脳がバグる!? 日本人スタントライダー小川裕之のハイ・パフォーマンス まるでバイクと踊るように
欧米の競技会に参戦し、パフォーマンスに磨きをかけた国内バイク・スタントの第一人者である小川裕之さんが、「名古屋モーターサイクルショー2026」で珠玉の技を披露しました。ライダーほど脳がバグる。なぜそんなことができてしまうのかという驚きの連続。不可能を可能とするマシンの解説もありました。
歓声にわく会場がやがて静まり割れんばかりの拍手が
バイクによるスタントショーと言うと、前輪をリフトさせるウイリーや、逆に後輪を上げるストッピーを思い浮かべるライダーが多いかもしれません。
小川裕之さんが、2026年4月11・12日の両日、計4回行ったデモンストレーションにも、確かにそんな技も取り入れられていました。
この日の愛機は、トライアンフ「ストリートトリプル675」でした。スリムな車体に並列3気筒エンジンを搭載するスポーツモデルです。
そんなバイクで車輪を持ち上げるだけでもたいへんですが、彼にとって、それは空港を臨む駐車場を埋め尽くした観客へのあいさつ代わり。小川さんが見せるウイリーは、片側のステップに両足を乗せて、腕は片手を宙に浮いて切れ込むFタイヤを抑えて、バイクを傾けたまま旋回。「タイヤの端を使うって、僕らはこういう感じなんですよね」と、余裕のコメント。
スタントで誰もが思いつく両手放しでも、ウイリーしながらステップに立ち、行き先を自在にコントロール。よく見ると、リアテール部分につま先を入れる穴があり、そこでバイクに意思を伝えていることがわかります。
シートに座ることも忘れてしまったように、パフォーマンスの後半では、ガソリンタンクの上に座って、両足をハンドルの前に投げ出します。
ライダーは通常、シートに座ってスロットルやメーターが見られる位置で運転しますが、小川さんのこのポジションでは、ハンドルより前に身体があり、後ろ手でアクセルとブレーキを操作します。
そんな中で再びウイリー。さらに、今度は座る向きを逆にして、後ろ向きにタンクの上に座って、ブラインド走行します。よく見ると、タンク上面にはくぼみが作ってあります。もっとも、くぼみがあればパフォーマンスが可能かと言うと、そんなワケはありません……。
練習3年でようやく入口「真似しないで」と言うより「できない」
「今日は観客のみなさんのノリがいいので、私もがんばります」
小川さんのスタントは軽快なトークとともに続き、会場はさらに盛り上がります。後半の小川さんの一瞬を切り取ると、転倒の瞬間をとらえたかのようにアクロバティック。安定感とキレのある技が連続しました。

たった1台のバイクで観客を魅了し続けた小川さんでしたが、1度だけアシスタントライダーと2人乗りに挑みました。
にこやかに手を振るアシスタントライダーが座ったのは、小川さんの前方。小川さんが後ろからハンドルを握るスタイルで会場を1周すると、さらにタンクの上まで身体を滑らせて、前半で小川さんが見せた、ハンドルの前に両足を投げ出すポジションをとります。ママチャリの前方に取り付けたチャイルドシートに乗っているような感じで、そのままウイリー、さらに反転。歓声を上げていた観客が緊張で静まり返った一瞬でした。
最後は、バーンアウトで後輪から白煙を上げて、会場を囲む観客とハイタッチ。3日目のパフォーマンスでは30分の予定を10分延長して観客の声援に応えました。
パフォーマンス終了後、小川さんはまだエンジンの熱いトライアンフを囲んで、どのくらい練習すればパフォーマンスが可能になるか、という観客の質問に答えました。
「ウイリーサークルやストッピーターンのスタントライディングの基本的な技が大型バイクでできるようになるまでに、週5日でほぼ毎日練習して3年ぐらい。125ccぐらいの小さいバイクで2年ぐらい基礎を学んで250ccに乗って大型に慣れていく。そこから先、海外に出てコンペティターとしてリスキーな技をやっていこうと思うと、まだまだかかります。いきなり大型バイクには絶対乗れません」
日本では数少ないバイク・スタント。約10分間の解説では、バイク・スタントを可能とするもう1つのポイントであるスタント・カスタムについても言及。名古屋モーターサイクルショーの来場者を釘付けにしました。
スタントの秘密は小川さんの動画配信でも明かされています。ですが、パフォーマンスの熱量はリアル会場でしか体験できません。
Writer: 中島みなみ
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。














