スズキ新型スーパーモト「DR-Z4SM」は本格派だけどフレンドリー!? 優れた操作性をとことん味わい尽くした!!
スズキが2025年10月8日に発売したばかりの「DR-Z4SM」の報道試乗会を開催。ジャーナリストたちをクローズドコースに招くあたりは、前後17インチの足まわりを持つスーパーモトモデルのポテンシャルの高さに自信ありと見ます。
サーキットで知った「優しさ」
軽快なハンドリングとパンチのあるシングルエンジンで、アグレッシブにサーキットを駆け抜けられるのに、誰もが楽しめる扱いやすさも持ち合わせているではありませんか!

スズキが2025年10月8日に発売したばかりの新型「DR-Z4SM」の報道試乗会をクローズドコースで行いましたが、ツーリング先のワインディングや街乗りも気持ちよく走れることが分かります。
本格派スーパーモトモデルであると同時に、ビギナーにも優しく、乗り手や用途を問いません!!
そんなよく出来た話しがあるものかって? じっくり走り込んだ筆者(青木タカオ)が詳しくお伝えしましょう!!
乗り手の意思を忠実に
まずエンジンですが、スロットル操作に対してレスポンスの鋭い出力特性で、コーナーの立ち上がりや切り返しでは力強く車体を押し出してくれます。これがじつにリニアで、ライダーの意思通り忠実に応えてくれるから、たまらなく気持ちがイイ!

電子制御スロットルが採用されていますが、より繊細な操作性を再現するため、あえてスロットルケーブルを介したライド・バイ・ワイヤ方式を採用しているのも大きなポイントになっています。
ケーブルがあることで、ライダーはたわんだ状態から張った状態に移行する際のフリクション(摩擦)や荷重変化も感じ取れるため、スロットルの遊びの終点からスロットルバルブが開き始める位置を把握しやすくなり、アクセルの開け始めの繊細な操作を可能としているのです。
こうしたコントロール性に対する開発陣のこだわりは、今回の速報インプレッションでは語り尽くせないほどたくさん教えていただきました。
電子制御もそのうちのひとつです。3つの走行モードから選択できる「SDMS(スズキ・ドライブ・モード・セレクター)」をもっともアグレッシブな「A」に設定すれば、加速はなおさら強烈。ストレートでアクセルをワイドオープンすれば、高回転域も気持ちよく伸びていきます。
しかし、アクセルを開けるのが楽しくなる「Aモード一択」と決めてしまうのは早合点でした。舌を巻くのは、穏やかなトルクフィールとなる「C」です。
近年、多くのモデルでライディングモードが採用されていますが、筆者の場合、パワーフィールがもっとも大人しくなるモードは短い時間だけ試して、あとはもう選びません。ピックアップが物足りないし、欲しいところでの鈍い応答性が嫌だからです。
しかし、「DR-Z4SM」の「C」モードは優しいトルクフィールを実現しつつ、走り出しのモタツキを解消しているから驚きを隠せません。アクセルを開けた際の急激な出力上昇感を抑えて、ビギナーにも扱いやすく、上級者には雨天などで濡れたスリッピーな路面で使える実用的な出力特性を獲得しています。
開発チームがさまざまな道を、あらゆる環境下で走り込んで作り上げた賜物です。
トラコンの介入度がちょうどいい
トラクションコントロールのセッティングも懲りに凝ったもので、妥協がありません。1/2/G(グラベル)/OFFの4つのモードから選択可能で、いずれも大いに役立ってくれました。

