内径を従来のφ75mmからφ85mmへ拡大し、水抜き穴も大きくなりました。マニホールドも新作で、キャブレターのジェット類も見直されています。

 さらに、「YPVS(ヤマハ・パワー・バルブ・システム)」の作動特性も変更され、排気デバイスの働きを最適化し、低中回転域でのトルク向上を図っています。

信頼性と扱いやすさの向上を追求して全面刷新されたヤマハ「YZ85LW」(2027年型)。フロント19/リア16インチのホイールを装備。排気量84ccの水冷2ストローク単気筒エンジンを搭載。始動はキック式
信頼性と扱いやすさの向上を追求して全面刷新されたヤマハ「YZ85LW」(2027年型)。フロント19/リア16インチのホイールを装備。排気量84ccの水冷2ストローク単気筒エンジンを搭載。始動はキック式

 低回転域で感じられた粘りには、フライホイールウェイトの変更も功を奏しているのでしょう。従来のφ60.0mmからφ79.5mmへと径を大きくし、回転慣性を増大。回転の落ち込みを抑えながら、力強い加速を引き出しやすくしました。

 エンジンの出力をスムーズに伝えるため、クラッチとトランスミッションも改良し、クラッチは摩擦材を変更するとともに、ジャダースプリングを追加しています。

 トランスミッションでは、使用頻度の高い3速と4速のギアに表面処理の変更を施し、耐久性と信頼性を高めました。

 冷却系にも手が入っています。シリンダーヘッドの材質変更によって燃焼室温度の上昇を抑え、ウォーターポンプはインペラーの高さを従来より5mm増加して冷却性能を向上させています。

 スロットルもハイスロットルタイプとなり、従来より約12%少ない操作角で全開にできるようになりました。エキゾーストパイプスプリングの変更など、細部まで見直されています。

 なお、スタンダードモデルの「YZ85」ではリアのドリブンスプロケットを46Tから47Tへ変更しており、ファイナルレシオをショート側に振ることで、発進やコーナー立ち上がりでの加速性能を高めています。

 吸気、燃焼、排気、駆動系、冷却系と、改良点は多岐にわたります。ひとつひとつは小さな変更に見えても、その積み重ねがエンジンの扱いやすさと競技車としての性能を支えているのです。

シャシーも刷新

 エンジンの進化に合わせ、車体側も改良されています。スチール製セミダブルクレードルフレームは、フロント側やエンジン下部、スイングアーム取り付け部など、負荷がかかるブラケットの形状や板厚を変更しており、素材も見直すことで重量増加を抑えながら必要な剛性と耐久性を確保しています。

 モトクロスコースでは、コーナリング中に路面の凹凸を拾ったり、ジャンプの着地で大きな衝撃を受けたりと、車体に大きな負荷がかかります。

 そうした場面で安定した接地感が得られれば、ライダーはマシンの挙動を把握しやすくなり、安心して次の操作へ移れます。

 フロントフォークは倒立式で、特殊加工を施したワンピース構造のアウターチューブを採用しています。インナーチューブ径は36mmで、ホイールトラベルは275mmを確保しています。

フロント19インチサイズのホイールを装備する「YZ85LW」(手前)と、フロント17インチサイズのホイールを装備する「YZ85」(奥)
フロント19インチサイズのホイールを装備する「YZ85LW」(手前)と、フロント17インチサイズのホイールを装備する「YZ85」(奥)

「YZ85」と「YZ85LW」ではホイールサイズが異なるため、サスペンションのセッティングもそれぞれの車体特性に合わせて最適化しており、LW専用の設定では大径ホイールの特性を生かした走りを追求しています。サスペンションガードも装備し、飛び石などからフォークを保護します。

 ステムシャフトには軽量なアルミ製を採用し、ハンドリングの軽快さにも配慮されています。

 ブレーキディスクは放熱性に優れるウェーブタイプで、フロント220mm径、リア190mm径とし、制動力とコントロール性を両立しています。

 リアには軽量かつ高剛性なアルミスイングアームを採用し、レース専用車らしく、軽さと強さを追求した構成です。

整備性にも細かな配慮

 競技用マシンにとって、走行性能だけでなく整備性も大切な要素です。フロントホイールベアリングはオイルシール付きへの変更で防錆性を向上し、外装パーツに使用するボルトの長さも14mmに統一され、整備作業の効率化が図られました。

 ハンドルまわりは、軽量性と強度を兼ね備えたアルミ鋳造製ハンドルクラウンに、アルミ製テーパーハンドルバーを組み合わせます。ホルダーの向きと取り付け位置を変えることでハンドル位置を前後4段階、最大27mmの範囲で調整可能となり、ライダーの体格や好みに応えます。

 ハンドルバーパッドは上位モデルと同等のコンパクトなタイプに変更され、燃料タンクのブリーザーホースも小径化・短縮し、軽量化と取り回しの良さに配慮されています。

 こうした改良は、走行中にすぐ違いを感じる部分ばかりではありませんが、マシンを良好な状態に保ち、ライダーが走りに集中できる環境を整えることも、競技車としての完成度につながっています。

2ストの楽しさを実感

 2027年型「YZ85LW」は、エンジンの出力特性を見直すだけでなく、フレームやサスペンション、操作系に至るまで幅広く改良されています。

ヤマハ「YZ85LW」(2027年型)に試乗する筆者(青木タカオ)。さらに磨きがかけられた本格的な競技性能と扱いやすさを実感
ヤマハ「YZ85LW」(2027年型)に試乗する筆者(青木タカオ)。さらに磨きがかけられた本格的な競技性能と扱いやすさを実感

 今回、モトクロスコースで乗って印象に残ったのは、2ストらしい鋭い加速を楽しめる一方で、以前よりも余裕を持ってマシンを操れることでした。

 速さを求めるジュニアレーサーはもちろん、これからモトクロスに挑戦したいライダーにとっても、頼もしい存在となりそうです。

 小さな車体に詰め込まれた本格的な競技性能と、扱いやすさを高めたエンジンの両方を味わえるのが、新型「YZ85LW」の大きな魅力と言えるでしょう。

【画像】小っちゃカワイイ!? “本格”性能がさらに向上したフロント19インチのヤマハ「YZ85LW」(2027年型)を画像で見る(20枚)

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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