幼きゲリラ兵たちが彷徨う極限世界! 美しくも恐ろしき怪作『MONOS 猿と呼ばれし者たち』

時代も場所も定かでない世界のどこかを舞台に、まだ表情に幼さが残る少年少女兵たちが極限状況で徐々に制御を失っていく姿を独特なタッチで描いた映画『MONOS 猿と呼ばれし者たち』が、2021年10月30日(土)より公開されます。

幻想的な映像がえぐり出す世界の現実

 猿と呼ばれし者たち――この不思議なタイトルの映画を手掛けたのは、コロンビアの新鋭アレハンドロ・ランデス監督。彼の祖国で50年以上続いた内戦を下敷きに、まだ表情に幼さの残るミドルティーンの少年少女兵たちが、内輪揉めや敵の襲撃により、隔離された極限状況で徐々に制御を失っていく……という物語です。

『MONOS 猿と呼ばれし者たち』(c)Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film i Vast, Pando & Mutante Cine

 キャストたちの自然な演技はドキュメンタリーのようであり、色濃度の高い映像と大胆なカメラワーク、不穏な音楽は前衛アートの趣すら感じさせます。しかし物語の根っこには、いまだコロンビアに暗い影を落とす悲惨な史実――革命軍を名乗るゲリラ組織による内戦――があり、善悪も敵味方の存在も曖昧な幼き兵士たちの無軌道さをもって、言語化不能な恐怖を見事に映像化しています。

 兵士たちの主な任務は人質の監視のようですが、この人質も“博士”と呼ばれるアメリカ人であるということ以外の詳細は不明。このあたりは、実際に当時のゲリラたちが身代金目的で誘拐を繰り返していたことがベースになっていると思われます。博士を演じるジュリアンヌ・ニコルソンは本作における数少ないハリウッド俳優の一人ですが、被害者であるはずの彼女が醸し出す狂気は、物語の重要なファクターの一つと言えるでしょう。

 やがて物語の舞台は美しく開放的な山岳地帯から、中盤以降は前後不覚なジャングルへと移ります。責任を押し付け合い、人質に逃げられ、精神的に追い詰められた兵士たちは完全に秩序を失った暴力集団となり、事態は急速に泥沼化していきます。ランデス監督は、ナチスドイツによる「ハティニ虐殺」を基にした『炎628』(1985年)を参考に脚本を執筆したそうですが、子ども目線で描かれた戦争の恐怖という共通点には納得です。

自衛隊には専用装備が施されたカワサキKLX250を駆る偵察部隊があります

 自衛隊には専用装備が施されたカワサキKLX250を駆る偵察部隊がありますが、本作で兵士たちを厳しく指導する上官は、なんと馬に乗って登場。あまりにも世間と隔絶された世界ゆえに国だけでなく時代設定も曖昧で、同時に大自然での撮影の過酷さも伝わってきます。また、要所でのみ使用されるミカ・レヴィの音楽も観客の心理に作用し、物語に没入していても聴き流すことを許しません。

『MONOS 猿と呼ばれし者たち』(c)Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film i Vast, Pando & Mutante Cine

 おそらく南米のどこか、神秘的な山岳地帯の砦、極彩色の密林。コロンビアで現在も水面下で続く武装闘争をベースにしながらも、世界が議論すべき様々な問題を幻想的に問いかける『MONOS 猿と呼ばれし者たち』は、2021年10月30日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかで公開です。

『MONOS 猿と呼ばれし者たち』予告編

【了】

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