「アメリカの象徴」ハーレーダビッドソン本社で活躍する最初にして唯一の日本人デザイナー ダイス・ナガオ氏にインタビュー ~後編~

2016年にナガオ氏がデザインしたスポーツスター・アイアンとハーレーダビッドソン社の面々。ちなみにデザインチームは現在、26名で役職が4段階に分かれているとのこと。エントリーレベルがアソシエート、次がデザイナー、その上がシニアデザイナーで更に上の役職がリードデザイナーとなっており、ナガオ氏はリードデザイナーとのこと。また車体プラットフォームごとにプロジェクトを統括するマネージャー数名、そしてデザイン室長によってニューモデルのデザインが進められるそうです(写真提供:Harley-Davidson, Inc.)
2016年に登場したXL883Nスポーツスター・アイアンはナガオ氏が最初にデザインを担当したモデル。曰く「北米、欧州、日本でのヒットを狙ってデザインしました。どのマーケットにもデザイン的な主張を満足させるようにしましたが、特にヨーロッパのチームと頻繁に意見を交わし、いかにもアメリカらしいラフな雰囲気で押し通したモデル」とのことです。また「この際、採用された新デザインのホイールの装着でバネ下重量の軽減も実現した思い出深いプロジェクトです」とも語ります(写真提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
2016年のCVOモデル、ブレイクアウト・プロストリートはナガオ氏曰く「新しい表面処理をいくつも試し、気の合うメンバーと楽しくやれたプロジェクト」とのこと。しかし、「開発途中で時間切れとなり、残念ながら市販時には反映されなかった試みがあった」そうです。こうした言葉にもメーカーのニューモデルをデザインする現実が伺えます。その時の経験は「未来への財産」とも語るナガオ氏ですが、「完成したモックアップを前に一緒に働いた主なエンジニア数名と撮ったスナップは良い思い出」だそうです(写真提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
現在、ツーリング系モデルを主に担当しているダイス・ナガオ氏ですが、現行ミルウォーキーエイトの初年度にあたる、この2017年FLHRS ロードキングスペシャルが最初のプロジェクトだったとのこと。「数あるハーレーダビッドソンのモデルの中で、ある意味、保守的なRKというモデルでも1番イカツくて購買者層も若くしよう」という意気込みで開発に携わったという。「このモデルがヒットしたオカゲで他のツーリングモデルも同じようなデザインアレンジで進んでいき、徐々に会社内で信用を得られるようになったと感じ始めた」とも語ります(写真提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
「ハーレーには色々なキャラクターを持つ面がありますが、その中の1つにあるのが男らしい労働者階級層にアピールする、いかにもアメリカらしい側面です。そういった雰囲気のデザインを全面的に押し出した」とナガオ氏が語るモデルがストリートボブ。これは以前にデザインしたスポーツスター・アイアンをスケールアップしたバージョンという位置づけとのことで、「購買者層の年齢を10歳下げてやろう」という狙いがあったとのこと。「ハーレーらしい泥臭いビッグクルーザーのシルエットでありながら、間近で見る度に新デザインの驚きと感動を持てるよう」配慮したそうですが、すべてのディテールのデザインは社内規定や各州の法規に準じたもの。こうした点もメーカーで行う“もの創り”の難しさが垣間見えます(写真提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
“キング・オブ・ハイウェイ”と称されるようにハーレーを象徴するツーリングモデルですが、この2019年FLHXSE CVOストリートグライドスペシャルも当然、ナガオ氏がデザインを担当。「ハーレー社のフラッグシップのバイクのあるべき姿には社員の皆それぞれが強い思い入れを持つので様々な意見があります。そこに難しさとやりがいを感じています」とナガオ氏は語りますが、確かに近年のハーレーのカラーリングは落ち着いたトーンのものが多く、我々日本人の琴線にも触れる雰囲気。このマシンのペイントもかなりクールです(写真提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
