ミシュランのストリート向け新タイヤ「POWER 5」をテスト 総合力アップの理由とは?

2020年春より発売されるミシュランのストリート向け新製品「POWER 5(パワー・ファイブ)」の乗り味を確かめます。

走り出しからウェット路面まで、包み込まれる安心感

 2020年春より順次発売されるミシュランのモーターサイクル用新ラインナップ「MICHELIN POWER EXPERIENCE」シリーズ(全4種)の中から、ストリート向けの「POWER 5(パワー・ファイブ)」の乗り味を確かめてみます。

前後タイヤにミシュラン「POWER 5」を装着したヤマハ「MT-07」で試走する筆者(松井勉)

 テスト車両に選んだのは、フロント120/70ZR17、リア180/55ZR17という17インチラジアルのボリュームゾーンのサイズを履くヤマハ「MT-07」です。

 走り出すと、履き替えたばかりなのに路面を柔らかく包み込むような乗り味が印象的です。アスファルトの細かいシワやギャップも綺麗に吸収している様子がわかり、乗り心地は好印象です。トレッドが柔らかいだけではなく、交差点での左折、右折へのモーションが軽く、前後タイヤの旋回性バランスがとても自然なのです。

 タイヤ断面形状をプロファイルと呼びますが、ワインディングを重視していながら直進時の安定感、市街地でのハンドリングが軽すぎない所作など、見事にバランスさせています。

 ミシュランが用意したテストコースまで、高速道路で120キロほどの移動では、速度域が上がってもPOWER 5が見せるキャラクターは市街地で見せたものと同様、乗り心地がよく、路面をしっかり掴む印象で、カーブの切り返しでも安定感の中に素直さがあり、申し分ありません。

 高速道路を下りて郊外の道を走った際に「おっと、ここを曲がるんだ」と、慣れない道ではよくあるパターンで急制動を掛け、ブレーキを残したまま左折したところ、POWER 5は持ち前のスポーティな一面をのぞかせます。

 しっかりと減速Gを前輪が受け止め、そこからの旋回への導入もスムーズで、スポーティなのに安心感があるのです。テストコースに入る前から、このタイヤの素質に惚れてしまいます。

細いラインのスクエアや無数の小さなくぼみで表面のつるりとした部分を減らし、見た目の印象で安心感をもたらすデザイン

 テストコースは高速周回路、ハンドリング路、そしてウェットテスト路がある本格的なコースです。ここまで市街地と高速道路のみの使用なので、タイヤサイドには未接地、未使用部分が残ります。

 慎重にハンドリング路を走り出します。複合カーブが多く、道幅は1.5車線程度、旋回時間が長いのが特徴で、カーブの途中で曲率が変わるような意地悪な設定です。

 市街地同様、走り始めの冷えた状態から信頼感があるグリップで徐々にペースを上げていきます。短いコースながら5周もすれば自信を持って走り始められます。旋回性がスムーズで素直、しかもしっかり曲がるので、次第にMT-07のパワーを大胆に使い始めます。

 直線へ2速で立ち上がり、4速までシフトアップ、ブレーキングで3速にシフトダウンから旋回開始、最も速度が乗るカーブで、その先の奥で回り込むカーブに向け旋回しながら少しバイクを起こし、ブレーキング、そのまま深く傾けて旋回……。こんな感じで走るのですが、グリップ感、旋回性、そしてブレーキング時のスタビリティも申し分ありません。

 好印象のまま、今度はミシュランが用意した新旧比較試乗をします。2台のスズキ「KATANA」には、POWER 5と先代に当たるPOWER RSをそれぞれ履いています。

スズキ「KATANA」&「POWER 5」

 まずはKATANA&POWER 5を試します。MT-07で感じたのと同様、ハンドリング路では申し分のない走りを楽しめます。MT-07より重くパワーがあるKATANAですが、不安のない走りを提供してくれました。

 さらにウェット路でのブレーキングは圧巻です。90km/hからのフルブレーキングを難なくこなします。ABSの介入すら意識させず、ウェット路なのにテールが浮き上がるほどグリップします。ウェット路でのパイロンスラロームでも、前輪のグリップが豊かで後輪の追従性も確かさがあり、不安なく左右への切り返しをして攻め込むことができたのです。

 次にKATANA&POWER RSに乗り換えます。ハンドリング路では、タイヤのキャラクターそのものはスポーティなのに、旋回時にだんだん外側へ膨らむアンダーステアが増えたような印象があります。

 タイヤの接地面が縦長で幅もある印象だったPOWER 5と比較すると、POWER RSはもっと狭い印象で、不安を抱かせないギリギリな印象です。バイクの挙動が乗り換える前より重く、ペースをあげると次第にリズムが崩れる印象が……。

 決して悪いタイヤではないのに、こうまで印象が違うとは驚きです。もっとも、この日の天気は曇り空から時折雨が落ち、気温は一桁、路温も同様でしょう。条件が厳しいのは双方同じ。

 もっと驚いたのはウェット路です。POWAER RSでの急制動は、フロンフォークが沈み込む瞬間にABSが作動し、一瞬減速Gが抜けます。再びブレーキ液圧が掛かるとそのまま減速しましたが、イメージとして1から1.5車身分は制動距離が伸びる印象です。これは何度か試しても同様の印象でした。スラロームもハンドリング路で感じたそこはかとない不安感に包まれ、POWER 5ほどほど自信が持てませんでした。

ウェット路での急制動テスト

 結論を言えば、POWER 5が持つ前後のバランスとそれを路面に伝える手法やトレッドゴム、その総合力はツーリングから市街地まで、多くの場面でライディングを楽しいものにしてくれます。そして避けては通れない雨に遭遇しても肩が凝らないタイヤ、と言えばその実力がおわかりいただけるでしょうか。今から来春が楽しみなタイヤです。

【了】

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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