競争がニガテなライダーにこそ知ってほしい!! 「オンタイムエンデューロ」の魅力とは? JECエリア戦に挑戦したライダーを追った!!
モトクロスやクロスカントリーとは違う「オンタイムエンデューロ」の世界について。千葉県の成田モトクロスパークで開催されたJEC東日本エリア戦に参戦したビギナー2人の姿を通じて、その魅力を紹介します。
実際の参加ライダーを追って徹底解説!!
オフロードバイクに乗っているライダーなら、「JEC」や「オンタイムエンデューロ」という言葉を一度は聞いたことがあるかもしれません。しかし、実際にどんな競技なのかと聞かれると、「よく分からない」、「なんとなく難しそう」、「モトクロスやJNCCと何が違うの?」と感じる人も多いのではないでしょうか。
そこで、2026年4月26日に千葉県成田市のモトクロスパークで開催された、MFJ(一般財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会)公認のJEC(Japan Enduro Championship)東日本エリア戦にチャレンジした2人のライダーを通してその魅力を紹介します。
会場に足を踏み入れてまず目を引くのが、パルクフェルメ(車両保管場)にズラリと並んだ参加マシンたちです。レーサー、トレール、外装をカスタムした個性的なマシンまで、まるでレースマシンの展示会のようです。モトクロスのパドックとも、クロスカントリーのスタート前とも違う、少し静かで、でも緊張感のある独特な雰囲気があります。

そもそもオンタイムエンデューロとは、ライバルと一斉にスタートして順位を争うレースではありません。JEC公式サイトでも、オンタイム形式は世界選手権エンデューロやISDEと同じタイムアタック方式であり、「テスト」と呼ばれる競技区間の合計タイムで順位を競う形式と説明されています。
テスト区間は1台ずつコースインし、テストとテストの間には「ルート」と呼ばれる移動区間が設定されます。移動区間は主催者が決めた時間内に走り、テストではできるだけ速いタイムを狙う、という仕組みです。
言葉にすると少し難しく聞こえるかもしれません。タイムチェック、早着、遅着、テスト、ルート……。初めて聞く単語も多く、エントリー前に構えてしまう人もいるでしょう。しかし実際には、まずは「主催者が決めた時間内にミスなく走り、タイムアタック区間で自分なりに攻める競技」と考えれば、ずいぶん分かりやすくなります。大事なのは、無理に誰かを抜くことではなく、自分の技量、体力、集中力をどう使うかです。
今回、この東日本エリア戦に挑んだのが、バイク雑誌やファッション業界で活躍する井上演カメラマンと、オフロードメディアで長く活動し、自身もビギナーライダーとしてエンデューロに参戦する稲垣正倫さんです。
参戦するには、当然ながらMFJの「ライセンス」が必要です。シリーズ戦に参戦してポイントを取得し、昇格を目指す「公認」クラスと、とりあえず体験したい、楽しみたいというライダーに向けた「承認」クラスがあります。いずれもスポーツ安全保険が適用されます。
井上さんは、MFJエンジョイライセンスでも参加できる承認クラスに、BETA「ALP200」で参戦しました。JEC公式サイトでも、承認クラスはまず体験したいライダー向けの入口として紹介されています。
井上さんのバイクは現在はカタログ落ちしていますが、ヤマハ「セロー」のような軽快性と扱いやすさを備えたトレールバイクです。レーサーのような尖った性能ではなく、足つきや取り回しの良さを生かして、難しい路面を丁寧に進めるタイプのマシンです。外装はアチェルビス製パーツでカスタムされ、パルクフェルメに並ぶ姿もなかなか個性的でした。
一方の稲垣さんは、公認クラスであるNBクラスに参戦。成績に応じてポイントを獲得し、上位クラスへのステップアップにつながる選手権クラスです(NB→NA→IB→IAと昇格)。
つまり、同じエンデューロでも、井上さんのようにまず入口として参加できるクラスもあれば、稲垣さんのようにシリーズ戦として挑むクラスもあるわけです。

成田モトクロスパークのコースは、決して楽ではありません。自然の地形を利用したルートはエンデューロならではで、レースが始まれば路面は荒れて刻々と変化し、ラインも変わり、周回を重ねるごとにライダーの体力も削られます。
走り始めは余裕があっても、後半になるとブレーキの握り方、ステップへの荷重、立ち上がりでのアクセル操作など、基本的な動作のひとつひとつにジワジワと効いてきます。
オンタイムエンデューロは、ただ速いだけではなく、マシンと自分の身体を壊さず、最後まで走り切る力が問われる競技なのです。
それでも、2人は本当に楽しそうでした。もちろん疲労はあります。息は上がり、ハンドルを操作する腕は疲弊し、体も重くなり、テスト区間ではミスも出ます。それでも一斉スタートのレースとは違い、基本的には1人ずつ走るため、接触転倒のリスクが少なく、自分のペースで挑みやすいのが大きな魅力です。
井上さんがこの競技に惹かれた理由も、まさにそこにありました。誰かと肘をぶつけ合って前に出るのではなく、時間と自分に向き合う。その感覚が、競争が得意でないライダーにも向いているのです。
もちろん順位はあります。しかし、オンタイムエンデューロの面白さは順位だけでは語れません。前の周より上手く走れた、転びそうだった場所をクリアできた、タイムチェックに間に合った、最後までマシンを壊さず戻ってこられた……そうした小さな達成感が積み重なっていくのが、この競技の魅力です。
JEC公式サイトでも、テスト中で挑む相手は「時間と自分」であり、同じ相手に挑むライバルたちが仲間になっていくことも魅力として紹介されています。
モトクロスのようなスプリントの激しさ、JNCCのようなクロスカントリーの一斉スタートの迫力も、もちろんオフロードレースの大きな魅力です。
一方で、オンタイムエンデューロには自然や路面、時間、そして自分自身とじっくり向き合う面白さがあります。
ルールを完璧に理解してから始めようとするとハードルが高く感じるかもしれませんが、まずはエンジョイクラスから走ってみることで、エンデューロという競技がはっきり見えてきます。
レースが苦手でも、速さに自信がなくても、まずは完走を目指せばいい。パルクフェルメに自分のバイクを並べ、決められた時間にスタートし、テスト区間で自分なりに攻める。そんな1日を終えた時、きっと「また出てみたい」と思えるはずです。
オンタイムエンデューロは、ビギナーにこそ味わってほしい、奥深くて優しいオフロード競技なのです。


































