飲酒検問のはずが、無免許、整備不良……東京都内一斉検問でわかったライダーの後悔
東京都内で、警視庁による都内飲酒検問が実施されました。東京都内の死亡事故死者数は全国ワーストを記録し、前年比較でも上回っています。交通事故は例年、年末に向かって増える傾向にあり、忘年会を終えた後の飲酒運転で、さらに被害を増やさないための対策です。一夜の検問で、都内を走るライダーには四輪車と違った傾向が見えました。
バイクの無免、自転車の延長で運転できるという思いが?
警視庁による「管下一斉飲酒検問」が2024年12月6日未明から深夜にかけて行なわれ、飲酒運転で26件(酒気帯び24件、酒気帯び同乗2件)が摘発されました。2023年同月の管下一斉飲酒検問での飲酒運転摘発は7件。大幅な増加の中でもライダーの飲酒運転はありませんでした。

2024年に相次いだ道路交通法改正で、今年の飲酒検問はバイクと四輪車だけでなく、電動キックボードなどの特定小型原付や自転車も停止を命じて呼気検査を実施しています。今回の飲酒運転摘発では、四輪車4件、ペダル付電動バイク(モペット)2件、自転車20件でした。
しかし、飲酒運転防止のための検問で指摘されたバイクの違反傾向は、バイクを運転することのお手軽傾向でした。
この飲酒検問では、飲酒運転とは別に無免許運転で4件が検挙されています。その内訳に四輪車はありませんでした。
・バイク2件
・ペダル付電動バイク2件
ペダル付電動バイクは自転車の延長で運転できると考える傾向があり、深夜に及ぶ飲酒運転検問以外でも無免許運転が摘発されています。
新しい乗りもので無免許運転が摘発される背景には、販売と利用の両方で法令の理解が進んでいない側面があります。ほとんどの人が知っている、バイクの運転での免許所持で摘発される背景には何があるのでしょうか。
整備不良で警告を受け、ショックのあまり座り込む
2024年の「管下一斉飲酒検問」の取締まり公開では、こんなケースがありました。

排気量250ccクラスのスクーターに乗るライダーが、フロントタイヤを見ながら警察官に諭されています。
「ここ見て。三角のマークがあるでしょ。ここをずっと見ていくと、タイヤの溝が途切れたところがある。これがスリップサインだから。このマークのところで溝がなくなっていると、タイヤがすり減っていることになる。整備不良ですよ」
「えー、そんなことで違反になるの」
ライダーはスマートフォンの懐中電灯モードでタイヤを照らし、溝があることを主張しますが受け入れられる様子がありません。摘発されたショックなのか。車両の横で座り込んでしまいます。
スリップサインが出るほどすり減ったタイヤを使い続けると、路面抵抗(グリップ力)を失い簡単に転倒する可能性が出てきます。特に雨天時の走行では危険が高まる(排水性能が低下する)ため、整備不良で道路交通法違反に問われる可能性があります。
実はこのライダーには、ほかにも安全に関わる重大な違反がありました。
テールランプカバーの大半が破損し、本来は赤色に見えるはずの表示のほとんどが白色に見えていました。これではブレーキをかけていることを他の車両が判断できません。
飲酒運転以前に、警察官はこのテールランプの整備不良を問題にしていました。すり減ったタイヤを使い続けることは、さらに整備不良を重ねた可能性を指摘されていたのです。
ライダーが運転するスクーターは車検の対象ではありません。車検のない車両はライダー自身が運転前点検やバイクショップに法定点検に出して、未然に防止するしかありません。
このライダーがどのような処分を受けたかは不明ですが、この日の飲酒検問で、東京都内では整備不良で4件が摘発を受けています。
気軽に乗れるバイクでも、注意は必要です。
Writer: 中島みなみ
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。





