縁起よし待ち受け画面に!? 44年目の正月に珠玉のSR400ファイナルエディション最終試乗!
ヤマハ「SR400」は、1978年(昭和53年)のデビュー当時と、ほとんど変わらない姿でファイナルエディションが2021年に販売されました。エントリーユーザーからベテランまで老若男女を問わず幅広いライダーから支持された「SR400」の魅力を再検証します。
普遍的なスタイルが人気の秘訣
1978年(昭和53年)のデビュー当時と、ほとんど変わらない姿。限定5000台のファイナルエディション、そして1000台のみ発売のリミテッドは2021年3月に発売されると、いずれもあっという間に完売しました。
2020年も2450台を販売し、小型二輪251~400ccクラスで第2位(二輪車新聞調べ)。2021年の販売台数では間違いなくトップとなるでしょう。エントリーユーザーからベテランまで老若男女を問わず幅広いライダーから支持され、いかに人気の高いモデルであるかがわかります。

43年ものロングセラーを続け、最終イヤーには引っ張りだこの人気で入手困難となったSR。こうして実車を目の当たりにするのは、お正月から縁起が良いとさえ感じてなりません。
ロングセラーを続ける中で大きく変わった点を挙げれば、1985年に前輪ホイール径が19→18インチ化され、2001年にフロントブレーキをディスク仕様に、09年にキャブレターだった燃料供給方式をフューエルインジェクションにしたことぐらいではないでしょうか。ざっくり言ってしまえば、SRのカタチは年代を問わず変わりません。
国内最大のオフローダー『XT500』をベースにしたビッグシングルとして1977年の東京モーターショーに展示され、翌78年3月から販売をスタート。多気筒・高性能化へ向かう時代の中で、先鋭化しすぎたレーサーレプリカへのアンチテーゼとしても根強くファンに愛され、90年代にはカスタムベースとしても人気を博しました。96年にはSR史上最高となる年間8971台のセールスを記録しています。

ヤマハの感性と美意識、クラフトマンとしての誇りがそこには込められ、エンジン組み立ては高級腕時計のように熟練工がゼロから完成までのすべてを担います。「セル生産」と呼ばれ、モーターサイクルの量産工場においては、極めて稀有な存在なのは説明するまでもないでしょう。
そんなSRの新車に触れるのも、これで最後になると思うと名残り惜しいかぎりです。“目覚めの儀式”というのでしょうか、キックスタートも気持ちを引き締め、存分に楽しもうではありませんか。
堪能しよう“目覚めの儀式”
燃料タンクは歴代モデルを彷彿させるグラフィックパターンを採用するシンプルなダークグレー。SRに乗るたび、流麗なシルエットを目で見るだけでなく、感触でも確かめてみようと、そっと手を触れたくなるのはなぜでしょう。グローブをはめた左手でタンクを撫で、そのまま下に降ろせば燃料コックがあります。エンジンスタートする時、まずはONであることを確かめます。

時計回りに引き上げ、ノブが真横を向けばOFF。これをエンジン始動時は反時計まわりで戻し、垂直に立つ位置であることを手探りでチェックします。真下がONの位置となります。
ハンドル右側にあるキルスイッチも確認を忘れてはなりません。左からOFF、RUN、OFFとなっていて、見落とさないよう赤いラインと印が施されています。真ん中のRUNに赤い線を合わせれば、始動の準備はOKです。

いよいよ蹴り降ろせキックペダル
イグニッションキーをONにし、ニュートラルランプ点灯でギヤが入っていないことを確かめたら、いよいよキックペダルを出してゆっくりと動かします。硬くて動かなくなったら、ハンドル左下にあるデコンプレバーを握ってキックペダルをそろりと動かします。

エンジン右上にある小窓がキックインジケーターで、シルバーのマークが出たらキックペダルを動かすのをストップ。デコンプレバーを放し、キックペダルを上まで完全に戻してから一気に踏み下ろします。
勢いよく、最後までしっかりと踏み下ろすことがコツ。慣れれば一発で始動でき、キックインジケーターを頼る必要もなくなるでしょう。SRは最後までセルスターターを装備しませんでした。エンジン始動するだけで高揚感を覚え、まるで魔法がかかったかのようです。
小気味良いシングルエンジン
元気よく目覚めた空冷SOHC2バルブ単気筒エンジンは、トコトコトコと安定したアイドリングでいつでも準備OKと言わんばかり。前輪が小刻みに揺れ、レトロなムードであると同時に生き物のようにも感じます。

低回転域から小太鼓を打つように軽やかに回っていき、最大トルク28Nmをわずか3000rpmで発揮。軽やかさの中にも力強いトルクがしっかり内包され、アクセルを開けた分だけ車体は力強く押し出されますが、トルクフィールがシャープに立ち上がるのは2000~3500rpmあたり。レッドゾーンが始まる7000rpmまでは唸りながらジンワリとトルクを絞り出します。
4000rpmを過ぎれば振動が大きくなり、それ以上の高回転をキープし続ける気にはなれません。トップ5速での100km/h巡航は4500rpmほどであることも付け加えておきましょう。
身のこなしが軽く俊敏に走る!
とはいえ、街乗りで多用する回転域でレスポンスにダルさを感じるなどと言ったことはなく、身のこなしが軽くキビキビ走ってくれます。牧歌的であったり、旧車然とした重厚なフィーリングはなく、シングルスポーツとしての軽快な走りが際立つこともSRの大きな魅力ではないでしょうか。

コンパクトでスリムな車体は250ccクラス並みの車体重量(175kg)で、シート高も790mmと低い。足着き性に優れ、取り回しもしやすいから乗り手の体格を選びません。キックスタートに不安がなければ、小柄な女性にもオススメできるでしょう。
前後18インチの足まわりは細身のタイヤがセットされ、ハンドリングにクセがなく、コーナーでは意図したとおりに車体が寝ていき、切り返しもスパッと決まります。
限界をそっと教えてくれる
速度を上げていくとフロントの落ち着きがなくなり、エンジンともども車体も限界に達しようとしていることを教えてくれ、アクセルを開ける右手が自然と緩んでいきます。

踏み込みの奥で制動力が立ち上がっていく傾向のある機械式リーディングトレーリングドラムブレーキがリヤに採用され、コントロールしやすく、制動力も申し分のないレベル。リアルなレトロモデルであることを感じるこうした細部を見ても、熟成の粋に達していることがわかります。

Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。
















