バイクの洗車に便利な「高圧洗浄機」 でも思った以上に強い水圧を当てるのはNGな部分も? その理由と使い方とは

「洗車はメンテナンスの第一歩」と言われるくらい、愛車を快調に保つための大切な作業です。とはいえピカピカにするのはけっこう大変。そこで強い味方になるのが「高圧洗浄機」です……が、ひと吹きでキレイになるパワーが、じつは仇になることも!?

高圧だからキレイになるが、だからこそ危険なことも!?

 洗車して愛車がピカピカになると気持ち良いのはもちろんですが、洗いながら各部に異常が無いか? オイルや冷却水が漏れていないか? などをチェックできるので、洗車はメンテナンスの意味でも大切です。とはいえ忙しい日々の中で、時間をかけて洗車するのはけっこう大変。そこで便利なのが「高圧洗浄機」です。

直接吹いたら危険な部分は、吐出圧力を弱めたり、対象物から離すように意識。画像はケルヒャーの圧力調整可能なノズル
直接吹いたら危険な部分は、吐出圧力を弱めたり、対象物から離すように意識。画像はケルヒャーの圧力調整可能なノズル

 近年は様々なメーカーから発売されており、バッテリー駆動やハンディタイプなど種類も色々あり、家庭用の高圧洗浄機ならホームセンター等で比較的リーズナブルに購入できます。

 その名の通り非常に高圧で吐出するので、洗剤ナシでもひと吹きで汚れが落とせます。しかも普通にホースで水洗いするより水の使用量もずっと少ないのでエコでもあります。

 高圧洗浄機の吐出圧力は想像以上に強力で、機種にもよりますが、家庭用のコンパクトなタイプでも6~9MPa(メガパスカル)ほどもあります。数字ではわかりにくいですが、噴射ノズルから数十センチ離れたところに手をかざしても、かなり痛みを感じるくらいの勢いです(危険なので試さないように!)

 というワケで、バイクの洗車に高圧洗浄機を使う場合は注意が必要です。

油汚れの近くこそ、使用に注意!

 洗車で面倒なのは「ガンコな油汚れ」でしょう。たとえばドライブチェーンはグリスやオイルでベタベタな上に泥まみれだったりします。またエンジンの下まわりも、オイルにホコリがこびりついていた状態で汚れていたりします。

オイルやグリスを封入するためのオイルシールやガスケット。高圧洗浄によって傷むこともある
オイルやグリスを封入するためのオイルシールやガスケット。高圧洗浄によって傷むこともある

 他にも、フロントフォークのインナーチューブや、リアショックのダンパー軸付近が、オイル漏れというほどではなくてもなんとなく油っぽかったり、ホイールのアクスル軸付近も同様に「油っぽい&埃が付着」していたりします。

 こんな場所こそ高圧洗浄機でブワーッ!! とひと吹きしたいトコロですが、基本的にNGです。

 なぜなら、油汚れがある場所は「その中にオイルやグリスが入っている」からで、そのオイルやグリスを封入するためのオイルシールやガスケットが存在するからです。

 たとえば油汚れの筆頭と言えるドライブチェーンにも、大型車などのシールチェーンだとグリスを封入したシールリングがあります。

 そんな部分を高圧洗浄機で吹いてしまうと、あまりの高圧のためオイルシールの隙間から内部に水が浸入してしまったり、ゴム製のオイルシールを傷めてしまうことがあります。

 他にもエンジンカバーなどからわずかにオイルが滲んでいる場合は、ガスケットが少し傷んで「オイルの通り道」が出来ている可能性があります。そこを高圧洗浄機で吹いたらオイルの通り道が広がり、オイルがダダ漏れになるかもしれないうえに、高圧洗浄機の水がエンジン内部に入ってしまうかもしれません。

 またブレーキキャリパーのパッドやピストン付近は、ディスクやパッドが摩耗した鉄粉や汚れが付着しやすく、これが堆積するとブレーキのフィーリングが悪化したり「鳴き」が発生するので清掃が必須ですが、なかなか掃除しにくい部分です。

 そこで高圧洗浄機で汚れを吹き飛ばしたくなりますが、ピストンのシールを傷める危険がるので(高圧で金属粉を押し込んでシールを切ってしまう)、やはり高圧洗浄機の使用はNGです。

 水冷エンジンのラジエターも汚れやすく洗いにくい部分ですが、ラジエターの細かな冷却フィンは薄くて柔らかいアルミで出来ているので、高圧洗浄機で吹くと潰れてしまう恐れがあります。そうすると空気の流れが悪くなって冷却効率が落ちるので要注意です。

電装パーツなども要注意!

 洗車に高圧洗浄機を使った場合に、意図せずに吹いてしまってトラブルの原因になる場所もあります。たとえばハンドルスイッチやメーター、シート下の電装部品などです。

 メーターやハンドルスイッチは雨天走行も想定しているので防水性はありますが、高圧洗浄機の強力な水圧は防げない可能性があります。またシート下の電装パーツを敢えてシートを外してまで高圧洗浄することはないと思いますが、シートを装着した状態でも強い圧力でシートとサイドカバーの隙間などから水が浸入し、電装パーツを濡らす危険があります。

 他にもサスペンションのアジャスター部や燃料キャップ、メインキーやシート着脱用の鍵穴など、水の侵入を避けたい場所は多々あります。

 ……と、ここまで読んだら「高圧洗浄機、全然使えないじゃないか!」と思うかもしれません。

 しかし製品の種類にもよりますが、吐出圧力や噴射ノズルで噴射の強弱を調整できることも少なくありません。また至近距離から吹かずに、ある程度対象物から離して吹くという方法もあります。

 ガンコな油汚れなどは、つい近くからブワーッ!! と吹きたくなりますが、そこはグッとこらえましょう。高圧洗浄機でバイクを壊してしまっては元も子もありません。

 このように、吐出圧力や使用場所さえ気を付ければ、やはり高圧洗浄機は手軽で便利です。もちろんバイクの洗車以外(クルマや家の外壁など)にも使えるので、一家に一台、手に入れて損はないでしょう。

【画像】とっても便利な「高圧洗浄機」 ブワー!! と強い水圧で吹いてはいけない部分を見る(13枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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