昭和から続く“レトロ自販機”で胃袋も心も温まる!! 年季の入った機械には手仕込みの味わい 新潟のドライブイン「ポピーとよさか」へ

新潟市北区で昭和54年から営業を続ける「ポピーとよさか」では、店内で富士電機製の麺類自販機やトーストサンド自販機が現役で稼働しています。バイクで訪れ、天ぷらそばとハムサンドを味わいながら、長く愛され続ける理由を探りました。

ボタンの向こう側にある、手仕事のぬくもり

 新潟県新潟市北区内島見(うちしまみ)の県道3号「新潟新発田村上線」沿いにある「ポピーとよさか」にバイクで立ち寄りました。ここは「新新バイパス」(現・国道7号)が開通する以前は国道7号だった道路で、昔からクルマやバイクで移動する人たちが立ち寄ってきた場所です。

 現在は新潟市北区ですが、かつては豊栄市だった地域で、店名の「とよさか」にもその名が残っています。

 撮影の許可をいただき店内へ入ると、昔ながらのゲーム機や自販機、壁いっぱいに貼られた新聞や雑誌の切り抜きなど、長い年月を重ねてきた店ならではの空気が漂っていました。

 店内に掲示された記事を読んでみると、創業は昭和54年(1979年)とのこと。現在はネットで検索すれば店の歴史もすぐに分かる時代ですが、その場所で昔の新聞記事や雑誌の切り抜きを読みながら店の歩みを知るというのも、じつに味わい深いものです。

 自動販売機が日本で急速に広がった背景には、1967年に100円硬貨が改鋳され、大量に流通するようになったこともありました。100円玉を使いやすくなったことが自販機の普及を後押しし、1970年代になると飲料だけでなく、温かい食事を提供する機械も登場していきます。

「ポピーとよさか」で目当てにしていたのが、富士電機製のうどん・そば自販機です。このタイプの麺類自動調理販売機は1975年に発売されました。

 あらかじめ容器にセットされた麺を機械の中で湯がき、容器を回転させて遠心力で湯を切り、最後につゆを注いで提供する仕組みです。

 ボタンを押して出来上がるまでの調理は機械が行いますが、麺を器へ入れたり、かき揚げを作ったり、自販機への補充などは人の手によるものです。つまり、その味を支えているのは人の手なのです。

「ポピーとよさか」の店内で稼働する富士電機製のうどん・そば自販機。富士電機の麺類自動調理販売機は1975年に発売され、現在では稼働する機械も少なくなった。内部で麺を湯がき、容器を回転させて遠心力で湯切りした後につゆを注ぐ仕組み
「ポピーとよさか」の店内で稼働する富士電機製のうどん・そば自販機。富士電機の麺類自動調理販売機は1975年に発売され、現在では稼働する機械も少なくなった。内部で麺を湯がき、容器を回転させて遠心力で湯切りした後につゆを注ぐ仕組み

 さて、ここで選んだのは「天ぷらそば」(400円)です。全国各地のレトロ自販機で何度も食べてきた定番です。100円玉を入れ、ボタンを押し、出来上がりまでのカウントダウンを示す古い表示の数字を眺めながら待つ時間は、何度経験しても楽しいものです。そして取り出し口から温かいそばが現れた瞬間、なぜかちょっと嬉しくなります。

 コチラのそばは麺がやや硬めに感じられ、個人的には好印象です。かき揚げの存在感もあり、卓上に用意された七味を振っていただけば、400円で十分な満足感がありました。

 店内に飾られた昔の写真や掲載記事を眺めていると、昭和54年から長くこの場所で営業を続け、多くの人が訪れてきたことが伝わってきます。

 最初はこのそばだけで済ませるつもりでしたが、太平洋工業製のトーストサンド自販機も素通りできなくなりました。

 同社は1974年に西ドイツのメーカーからトーストサンド自販機の特許実施権を取得し、国内向けの機械を製造しました。今では現役機も少なくなり、麺類自販機と並んで昭和の自販機文化を象徴する存在です。

「ポピーとよさか」ではチーズサンドとハムサンドが各300円で販売中でした。硬貨を投入してハムサンドのボタンを押すと、「トースト中」の表示が点灯し、しばらく待つとアルミホイルに包まれた熱々のトーストが出てきました。

 中身は焼いた食パンにハムを挟んだ、じつにシンプルなもの。それなのに、香ばしく焼けた熱々のパンとハムを頬張ると、なぜかとても美味しく感じます。そこへ缶コーヒーを合わせれば、これ以上ないほどこの場所に似合う組み合わせになりました。

 このトーストも、店の人がパンに具材を挟み、ひとつずつアルミホイルで包んで自販機へ補充しています。便利さだけを求めれば、コンビニへ行けば温かい麺もサンドイッチも簡単に買える時代ですが、レトロ自販機にはそれとは違う魅力があります。

新潟県新潟市北区内島見(うちしまみ)の県道3号沿いにある昭和54年(1979年)創業の「ポピーとよさか」をバイクで訪れた。長年地域に親しまれてきたロードサイド店
新潟県新潟市北区内島見(うちしまみ)の県道3号沿いにある昭和54年(1979年)創業の「ポピーとよさか」をバイクで訪れた。長年地域に親しまれてきたロードサイド店

 コインを入れて機械が動き出すワクワク感と、その裏で商品を仕込む人の存在……機械なのにどこか温かい不思議な感覚こそ、レトロ自販機を見つけるたびについバイクを停めてしまう理由なのかもしれません。

 店内にはカップヌードルの自販機もありました。麺類やトーストサンドに目が向きがちですが、考えてみれば、これも昭和を代表する自販機のひとつです。

 子どもの頃、自販機でカップヌードルを買ってもらい、その場でお湯まで入れられる仕組みを初めて見た時は大きな出来事でした。ワクワクしながら待った記憶も蘇ります。

 昭和54年の創業から長い時間を重ねてきた「ポピーとよさか」は、古い自販機を維持しています。手作りの商品を仕込み、補充しながら営業を続けるのは簡単なことではないはずです。

 100円玉を入れると温かなそばや、アルミホイルに包まれた熱々のトーストを味わえます。自販機という機械を通して人の温かさまで感じられるこの場所が、この先も末長く残って欲しいと思いながら、再びバイクに跨りました。

【画像】新潟のロードサイドで昭和から続く“レトロ自販機”のドライブインを画像で見る(24枚)

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