と言うのも、筆者は幸いにもドライとレインを両方体験できて、その点では天候に恵まれたのかもしれません。コンディションの良いときは、システムの介入がもっと少ない「G(グラベル)」を選べば、ハードに攻め込んだ時にリアが流れていくことも許容してくれます。
「OFF」にできるのもサーキットではありがたく、ABSもまた後輪のみキャンセルできて、ライディングモード「A」との組み合わせは戦闘力の高い本格派スーパーモトと言わんばかりです。
「1」では適度にトラクションコントロールが介入し、一般道では選択する機会が多くなりそうです。今回のサーキット走行でも、ハイペースを保ちながらも、肩の力を抜きたい時に多用しました。
濡れた路面では介入度の高い「2」が安心をもたらします。ライディングモード「C」と組み合わせれば、優れたレインモードに仕上がります。
液晶インストルメントパネルで各システムの設定値が把握できて、切り替えは左側のハンドルバーにある「MODE」とセレクト(UP/DOWN)スイッチを操作するだけ。直感的におこなえました。
6速化されなかった理由とは?
排気量398ccの水冷単気筒DOHC4バルブエンジンとシャシーは完全なる新作です。旧「DR-Z400SM」は2011年モデルを最後に国内からは姿を消していて、90×62.6mmのボア×ストロークこそ変わらないものの、当時の環境規制はEURO2で、これを今回一気にEURO5+までジャンプアップする必要がありました。

チタン製でリフト量の大きいインテークバルブやナトリウム封入中空エキゾーストバルブを採用したほか、カムプロフィールを吸排気とも刷新。吸気ポートや燃焼室形状を最適化することで、低回転域の粘りと高回転域での力強さを向上しています。
シリンダーヘッドをはじめ、バルブスプリング、ピストン、クランクケースも新作で、スムーズなパワーデリバリーと燃費向上、規制対応した排出ガス、よりリニアなスロットルレスポンス、冷間時の始動性向上、安定したアイドリングの実現のために、ツインプラグ化しているのも見逃せません。
キャブレターだった旧「DR-Z400SM」ではスロットル径は36mmでしたが、FI化に伴い42mmに拡大しました。10ホールフューエルインジェクターが導入され、よりコントロールしやすいだけでなく、高地や寒冷地での対応力も飛躍的に向上しています。
発表後、ひとつ疑問に感じていたのが、なぜ6速化されず、5段変速のままなのかという点です。
チーフエンジニアの加藤幸生(さちお)さんが技術解説で質問が出る前に、「軽量・スリム・コンパクト(=ライダーの動きを妨げない)であること、そして耐久性とのバランスから、5段変速が最適と判断したためです」と、教えてくれました。
6段変速にすれば、エンジン幅と同時にフレーム幅も広がるため、スリムさ、コンパクトさが失われだけでなく、追加したギア以上に重くなります。
ケース幅を増やさずに6速化すると、各ギアが薄くなり、耐久性が低下してしまう。荒れた路面では加減速によりギアに大きな負荷が掛かり、高い耐久性が必要です。5速ミッションながらワイドギアレシオで、トップギアでの100km/h巡行でもエンジン回転数を低く抑えています。
フルアジャスタブル・サスペンションの恩恵
タンクレール部をツインスパー形状としたスチールパイプ製セミダブルクレードルフレームもまたオールニューで、アルミ製スイングアームとの組み合わせで、剛性・強度・しなやかさを高い次元でバランスさせています。

スーパーモトとしてオンロード性能を最大限に引き出すため、前後17インチのホイールを採用し、タイヤはダンロップ製SPORTMAX Q5Aを履きます。専用設計された内部構造とプロファイルを持ち、ウェットコンディションでもグリップ性能を高く保ちました。
KYB製の倒立フロントフォークとリアサスペンションはフルアジャスタブル式で、デュアルパーパスの兄弟車「DR-Z4S」と比較すると、フロントのストロークは280mmから260mmに、リアホイールトラベルは296mmから277mmへと、オンロードでのスポーツ走行に適したセッティングが施されています。
ペースが上がると、少し硬めていきたいと感じたので、前後ともハード寄りに減衰力を効かせてもらいました。するとコーナーアプローチでより強力にブレーキングでき、旋回中も車体が落ち着きます。
ブレーキディスク径はフロント310mm、リア240mmで、制動力だけでなくタッチとコントロール性に優れていることも報告しておきましょう。
シート高は890mmで、身長175cm/体重67kgの筆者は足つき性に不安はありません。片足立ちなら、しっかりとソールが地面に届きますし、車体重量は154kgに抑えられています。押し引きが容易く、身体を動かしやすいシームレスな車体は、250ccクラス並みのスリムさを感じます。
スズキ新型「DR-Z4SM」の車体本体価格(消費税10%込み)は119万9000円で、発売後すぐに、年間販売計画台数800台を大きく上回るオーダーが入っています。

Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。



















