大切な人にめぐり合うための一人バイク旅 BANNERS「Ghost」
浮遊感のあるファルセットボイスをもつBANNERSのデビューシングル「Ghost」は、見終わったあとには心の奥にすこしだけ温かみが生まれるミュージックビデオです。
もし、あなたがゴーストだったら何をしたいですか?
イギリス・リヴァプール出身のミュージシャンBANNERSが出した答えは、「バイクに乗って大切な人に会いに行く」でした。

Coldplayのクリス・マーティンのようなファルセットボイスとエモーショナルで美しいメロディがトレードマークのマイケル・ネルソンのプロジェクト、BANNERSは2015年にデビューしました。デビューアルバムからの最初のシングル「Ghost」はアメリカの人気テレビドラマシリーズ「Teen Wolf」のシーズン5で印象的に使用され、話題となりました。この「Ghost」のミュージックビデオのなかで、冒頭の問いに対するBANNERSの出した答えを見ることができます。
マイケルがみた?悪夢” がベースになっているというミュージックビデオは、一人の男のバイク旅のようすを淡々と映し出していきます。イギリス・コッツウォルズ地方の田園風景や、中世から時が止まったかのようなはちみつ色の街をクルージングする、フルフェイスヘルメットのライダー。彼はヘルメットも取らずに民家へと立ち入り、懐かしそうに写真を眺め、家主の寝ている寝室へ行き寝顔を見ています。次の家でも同じように写真やぬいぐるみをいとおしそうに愛でて、寝室で寝ている人をのぞき込みます。どの家でも寝ている人たちは起きないし、やけに静かで何かがおかしい。これは夢か現実か? と視聴者が考えはじめたところで、はたとこの曲のタイトルが「Ghost」であることに気づくのです。最後に立ち入った家では、花瓶の花は枯れて時間が止まってしまったかのよう。そして次に向かった寝室で出会ったのは……。

心を震わせるメロディーと浮遊感のあるファルセットボイス、絵本に出てくるようなコッツウォルズの美しい景色とが相乗効果を生み出して、思わず現実から逃避して引き込まれてしまうほどの映像美がそこにあります。全体のトーンとしてはひんやりとしているものの、見終わったあとには心の奥にすこしだけ温かみが生まれる、そんな不思議な感覚のミュージックビデオは、身も心も凍えてしまいがちなこれからの季節におすすめです。