ハーレーがリリースするファクトリーカスタムモデル、CVOのラインナップから一旦姿を消したロードグライドですが2020年のレイトモデルから復活。ペイントは新色となるパールトップコートのプレミアムサンドデューンモノトーン仕上げとなっており、トラクションコントロールなどの新機構も追加。フロント21インチホイールも現在の時流に則ったものとなっており、幅広い年齢層にアピールする点もナガオ氏らしいデザインとなっています。エンジンはスクリーミンイーグル117キュービックインチ(1923cc)が搭載されています(写真提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
スモーキーグレーとブラックホール(黒)のツートンカラーと鮮やかなオレンジのラインのコントラストが印象的な2020年CVOストリートグライドもダイス・ナガオ氏がデザインを担当。フロント19インチ、リア18インチというホイールサイズを採用するモデルゆえ、ツーリング系の中でもスポーツライクなイメージを持つストリートグライドですが、やはりこの1台も今ドキの時流で盛り上がりを見せるパフォーマンスバガーらしいムードに仕上げられている。ハーレーといえば豊富なカスタムパーツが存在するゆえ、あくまでもベースとして捉えられがちですが、このモデルは改めてカスタムをする必要がないと思えるほどに高い完成度を見せています(写真提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
ダイス・ナガオ氏の代表作といえるダイナLRSの直系的な後継機種といえるソフテイル・ローライダーSは前作の実績からプロジェクト立ち上がりの段階でデザイン開発の任命を受けたという一台。ダイナ時代は社内でも逆風の中での開発だったとのことだが、このソフテイルバージョンは前作の大ヒットを受け、社内でも肝煎りの花形プロジェクトになったとのこと。「ミルウォーキーで行われたディーラー発表会で参加者の皆さんから多くの感嘆の声を頂き、握手を求められたことは忘れられない思い出です」とナガオ氏も語ります。倒立フォークの採用やカンチレバー式となった新ソフテイルの組み合わせは、走りに於いてもダイナ時代のソレを凌駕します(写真提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
「本来は口下手なのでインタビューで長々と語れるタイプではないのですが……スケッチにこだわるのも、それが理由かもしれません」というダイス・ナガオ氏ですが、たしかにそんなポリシーを感じさせるのが彼によるデザインスケッチ。このように分かりやすく車両イメージが伝わるものとなっています(資料提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
いにしえのヒルクライム・シーンと現代的なミルウォーキーエイトを組み合わせたコチラのラフスケッチ。120年近く歴史を紡いできたハーレーダビッドソン社の伝統を感じさせる一枚です(資料提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
ラフスケッチを経て最終的なイメージはコチラのような写実的なアートワークでも表現。現在、H-D社も新型コロナウィルス、COVID-19の影響を受け、一部がリモートワークとなっているそうですが、スタッフそれぞれの家からニューモデルの開発は続行中。現在進行形とのことです(資料提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
こちらはストリートボブ開発時のラフスケッチ。ご覧のとおり車体シルエットのバランスやホイールサイズ、ライダーが走らせた時のイメージなど確かに分かりやすいデザインが伝わるものとなっています(資料提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
ダイス・ナガオ 1971年生まれ。千葉県出身。地元にある流通経済大学付属柏高校を卒業後に留学し、アイオワ州の大学を経てカリフォルニアのパサディナにあるアートカレッジセンター、トランスポートデザイン科で四輪のデザインの基礎を学ぶ。2002年、卒業後には米国法人の“Honda R&D Americas”モーターサイクル部門に入社し、2012年からハーレーダビッドソン本社に勤務。最初にして唯一の日本人社員となる。また入社後は2016年モデルのスポーツスター・アイアンを皮切りに数々のモデルのデザインを担当。ダイナ、ミルウォーキーエイトともにヒットモデルとなったローライダーSや2017年以降のツーリング系モデルCVO(カスタムヴィーグルオペレーションの略 H-D社の純正コンプリートカスタム)など生み出した車両は多岐に渡ります。H-D社の役職はリードデザイナーで本名は長尾大介(写真提供:Harley-Davidson, Inc.)
