バイク乗りはときどき思う「サイクリストはなぜ好んで峠を登るのか?」と

峠などのワインディングをバイクで走っていると、本格的なスポーツサイクルに乗るサイクリストが、長い上り坂で必死にペダルを漕ぐ姿を目にすることがあります。いったいどのような魅力があるのでしょうか。

なぜサイクリストは、好んで峠を登るのか?

 近年は奥多摩や宮ヶ瀬といった山奥でも、たくさんのサイクリストを目にします。もはや珍しくもない普通の光景となりましたが、バイク乗りからすると、いまいち釈然としないのではないでしょうか。すなわち「自転車で坂道を登って何が楽しいの?」と……。

自転車のプロレースでも登り坂は大きな見せ場。実力差が出やすく、勝負を仕掛けるポイントでもある

 サイクリストの間でも意見が分かれると思いますが、バイク(モーターサイクル)と自転車を共に愛好し、自転車のヒルクライムレースにも相当数出場している筆者(佐藤旅宇)がその疑問にお答えしたいと思います。

 峠で見かけるのは「ロードバイク」と呼ばれるカテゴリーの自転車がほとんどだと思います。本来はロードレース用に設計された自転車であり、モーターサイクルで言うところの「スーパースポーツ」あるいは「レーサーレプリカ」に相当します。

 自転車のロードレースは起伏のある一般道で競われます。スタートからゴールまでの間に上った高さの総計を「獲得標高」と言いますが、この数値はコースの難易度を測るひとつの指標です。

 たとえば2020年東京オリンピックの男子ロードレースは屈指の高難易コースとされており、その内容は総距離244km、獲得標高(全コースを通じて登る距離)は4865mという凄まじさです。

 また、世界最高峰の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」などではレース中にいくつもの山を越えますが、より速く山を登った選手には「山岳賞」の栄誉が与えられます。つまり、自転車のロードレースにおいて、山を上るという行為は切っても切り離せないものであり、速く上ることは、サイクリストとしての高いパフォーマンスの証明でもあるのです。

平坦地に比べスピードがゆるく、安全に走行できるのがヒルクライムの良いところ。肉体的にはハードだが、回数をこなすうちにメンタルは麻痺し、淡々と登れるようになる

 当然、我らアマチュアサイクリストもそうしたプロレースの世界に強い影響を受けています。モーターサイクルで例えるなら、サーキットでヒザ擦りにチャレンジするようなもの。サイクルジャージに身を包んで汗をかきながら山に挑むサイクリストは、内心ヒロイックな「やってる感」を味わっているというわけです。

 一方、ヒルクライムは平地ほど速度を出さず、安全に身体に負荷をかけられるという側面もあります。速度が上がるほど車体のコントロールがシビアになり、転倒したときのリスクも大きくなるのはモーターサイクルも自転車も同じ。したがって上り坂だけのコースで順位を競うヒルクライムレースは、初心者から上級者まで楽しめる、フレンドリーなイベントとして大人気となっています。

 クルマが少なくて走りやすく、空気も綺麗で、木陰に入れば涼しい。頂上からの美しい風景によって達成感が倍増するなど、アスリート的視点とは異なる意味での山の楽しさもあります。

 いずれにしても、自転車でのヒルクライムは体力的にとてもキツいのは疑いようのない事実。それゆえに大きな賞賛や達成感が得られると言えます。なので、自転車に乗りはじめたばかりの初心者を、いきなり山に連れて行って苦しい体験をさせるのはやめて欲しいですね。自転車の楽しみを覚える前に嫌いになるかもしれないので……(筆者もかつて苦い経験あり)。

【了】

【画像】なぜサイクリストは好んで峠を登るのか?

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Writer: 佐藤旅宇(ライター)

オートバイ専門誌『MOTONAVI』、自転車専門誌『BICYCLE NAVI』の編集記者を経てフリーライターに。クルマ、バイク、自転車、アウトドアのメディアを中心に活動中。バイクは16歳のときに購入したヤマハRZ50(1HK)を皮切りに現在まで20台以上乗り継ぐ。自身のサイト『GoGo-GaGa!』も運営する1978年生まれ。

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