【インタビュー】中上貴晶選手がたどり着いた、世界の“頂点”で見た光景
最後のレース後に、自分にかけた言葉
インタビューから3日後の日曜日、中上選手は決勝レースを17位で終え、チェッカーを受けました。レース後の囲み取材では、日本人だけではなく、様々な国のジャーナリストたちが取り囲んでいました。

「フル参戦ライダーとして最後のレースを終えて今、自分にどう声をかけますか?」と、尋ねます。
「よくここまで頑張れた、という気持ちもあるし、その反面、もうちょっとできたんじゃないか、もうちょっと結果を残したかった、という気持ちもあります。すごく矛盾しているんですけどね」
「自分にかける言葉って難しいですけど、これまでレースがあっての生活が長かった。どん底に落ちて、何度も這い上がって来たりもしました。だから、休みたい、こういう生活から一回離れたい、という気持ちもあったんです。モチベーションが無いわけじゃないんですけどね」
「お疲れ様、という気持ちが一番かな。でも、これで終わりではないので。だからこそ、難しいですね(笑)」
囲み取材を終えた中上選手は、拍手で送られながらメディアセンターを後にしました。
木曜日のインタビューの間も、レースウイークの間も、ほとんど変わりのない様子でした。けれど、インタビューの答えなど、わずかに「いつもとは違う」ものが混じってもいました。それはゆっくりと、けれど確かに、中上選手の中に根を下ろしたもののように感じられました。
だから、と言って良いのでしょう。激しい戦いの舞台にそっと幕を下ろした中上選手がまとっていた空気は、穏やかで、晴れやかでした。





