バイクのカウルはどうやって生まれたのか?

カウルといえば、走行中の空気抵抗を軽減してくれる役割を持ったバイクパーツのひとつ。今では設置されているのが当たり前となっていますが、カウルはいつ、どうやって生まれたのでしょうか。

カウルはどうやって生まれたのか?

 まず、第一次世界大戦後の1920年代に飛行機の開発として、カウルが装着されるようになりました。それまでは剥き出しのエンジンが搭載されていましたが、空気抵抗を低減させるために、エンジンがカウルで覆われるようになったのです。

 この時代はスピードを競った時代で、飛行機だけではなく、バイクでもスピードを求めて頻繁にレースが行われていました。そのような中で、レースのためのバイクにもカウルが装着されるようになったと言われています。

ホンダ「CB1100RB」

 カウルを装着したレース用のバイクとして、1955年に登場したモト・グッツィの「MOTO GUZZI V8」が挙げられます。モト・グッツィはイタリア最古のオートバイメーカーで、この「MOTO GUZZI V8」はDOHC V型8気筒500ccエンジンを搭載しており、最高回転数は12,000rpm、最高速度は275km/hまで達しています。

MOTO GUZZI V8(1955)

 その後1970年代になると、レース用のバイクでなくともカウルを装着したモデルが増えます。量産車で最初にフルカウルを装備したのは、1976年に発売されたBMW Motorrad「R100RS」。

 大きなカウルが印象的なデザインのモデルで、バイクに跨った姿を正面から見るとヘルメットの頭の部分のみが見え、それ以外の部分はカウルの中に納まってしまうほどの大きさを誇っていたのです。

 しかし、海外ではカウルを装着したモデルが増えていたものの、1970年代の日本では、カウルを装着したバイクは認可されていませんでした。カミナリ族や暴走族など、若者がバイクで暴走行為をする行為が問題になっていた時代背景もあるでしょう。

 カウルを装着したバイクはスピードを出すことを目的にしており、暴走行為の引き金になると考えられていたため、日本のバイクメーカーが国内向けにカウルを装備したバイクを発売することはありませんでした。

BMW Motorrad「R100RS」

 しかし、輸出モデルではあるものの日本のメーカーもカウルを装備したモデルを生産していました。カワサキ「Z1R」やホンダ「CB1100R」などのカウル付きの輸出モデルは、ライダーにとって憧れの的だったのです。

 日本国内ではカウルを標準装備したモデルが発売されなかったため、バイクのパーツを扱うショップから後付けのパーツとして、カウルが販売されるようになります。

 1970年代から1980年代にかけての日本では、バイクの改造が流行っていました。快適性や利便性を切り捨て、速度や旋回性能を追求したカフェレーサーとよばれる改造スタイルがありますが、カフェレーサーの流行りで非合法ながら、カウルも人気となったのです。

ホンダ「CB1100RB」

 そして、日本でカウルを装備したバイクが認められるようになるきっかけとなったのが、1982年6月に発売されたホンダ「VT250F」です。

 水冷4サイクルV型2気筒DOHC8バルブ250ccエンジンを搭載したロードスポーツモデルですが、当初はカウルとしてではなく、「ウィンカーランプ一体型組み込み式メーターバイザー」という呼び方をしていました。これが形式認定を得たことをきっかけに、翌年にはフルカウルを装備した「VT250Fインテグラ」を発売しています。

 市販車で最初にカウルを標準装備したのは、1982年7月に発売されたホンダ「CBX400Fインテグラ」です。空冷4サイクルDOHC4バルブ4気筒400ccエンジンを搭載した中型のスポーツバイクで、ロードレース活動で得た知見を取り入れて設計した1台とされています。

 また、フロントカウルによって走行中の風の流れをライダーの上方に流し、走行時の風圧による疲労を軽減するようにデザインされました。

ホンダ「VT250F(1982)」

「CBX400Fインテグラ」がハーフカウルであるのに対し、ヤマハが1982年に発売した「XJ750D」は、フルカウルを装備した日本で最初の市販車です。スポーツツアラーに分類されるバイクで、カウルによる高い風防効果が魅力の1台でした。空冷4ストロークDOHC2バルブ並列4気筒750ccエンジンを搭載し、デジタル表示のメーターを装備していた点も先進的といえるでしょう。

 その後、レーサーレプリカと呼ばれるレーシングマシンでつちかわれた性能やスタイリングを、市販のモデルに取り入れたタイプのモデルが発売され、レーサーレプリカブームが起こります。レーサーレプリカにも、カウルが標準装備されています。

ヤマハ「XJ750D(1982)」

「CBX400Fインテグラ」がハーフカウルであるのに対し、ヤマハが1982年に発売した「XJ750D」は、フルカウルを装備した日本で最初の市販車です。スポーツツアラーに分類されるバイクで、カウルによる高い風防効果が魅力の1台でした。空冷4ストロークDOHC2バルブ並列4気筒750ccエンジンを搭載し、デジタル表示のメーターを装備していた点も先進的といえるでしょう。

 その後、レーサーレプリカと呼ばれるレーシングマシンでつちかわれた性能やスタイリングを、市販のモデルに取り入れたタイプのモデルが発売され、レーサーレプリカブームが起こります。レーサーレプリカにも、カウルが標準装備されています。

スズキ「RG250Γ(ガンマ)」

 1983年に発売されたスズキ「RG250Γ(ガンマ)」は、レーシングマシンそっくりのスタイリングで大きな反響を呼び、レーサーレプリカの先駆けとなりました。

 水冷2サイクル2気筒250ccエンジンを搭載していたほか、市販車では世界初となるアルミフレームも採用したモデルです。1983年の発売当初はハーフカウルでしたが、1984年にはフルカウルを装備し、この人気によってカウルが普及していきました。

※ ※ ※

 走行中の空気抵抗を軽減するため、現在はバイクに装備されることが一般的になったカウル。しかし、カウルは誕生してから約100年の歴史がある部品です。

また、今では高速での走行時や長距離ツーリング中などに、ライダーの負担を軽減してくれる欠かせない部品ですが、40年ほど前まではカウルの装備は非合法であったというのも興味深い点ではないでしょうか。

【了】

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