ダイス・ナガオ 1971年生まれ。千葉県出身。地元にある流通経済大学付属柏高校を卒業後に留学し、アイオワ州の大学を経てカリフォルニアのパサディナにあるアートカレッジセンター、トランスポートデザイン科で四輪のデザインの基礎を学ぶ。2002年、卒業後には米国法人の“Honda R&D Americas”モーターサイクル部門に入社し、2012年からハーレーダビッドソン本社に勤務。最初にして唯一の日本人社員となる。また入社後は2016年モデルのスポーツスター・アイアンを皮切りに数々のモデルのデザインを担当。ダイナ、ミルウォーキーエイトともにヒットモデルとなったローライダーSや2017年以降のツーリング系モデルCVO(カスタムヴィーグルオペレーションの略 H-D社の純正コンプリートカスタム)など生み出した車両は多岐に渡ります。H-D社の役職はリードデザイナーで本名は長尾大介(写真提供:Harley-Davidson, Inc.)
ダイス・ナガオ 1971年生まれ。千葉県出身。地元にある流通経済大学付属柏高校を卒業後に留学し、アイオワ州の大学を経てカリフォルニアのパサディナにあるアートカレッジセンター、トランスポートデザイン科で四輪のデザインの基礎を学ぶ。2002年、卒業後には米国法人の“Honda R&D Americas”モーターサイクル部門に入社し、2012年からハーレーダビッドソン本社に勤務。最初にして唯一の日本人社員となる。また入社後は2016年モデルのスポーツスター・アイアンを皮切りに数々のモデルのデザインを担当。ダイナ、ミルウォーキーエイトともにヒットモデルとなったローライダーSや2017年以降のツーリング系モデルCVO(カスタムヴィーグルオペレーションの略 H-D社の純正コンプリートカスタム)など生み出した車両は多岐に渡ります。H-D社の役職はリードデザイナーで本名は長尾大介(写真提供:Harley-Davidson, Inc.)
ソフテイル・ローライダーS開発前のダイス・ナガオ氏のアートワークはご覧のように車両が持つパワー感や疾走感が分かりやすく伝わるイメージ。確かにこれならスタッフたちと同じ車両開発に向かう“夢”を共有することも分かりやすいでしょう。1つの作品として見ても秀逸です(資料提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
ダイス・ナガオ 1971年生まれ。千葉県出身。地元にある流通経済大学付属柏高校を卒業後に留学し、アイオワ州の大学を経てカリフォルニアのパサディナにあるアートカレッジセンター、トランスポートデザイン科で四輪のデザインの基礎を学ぶ。2002年、卒業後には米国法人の“Honda R&D Americas”モーターサイクル部門に入社し、2012年からハーレーダビッドソン本社に勤務。最初にして唯一の日本人社員となる。また入社後は2016年モデルのスポーツスター・アイアンを皮切りに数々のモデルのデザインを担当。ダイナ、ミルウォーキーエイトともにヒットモデルとなったローライダーSや2017年以降のツーリング系モデルCVO(カスタムヴィーグルオペレーションの略 H-D社の純正コンプリートカスタム)など生み出した車両は多岐に渡る。H-D社の役職はリードデザイナーで本名は長尾大介。(写真提供:Harley-Davidson, Inc.)
2016年に大ヒットしたダイナ・ローライダーSはダイス・ナガオ氏の代表作的一台。この時は既にダイナモデルの生産終了が決定し、工場のラインも次期プラットフォームの新ソフテイルに移行中だったそうですが、「私が半ばクビ覚悟で発案、会社に提案を続け、量産まで漕ぎつけたプロジェクト」とのこと。ゆえに開発の際は社内でも逆風が吹いたそうですが「夢の実現」の為、ゲリラ的に少人数のメンバーで通常業務をしつつ開発に至ったそうです。限定モデルゆえ、当時は日本でも入手困難なほどに高い人気を博しましたが、こうした開発陣の熱い想いが、ともすればユーザーに伝わったのかもしれません(写真提供:ハーレーダビッドソンジャパン)
2017年以降のCVOやツーリングモデルのデザインを担当するダイス・ナガオ氏ですが、それはすなわちハーレーダビッドソンというメーカーのフラッグシップを任されているということ。2018年のCVOロードグライドも、当然その中の一台で落ち着いたトーンの中にファクトリーカラーのオレンジを差し色として採用。アメリカと日本の良い所が融合されたデザインは、まさにダイス・ナガオ氏の手腕によるものといえそうです(写真提供:ハーレーダビッドソンジャパン)

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