太いタイヤは何のため? 見た目も強烈なファットバイクは悪路の走破性にファッション性も魅力

極太サイズのタイヤを装着した「ファットバイク」と呼ばれるMTB(マウンテンバイク)にはどのような特徴があるのでしょうか。

自転車のTW(ティーダブ)? 見た目だけじゃないファットバイクの魅力

「ファットバイク」と呼ばれる自転車をご存じでしょうか? ここ15年程の間に確立された比較的新しいカテゴリーなので、まだ見たことがないという人も多いと思います。

ファットバイクの元祖、サーリー「パグズレイ」(2020年モデル)。一般的なMTBはフロント、または前後にサスペンションを備えるが、エアボリュームの大きなタイヤがサスペンションの役割を果たすため前後リジットに。価格は29万1280円(税込)

 一般的に、幅5インチから8インチのタイヤを採用する自転車のことをファットバイクと言います。5インチというのは、一般的なMTB(マウンテンバイク)の倍近い太さで、まさに極太サイズ。ここまで太いタイヤになると、クリアランスを確保するためにフレームやフロントフォークなどは専用設計となります。

 現在のファットバイクの元祖はアメリカの自転車ブランド「SURLY(サーリー)」によって生み出されました。サーリーの本拠地であるミネアポリスの極寒の地として知られ、冬はあたり一面銀世界となります。そこで熱心なサイクリストである現地の開発スタッフが考えたのが雪原や氷結路をものともしない自転車、つまりファットバイクなのです。

 タイヤを太くして接地面積を増やすと、面積あたりの圧力(接地圧)を小さくすることができ、雪でもタイヤが埋まることなくトラクションを確保できるという理屈です。雪上車が接地面積の大きい履帯(いわゆるキャタピラ)を採用するのと同じ。じつにシンプルな方法ですが、その効果は絶大でした。こうして2004年に世界初の量産ファットバイクである「パグズレイ」というモデルが登場することになります。

 当初はマニアックなメーカーによるマニアックな自転車という扱いでしたが、やがて極太タイヤによるメリットが多くのサイクリストに評価されるようになります。

サスペンション機構を採用しないシンプルなフレーム構造のため、キャリアなどのアクセサリーが装着しやすいというメリットもある

 ファットバイクはエアボリュームの大きなタイヤがサスペンション代わりになり、トレイルを含めた未舗装路全般で抜群の悪路走破性を誰でも“イージー”に発揮することができるからです。ライダーが路面状況に応じて細かな荷重移動を行うといった従来のMTBライドのセオリーを無視してもグイグイと悪路を走破でき、タイヤの空気圧を変えるだけで簡単にバイクの特性を自在に変化させられるという汎用性もありました。

 一般的な高性能MTBのように複雑なサスペンション機構がないため、機械的信頼性に優れ、メンテナンスやセッティングもごくシンプルに行えるため、長距離ツーリングバイクとしても支持されています。

 タイヤが太いということは、比例して走行抵抗も大きくなるはずですが、最近のモデルはとても軽量にできており、見た目よりもずっと軽快に走ることができます。当初はタイヤやチューブの種類が少ないのが欠点でしたが、多くのメーカーが参入したことでそれも解消されました。

太いタイヤを装備するヤマハのアドベンチャートレール「TW200」(1987年型)

 さて、モーターサイクルでも似たような理由から極太タイヤを採用したモデルがありました。ご存じ1987年に登場したヤマハの「TW(ティー・ダブリュ―)」です。後にストリートカスタムブームの立役者となる同車(通称:ティーダブ)ですが、当初は道なき道を行く純然たるアドベンチャーマシンでした。バイク冒険家、風間深志さんが北極点遠征のパートナーとして選んだのがこのTWだったというのは、有名な話ですね。

【了】

【画像】極太タイヤのファットバイクとヤマハのアドベンチャートレール「TW」

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Writer: 佐藤旅宇(ライター)

オートバイ専門誌『MOTONAVI』、自転車専門誌『BICYCLE NAVI』の編集記者を経てフリーライターに。クルマ、バイク、自転車、アウトドアのメディアを中心に活動中。バイクは16歳のときに購入したヤマハRZ50(1HK)を皮切りに現在まで20台以上乗り継ぐ。自身のサイト『GoGo-GaGa!』も運営する1978年生まれ。

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