バイクに高速道路を利用させたくない!? 3年連続80km以上走行が割引の条件 理由は「さらにデータを集めたい」

NEXCO3社が2026年4月1日から開始したバイク専用割引。普通車の半額とする「定率割引」が物議を醸しています。1回当たり80km以上の走行が割引の最低条件。ユーザーの声に押されて2024年に20kmだけ短縮しましたが、なぜバイクの利用だけ距離制限があるのでしょうか。

同じ観光振興なのに、バイク割引にだけ距離制限を作った

 バイク高速道路料金の見直しを20年近く働きかけてきたバイク関係者は、こう憤ります。

「我々がこれだけ努力しているのに、高速道路の利用者を増やす努力をする気がない。利用者が減ったら値上げすればいいと思ってるんじゃないか」

 2026年の東京モーターサイクルショーでも行われましたが、バイクユーザーは高速道路の通行料金に強い関心を持っています。その理由は車両区分が「軽自動車等」で、軽四輪車と同じ料金であること。定率割引は値下げ要求ではなく、バイクの車両区分を設定すべき、という要求から生まれたと関係者は話します。

「利用に応じた負担が体系化された結果が、通行料金のはずでした。ETCが普及すれば、車載器で車種が判断できるから、細かく車種区分が設定できるとも話していたのに、何も変わらないじゃないですか。バイクは車重だけ考えても軽四輪の半分以下。定員は2人。駐車場だって普通車の半分以下のスペース。どれをとっても利用に応じた負担になっていない」

 2017年まで、阪神高速と西日本高速の一部では普通車と大型車の2車種区分しかありませんでした。全国の高速道路が5車種区分に統一されたのはそれ以降のことです。

 車載器搭載率の上昇や料金所のETC専用化のスピードと比較すると、車種区分見直しへの反映は、遅々として進みませんでした。

 バイクの車種区分だけをとっても、国土交通省や高速道路会社は「車種区分でしか利用実態を把握していないので、バイクの車種区分を設定した時の収支に与える影響がわからない」と説明。バイクユーザーの不満は高まっています。

 定率割引は、そういた不満の具体化だった、と関係者は話します。

「利用実態を明確にするためにバイク専用の割引を作ろうじゃないか、とはじまったのが最初です」

 しかし、同省高速道路課は別の受け止め方をしています。

「バイク割引は、国内の観光振興、地域活性化を図る意味がある。都市部の集中を緩和する側面からも、長く乗ってもらう必要がある」

バイクに「休日割引」にない距離制限を設定した理由は?

 観光振興のための通行料金の割引は、普通車と軽自動車等を対象にした「休日割引」があります。振替休日を含む3連休や大型連休は対象外になりましたが、事前の申込み手続きも距離制限もありません。

ETCシステムは、高速道路会社と高速道路利用者全体で支えている
ETCシステムは、高速道路会社と高速道路利用者全体で支えている

「休日割引」と、バイクの「定率割引」の割引差を比較してみました。

・休日割引=30%オフ
・バイク定率割引=37.5%オフ

【都市部の例】通常料金=2830円(東京IC~新富士IC:122km)
・休日割引=2240円
・バイク定率割引=1770円
・割引差=470円

【地方部の例】通常料金=3630円(苫小牧西IC~滝川IC:142km)
・休日割引=2770円
・バイク定率割引=2540円
・割引差=270円

 では、バイク定率割引は利用状況に、どのような影響を与えているのか。東日本は2025年の実績についてメールで回答しました。

「全国で約260,000件(前年度並み)。前年度同様に多くのお客さまからご好評をいただいたと考えております」

 国交省高速道路課は、こう話します。

「休日割引以上に割り引きしているので、減収になっている」

 バイク関係者は、不満を募らせます。

「同じ観光振興であっても、バイクの実態はわからない。だから、より多くのライダーに使ってもらうことで実態を明らかにする、というなら話はわかります。しかし、割引が収支にどう影響を与えているのか。国会議員が聞いても、ほとんど具体的なことを言わない。バイクユーザー側から見れば、割引が高速道路経営を左右するほどの影響があると思えないし、利用者増の増収で、減収が取りざたさせるほどのことではないはずだ」

 バイク定率割引の距離条件に対するこだわりや周辺取材からは、同省高速道路課が1ユーザーの走行距離の長さを問題にしていることが伝ってきます。実際に、割引条件が80kmより100kmの方が、バイクの目的地までの利用距離が長い、というデータをまとめています。

 ただ、割引率が高過ぎて減収になるのであれば、長く乗っても結果は同じです。高速道路の通行料金はタクシーと同じ考え方でターミナル料金(初乗り料金)が設定されています。

 高速道路事業は投資を回収することが目的であり、営利活動ではありません。1回の大口よりも、間口を広げてより多くの利用者で回数をこなすことが、利用者が減っていく現状では重要ではないのでしょうか。

 バイク関係者は、こうも言います。

「そういう議論を積み重ねて欲しいとお願いしても、バイク専用割引は順調に利用者が増えているというだけで、高速道路の収支にどう影響を与えてるのか。具体的なデータが国会議員が行う政策会合の場でも出てこないから、前向きな議論の積み重ねにならない」

 国土交通省はなぜ3年間も同じ割引条件でバイク定率割引を実施するのか。回答はこうでした。

「明確な分析結果が得られなかったので、さらにデータを集めたい」

 バイクユーザーで、高いだけで価値がETCと変わらないETC 2.0で、データ収集にこだわるのはナゼなのでしょうか……。

【画像】条件が複雑……ナゼかバイクだけ? みんなが利用する高速道路を画像で見る(5枚)

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Writer: 中島みなみ

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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