9.11から20年、全米を震撼させた“容疑者”の手記を映画化『モーリタニアン 黒塗りの記録』

9.11以降、対テロ対策で混迷するアメリカの暗部に切り込み、法による正義を全うさせようとした人々の戦いを描いた『モーリタニアン 黒塗りの記録』が、2021年10月29日(金)より全国公開中です。

暴走する国家を正すための戦い

 あのオサマ・ビンラディンと共謀しテロリストをリクルートしたという容疑で、十数年間にわたって拘禁されたモハメドゥ・ウルド・スラヒによる手記を、ベネディクト・カンバーバッチがプロデュース・出演した衝撃作が『モーリタニアン 黒塗りの記録』です。スラヒの手記は「グアンタナモ収容所 地獄からの手記」(河出書房新社)として日本でも出版されているので、既知の映画ファンも少なくないでしょう。

『モーリタニアン 黒塗りの記録』(c)2020 EROS INTERNATIONAL, PLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 手記の出版時にはまだ悪名高きグアンタナモ米軍基地に収容所されていたというスラヒを演じるのは、カンヌ国際映画祭グランプリ作『預言者』(2009年)主演のアルジェリア系フランス人俳優タハール・ラヒム。スラヒを弁護するクレバーな人権派弁護士ナンシー・ホランダーを演じるのは、ご存知ジョディ・フォスター。カンバーバッチは、検察官としてスラヒの有罪を証明するよう命じられたスチュアート中佐をアメリカ英語で演じます。

2013年に発表されたドゥカティ「モンスター20周年記念モデル」

 また、ナンシーの若き同僚テリーを演じるのは『きっと、星のせいじゃない。』(2014年)のシェイリーン・ウッドリー。さらにスチュアートの元同期であるCIA職員ニールを、『シャザム!』(2019年)のザッカリー・リーヴァイが演じています。バイカーとしても知られるザッカリーは、自宅のガレージを“男子部屋”のように改造していることでお馴染みですが、そこにドゥカティ・モンスターの20周年モデルと思しきバイクを置いてあることが、2015年のWEB番組で確認できます。

 さて、本作には当然ながら、実話をベースにCIAによるビンラディン殺害までを追ったアカデミー受賞作『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012年)のブラック・サイト(非人道的な尋問などを行うための秘密軍事施設)描写と共通する部分が多々あります。しかし、本作は『ゼロ・ダーク・サーティ』が結果的に投げかけた人道・倫理の部分により特化していて、ナンシーら弁護士がスラヒへの不当な扱いを正そうとする戦いを描くものです。

 本作のメイン登場人物たちは皆、基本的には正義のもとで職務を全うしようとする善人です。それに対する“悪”は、真犯人ではなくても誰かにテロの責任を取らせなければいけない、と考えているアメリカという国の病理そのもの。私たちが過去に映画で何度も目にしてきた、はじめから処刑目的の不条理な拘束・尋問。そしてスラヒが十数年間も拘束されていたという事実は、アメリカという国が正義を見失い、建前だけで突っ走っていたことを証明しています。

『モーリタニアン 黒塗りの記録』(c)2020 EROS INTERNATIONAL, PLC. ALL RIGHTS RESERVED.

“法の遵守”という映画的には地味ですが、日本を含む現代社会にとっては不可欠な枠組みから正義を問いかける『モーリタニアン 黒塗りの記録』は、2021年10月29日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中です。

『モーリタニアン 黒塗りの記録』予告編

【了】

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