ハーレーにはなぜハイオクガソリンなのか? 「サンダンス」柴崎武彦氏が語るオクタン価と圧縮比の話(前編)

2017年式の排気量103cu-in(約1680cc)を誇るH-Dツインカムエンジンの燃焼室がコチラ。カタログスペック上の圧縮比は9.7:1ですが日本のガソリン事情を考えても明かに過剰な高圧縮。それゆえのトラブルも頻発します。これを効率ピークの8.8にするにはノーマル燃焼室体積の約97ccを約108ccまで拡大する必要があります
適切圧縮比に必要な燃焼室体積が決定したらシリンダーボア径を燃焼室の周辺にケガキ、それに沿って少しでもプラグが中心になるようプラグ側を多く拡張していきます。おおよそラフに削りながら体積を測定し、プラス約10ccになるよう仕上げます
エンジンのノッキング(異常燃焼)はヘッドやシリンダー、ピストンはもちろん、ご覧のようにクランクピンにまで深刻なダメージを与えます。日本のガソリン事情を考えると海外仕様のチューニングパーツをポン付けすることが如何に危険かはご理解頂けると思います。ちなみに現在のハーレーは純正のクランクがオーバーホール出来ないようバラでのパーツ供給がなく、アッセンブリーでの交換を推奨していますがユーザー側の金銭的負担は甚大です。サンダンスではクランクをバラした上でウエイトバランスを取り、シビアな芯出し作業を行いオーナー側の金銭的負担を軽減するよう努めています
まずヘッドとシリンダー、ピストンを取り外し、コンロッドが剥き出しの状態で前後左右に動かしてガタを確認した後、クランクケースを分解して取り出されたクランクアッセンブリー。プレス等を用いてここを全てバラバラにします
上の新品と比較すると中心に段減りが確認出来るノッキングを起こしたエンジンのクランクピン。この傷の深さからも巨大なパワーが如何にエンジンダメージを与えているかが良く分かります
エンジンがノッキングを起こしていない下のクランクピンと上にあるノッキングを起こしたエンジンのクランクピンを比較してもダメージのほどが伺えます。上のクランクピン、センター部のエグりをご覧頂ければお分かりのとおり、これが高圧縮が原因のノック現象によるクランクダメージの典型的な症状です
チューニングエンジンにはプレミアムガソリンの使用を指定するアメリカのスタンド。このように同国では100オクタンを超える高性能ガソリンが手に入りますが、対して日本では100オクタンを超えるガソリンの入手は困難になっています
今回、お話を伺った柴崎武彦氏は1982年にサンダンスを創設して以来、“走る、曲がる、止まる”というファクターに重きを置いたカスタムビルドを信条とするハーレーダビッドソンのチューニングのスペシャリスト。1989年にレース活動をスタートし、1992年から米国のデイトナスピードウェイで開催されるツインレース“BOT”にオリジナルのレーシングマシンである“デイトナウエポン”で参戦。1998年には“デイトナウエポンⅡ”であの鈴鹿8時間耐久にも参戦を果たす。数々のレース活動やストリートでの経験を活かしたハーレーらしい鼓動感に溢れるマシン造りに定評のある人物です。また海外のH-Dシーンでも関係者から“Zak”の愛称で呼ばれ、親しまれています
米国のスタンドの給油機を見れば“Regular”と“Extra”“Supreme+”と三種類のガソリンが確認出来ます。ちなみに日本ではオクタン価96以上がハイオク、89以上がレギュラーと区分されているのですが、実際の日本のガソリン表記ではオクタン価が数値より低いように感じられます
約11cc分の燃焼室体積を削り仕上げられたシリンダーヘッド。このような作業を経て適切な圧縮比となったヘッドはノッキングの防止だけではなくパワーとトルクもアップします

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