2輪系ライターの、仕事とお金 ~ベテランと中堅の狭間にいる伊丹孝裕の場合~ Vol.5

バイク専門誌の編集長を経て、フリーランスのライター(テストライダー)、ジャーナリストとして2輪メディア業界で活動する伊丹孝裕さんの、仕事とお金のリアルなお話です(全11話)。

Vol.5「試乗仕事の、原稿料」2輪系ライター、伊丹孝裕さん(筆者)のおはなし

 仕事の割合として最も多いのは、バイクの試乗です。対象はニューモデルだったり、ショップのカスタムマシンだったり、個人が所有するバイクだったりいろいろ。その印象を文字化する業務が、試乗記やインプレッションと呼ばれるものです。

連載コラム「2輪系ライターの、仕事とお金 ~ベテランと中堅の狭間にいる伊丹孝裕の場合~」

 原稿のスタイルは、そのときどきで変わります。いきなりフルバンク時の挙動から書くこともあれば、前振りとして歴史をひも解いていったり、新しく採用された技術解説を足掛かりにしたり。文体も、このサイト(バイクのニュース)のように「です・ます」の時や「だ・である」の時などまちまちで、特別なオーダーがなければ、ライター個人の好みで決めることができます。

 試乗する日の流れは、おおよそ次の通りです。

1. 編集部に集合。編集担当者、カメラマンとその日の段取りを確認
2. 撮影場所に移動
3. 車両のスタイリングやディティールを撮影(“置き撮り”と言います)
4. 場所を移動し、走行シーンを撮影
5. 撮影内容に不足がなければ、残り時間で自由に試乗
6. 帰宅

 こうして、一度に数台乗るのがオーソドックスなパターンです。ライター兼ライダーである僕(筆者:伊丹孝裕)は、撮影の合間にバイクのハンドリングやエンジン特性、電子デバイスの効果などをメモ。この時、タイヤの銘柄、車体のセッティング状態(レバー類やサスペンションなど)、メンテナンスの状態(空気圧やチェーンの張りなど)といったあれこれも併せて確認していきます。

 無事に撮影を終え、ある程度下調べを済ませたなら、次にするべきは原稿を書き始めることです。

 この先は、紙媒体とウェブ媒体で異なります。ウェブ媒体の場合、極論すれば文字は無制限に掲載できますから、帰宅したら即書き始めて問題ありません。編集担当者から「2000文字くらいでお願いします」と言われ、それが6000文字の原稿になったしても許容してくれるケースがほとんど。閲覧するページ数を増やしたり、どんどんスクロールしていけばいいからです。

 一方、紙媒体の場合はスペースに限りがあります。ニューモデルの紹介記事が2ページだった場合、そのページ内で完結しなければ、文字が途中で切れてしまいます。

 そこで、先にレイアウトを完成させるのが一般的です(Vol.3参照)。その時、本文は16W×80L(縦16文字×横80列の意)、キャプション(写真に添える説明文)は20W×5Lまで……といったように文字数が明確に指定されます。

 このやりとりは編集担当者とデザイナーで行なわれるため、ライターはレイアウトが送られてくるまで、しばし休憩。通常は数日掛かり、その間は別の撮影や原稿を進めることになります。

 いずれにしても、いろいろ合わせて3000文字の原稿を書いたとしましょう。この場合の原稿料がどれくらいかと言えば、1文字当たり10円がひとつの基準です。3000文字なら3万円。これに消費税を上乗せし、後日3万3000円を請求する。極めて単純でしょう?

 もちろん、編集部や媒体、あるいはライターのランクによってさまざまです。僕の場合、安いところなら7.875円/字(※超細かいのですが実在)、高いところで12円/字ほどの開きがあるものの、9円から10円/字で計算するところが大多数です。

「試乗仕事」では乗る以外にも車体の状態などを細かくチェックし、メモしておく(筆者:伊丹孝裕)

 ウェブ媒体になると、この文字計算は少数派になります。なぜなら、既述の通り、スペースに制限がないため、その気になればいくらでも文字数を増やせてしまうからです。3000文字で完結できる内容なのに、1万文字の(つまらない)原稿を送りつけられ、10万円+消費税の請求書が届いた日には編集部もたまったもんじゃありません。

 そこで、ウェブ媒体の多くは、原稿1本でいくらという取り決めを事前にしておくのが普通です。試乗記なら、2万円から2万5000円が相場でしょう。

 原稿1本あたり金額が決まっているなら、1000文字だけで書いて2万5000円請求していいのか? もしかしたら支払ってくれるかもしれませんが、その後の仕事がなくなる可能性が高まるため、原稿料と文字量のバランスを図るのが、普通の感覚だと思います。

 2万5000円が提示されたなら、2000文字から3000文字の原稿を書き、10円/字前後になるように自身で加減するというわけです。

 ちなみに、ここまでで、1700文字ほどを費やしています。これが紙媒体なら、1700文字×10円=1万7000円となります。

 でも、ここはウェブゆえ、相場の2万5000円を頂けるのかと言えば、そんなことはありません。なぜなら、この原稿は試乗記の場合の説明をしているだけで、試乗していないからです。体裁としてはコラムに相当し、つまり「乗る」という技術を必要としません。

 外出もなく、すべて机上で完結できる仕事の場合は原稿料が下がり、1万5000円前後で推移。こうしている間にも、文字数は1900文字を超えてしまったため、紙媒体的に計算すると8円/字、7円/字……とどんどん低下していく羽目になります。

 なので、今回はこのへんで。次回は、原稿料以外のギャランティに触れていきましょう。

【了】

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Writer: 伊丹孝裕

二輪専門誌「クラブマン」編集長を務めた後にフリーランスとなり、二輪誌を中心に編集・ライター、マシンやパーツのインプレッションを伝えるライダーとして活躍。マン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムなど、世界各国のレースにも参戦するなど、精力的に活動を続けている。

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