女子ボクシング世界チャンピオンとカスタムバイクビルダーの異種格闘技戦!? 世界で戦う2人の意外な共通点とは

女子ボクシング世界チャンピオン多田悦子選手と、自らの手で仕上げたバイクで世界最高速記録を目指す松村友章氏。数分で決着がつく世界で戦う2人が拳を合わせたクロストークには、意外な共通点がありました。

女子ボクサーとバイクビルダー、異種格闘技戦の鐘をいま、鳴らせ!

 多田悦子選手は、神戸市の「真正ボクシングジム」に所属するWBA女子世界ミニマム級、IBF女子世界ミニフライ級、WBO女子世界ミニフライ級と、3つのタイトルを冠した現役女子ボクサーです。

2020年1月28日に行われたWBO女子世界ミニマム級王座決定10回戦時の多田選手

 2020年1月のWBO女子世界ミニマム級王座決定戦では宮尾綾香選手(ワタナベボクシングジム)と対戦し、結果はドロー。現在は試合前より痛めていた右太もものリハビリ中です。

 対する松村友章氏は、同じく神戸市でハーレーのチョッパースタイルをアイデンティティとしたカスタムショップ「シウンクラフトワークス」の代表を務めるカスタムバイクビルダーです。

 アメリカ・ユタ州の「ボンネビル・ソルトフラッツ」という塩湖の跡地で行われる「ボンネビルモーターサイクルスピードトライアルズ」(定められた計測区間での最高速を競う)や、日本で開催されている「VDA」(ハーレーによるドラッグレース)など様々なレースにエントリーし、スピードの世界で闘うレーサーでもあります。

 こんな2人が出会ったら、一体どんな話が繰り広げられるのでしょうか。早速ゴングを鳴らしてみましょう! カーン!

2005年に「AMDワールドチャンピオンシップ」というアメリカのカスタムショーにチャレンジした際に製作した「Salty Bonny」の名を継承する「Salty Bonny 2」

 ショップに入るなり多田選手、見たことのない造形のバイクに興味津々です。「Salty Bonny 2」と名付けられた、ボンネビルモーターサイクルスピードトライアルズに参戦した細く長いその車両。もちろん許可を得て、慎重に懐へ飛び込みます。

 多田「細! 狭! なんでこんな形なんですか?」

 松村「速く走るためには空気抵抗を抑えないといけないので、様々な計算をした結果こんな形になったんです」

 多田「体勢はキツくないんですか?」

 松村「塩が固まった湖の上を走るので、地面は硬くボコボコで振動がものすごく、中腰のポジションを維持するのがキツくて伏せきれずに走りました。そうすると前から来る風を受けて頭が激しくシェイクされて、首がとにかくキツかったです。

 反省点はたくさんありますが、1番はサスペンションです。あのスピードでのあの振動は、もう完全にトラウマです……」

もともとバイクは好きだが初めてのタイプの車両に質問が止まらない多田選手

 多田「スピードは何キロ出るんですか?」

 松村「公式に計測されたのは280キロですが、おそらく300キロは出てたかと思います」

 多田「300キロ! って、どんな感じなんですか?」

 松村「コケたら死ぬな、とは思っています」

 多田「命がけですね! ボクシングの世界戦もお互いの人生をかけてリングに上がっているので、負けることが死ぬことではないけど、死と同じくらいの気持ちではいます」

 松村「そうなんですね。ボクサーもある意味命がけですね。レースはたった2分から3分程度ですが、絶対に日常ではあり得ないスピードや環境の中で走ります。

 塩の湖は白の反射が凄く屋根もなく、とにかく暑いんです。そして走る順番が来るまでひたすら待つ、という忍耐も強いられます。その状況で最速を目指すので、肉体や精神もかなり極限に追い込まれ、一瞬の操作や判断ミスが死に直結する、ということを理解はしています」

 多田「時間もだいたい一緒ですね。ボクシングの試合は女子は1ラウンド2分、男子は3分です」

 松村「世界戦はどんな感じですか?」

WBO女子世界ミニマム級王座決定10回戦では三者三様のスプリット・ドローで複雑な表情の両選手(2020年1月28日)

 多田「世界戦はやはりノンタイトルの試合とは全く違います。なにせ勝ったら世界一、チャンピオンですから。その為に辛い練習も耐えるし、仲間や応援してくれるみんなの思いも背負っています。

 自分は準備をしっかりする方なので試合の前は比較的落ち着いていますが、この数年は年齢、何より戦うことへの情熱が無くなったら引退、と思っています。だからこそ前回の試合は体調が万全で挑めなかったので悔いがあって。

 いまはリハビリに励む日々ですが、しっかり準備して、キャリアの集大成としてやはり4団体目のベルトを取った後の自分を見てみたいと思っています」

 初対面なのにいきなり話の通じる2人に驚きを隠せません。いい距離感でしたが徐々に松村氏のジャブが効き始めます。

 松村「あっちのバイクは、ナックルヘッドって言うエンジンです」

 多田「ナックル? 拳ですか!?」

ナックルヘッドが気に入った様子の多田選手

 松村氏が指したのは、2019年の「神戸ニューオーダーチョッパーショー」でビルダーズチョイス1位を獲得した「PURPLE JELLY」と名打たれた1台です。

 発表時はショベルヘッドエンジンを搭載していましたが、オーナーのためにナックルヘッドエンジンに載せ替えられていました。「ナックルヘッド」とは、ハーレー・ダビッドソン社が1936年から1947年まで製造していたシリンダヘッドの造形が「拳」に例えられるエンジンです。

 サウスポーの多田選手、たまらず代名詞の左ストレート! まさかの鉄の拳と世界チャンピオンの拳のぶつかり合いです!

2019年の「神戸ニューオーダーチョッパーショー」で1位を獲得した「PURPLE JELLY」にまたがる多田選手。すっかり打ち解けた2人の、今後の活躍が楽しみです

 最後はにこやかに記念写真でテンカウント。共に神戸で生きながら、舞台は違えど世界で戦ってきた2人。あまりにも共感することが多く途中で試合ではなくなったため結果はノーコンテストです。

 今後も世界での活躍が楽しみな2人、ありがとうございました!

【了】

【画像】多田悦子(真正ボクシングジム) VS 松村友章(シウンクラフトワークス)(9枚)

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