フェリーで渡れば旅感UP!? じつはサイクリングの宝箱「壱岐島」で味わう多彩な魅力
九州の北端、日本海に浮かぶ「壱岐島(いきのしま)」は、コンパクトな島に多彩な魅力が凝縮されたサイクリング天国です。古代の遺跡、断崖の絶景、白砂のビーチ、そしてヒルクライムなど、驚くほど多彩な体験が待っています。
壱岐島ってどんな島? どうやっていくの?
九州の北端、日本海にぽつりと浮かぶ「壱岐島(いきのしま)」は、古代浪漫あふれる遺跡に迫力ある海岸線、美しい砂浜、ヒルクライムまで、小さな島とは思えないほど見どころが満載です。サイクリングの宝庫で走るほどに新しい発見が待っています。

長崎県の北に広がる玄界灘に浮かぶ壱岐島は、面積133.8平方km、周囲167.5km、人口2万3296人(2025年10月末時点)という決して大きくはない島です。
九州本土からのアクセスが良く、意外なほど気軽に訪れることができます。自転車をそのまま持ち込むなら博多港、または佐賀県の唐津東港からフェリーを利用すると便利です。
壱岐島には郷ノ浦港、芦辺港、印通寺港の3つの港があり、到着地は便によって異なります。到着港の近くに宿を予約すると、行動計画が立てやすくなります。
ジェット船も運行されていますが、輪行袋に入れても自転車を持ち込むことができないので注意が必要です。
また、長崎空港から飛行機でアクセスするという方法もあります。
壱岐島の最高標高は213mです。そう聞くと「のんびりライド」を想像するかもしれませんが、実際は短く急な坂が連続し、10%超の斜度が突然現れることも。下ってもすぐ次の登りが始まり、脚がじわじわ削られるようなタフさがあります。
しかしこのアップダウンこそが壱岐の魅力です。丘を越えるたびに、青い海や草原、断崖の景色が一気に開け、思わず息を呑む瞬間に出会えます。
また、島は魏志倭人伝にも登場する古代史の舞台で、神社や遺跡が点在し、走るだけで歴史の深さが感じられます。
自然と歴史が交差するこの島を風を切って走る。それこそが壱岐サイクリングの醍醐味です。
走りながら出会う、壱岐島の必見スポット
■まず訪れたい「一支国博物館」
ここでは壱岐についてじっくり学ぶことができます。黒川紀章が手がけた最後の建築作品でもあり、外観も見応え抜群。建物の上部には広々とした屋上があり、長崎県で2番目に広い平野「深江田原(ふかえたばる)」に復元された、原の辻遺跡の集落が一望できます。
島の歴史を予習してから走り出すと、何気ない集落や祠にもストーリーが見えてきます。
■断崖と青い海を味わう絶景めぐり

壱岐島の海岸線では、自然がつくり出したダイナミックな造形美に次々と出会えます。北部の「鬼の足跡」では、岩のトンネル越しに海と空が額縁のように切り取られ、草原の丘と紺碧の海が鮮烈なコントラストを描きます。
西海岸の「猿岩」は、誰が見ても猿そのもののシルエットが印象的な、島を代表する奇岩です。
さらに東側の「左京鼻」では、細く伸びる岬の先端から地球の丸さを感じるほどの大パノラマが広がり、潮風を浴びながら深呼吸したくなる開放感が待っています。
短い距離でこれほど多様な絶景が楽しめる。まさに壱岐サイクリングの醍醐味です。
■透明度抜群の白砂ビーチ「筒城浜」

「筒城浜(つつがはま)」は、白砂の浜が弧を描く美しいビーチで、水の透明度は驚くほど高く、真っ白な砂とのコントラストが南国のよう。夏は泳ぐ人で賑わいますが、オフシーズンは静かで、ただ波音だけが響きます。
■神社の宝庫「壱岐島」の「男嶽神社」
壱岐島は日本有数の「神社密度」を誇ります。中でも特に印象深いのが、島の中央部にある「男嶽(おんだけ)神社」です。かつて禁足地だったというだけあって、境内に漂う空気には独特の静けさがあります。ここは猿田彦を祀る神社で、境内には無数の猿の石像が並ぶ、どこか不思議な光景が広がります。
そしてサイクリスト的に外せないのが、神社へ向かうアプローチが超激坂だということ。展望台もあり、壱岐の大地をぐるりと一望できます。
■島の最高峰、213m「岳ノ辻」
壱岐で最も達成感を味わえるヒルクライムと言えば、やはり「岳ノ辻(たけのつじ)」でしょう。山頂付近には複数の展望台があり、ここから見る景色は格別です。
西側の展望台は夕陽の名所で、水平線に沈むオレンジ色の太陽を眺めながら、ゆっくりと味わう黄昏の時間は格別です。また、東側の展望台では輝く朝陽を拝むことができます。
■壱岐島ならではの「ご褒美グルメ」

走り終えたあとの楽しみと言えば、やはり壱岐の食でしょう。港町ならではの新鮮な海の幸に加え、上質な赤身とほどよい脂が魅力のブランド牛「壱岐牛」、さらに麦焼酎発祥の地として名高い壱岐焼酎と、味わいたい名物が揃います。
サイクリング後の絶品の数々が、旅の満足度を高めてくれます。
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壱岐島の魅力は一言では語りきれません。厳しい地形、海と空と断崖がつくり出す雄大な景色、古くから人が暮らしてきた歴史の深い文化、そして走り切ったあとに待っている島ならではのご褒美グルメ。
自転車とともに海を渡り、壱岐島を走り抜ければ、きっとまた戻ってきたくなるでしょう。
Writer: 才田直人
1985年生まれ。学生時代に通学用に購入したロードバイクをきっかけにトレーニングを開始。サイクルロードレースの全日本選手権参戦やフランスでの選手生活、国内での社会人兼選手生活を経て2023年に引退。日本だけでなく東南アジアなど自転車旅をこよなく愛し、現在はワーケーション自転車旅を続けている。専門的な知識と経験でTV出演やヒルクライムイベントのアテンド、講師なども務める。











