ファン・ジョンミンとイ・ジョンジェ共演の極上バイオレンス・ノワール『ただ悪より救いたまえ』

韓国を代表する名優ファン・ジョンミンと、今を時めく世界的なスターとなったイ・ジョンジェという強力タッグが8年ぶりの共演を果たした、韓国ノワールアクション『ただ悪より救いたまえ』が、2021年12月24日(金)より全国公開中です。

二人が通った後には血の雨が降る

 韓国を代表する名優の一人ファン・ジョンミンと、Netflix『イカゲーム』(2021年)で世界的なスターとなったイ・ジョンジェが、名作『新しき世界』(2013年)以来となる共演を果たしました。南国タイを舞台に、暴力しか知らない男たちの血みどろの戦いを描くバイオレンス・アクション『ただ悪より救いたまえ』です。

『ただ悪より救いたまえ』(c)2020 CJ ENM CORPORATION, HIVE MEDIA CORP. ALL RIGHTS RESERVED
『ただ悪より救いたまえ』(c)2020 CJ ENM CORPORATION, HIVE MEDIA CORP. ALL RIGHTS RESERVED

 映画冒頭、豊原功補が演じる在日韓国人ヤクザが登場するシーンから、血生臭さ全開の容赦ないバイオレンス展開。その後も延々と続く暴力描写はどんどんエスカレートしますが、ギリギリのところで直接的な描写を避けているおかげで、目を背けたくなるようなエグみは無いのでご安心を。とはいえ刃物による近接戦などは血しぶきが舞い散る壮絶さで、思わず握り拳に力が入ってしまいます。

 そんな本作の主人公は、長年にわたって国からの暗殺を請け負ってきたインナム(ジョンミン)。インナムは数年前に“用済み”となり日本へ逃れてきたのですが、他に生きる術を知らない彼は日本でも暗殺者としてひっそり生きていました。しかし、当時の恋人から「娘が誘拐された」という連絡が入り、急遽バンコクへ向かいます。そこに、インナムに兄を殺され復讐に燃える殺し屋レイ(ジョンジェ)が加わったことで、南国タイに血の雨が降り注ぎます。

『アジョシ』(2010年)や『ドライヴ』(2011年)のような“暗殺者の悲哀”を描く物語でありながら、実は誘拐大国だというタイを舞台にした勝手の分からない状況がサスペンス度を増強。汗蒸す南国のネオンが眩しい雰囲気は『オンリー・ゴッド』(2013年)を彷彿させますが、同作で異様な存在感を放っていたヴィタヤ・パンスリンガムが重要な役柄でカメオ的に登場するので、映画ファンならば思わずニヤリとさせられるでしょう。

 物語は娘の救出シークエンスから、インナムとレイの直接対決へと流れていきます。バンコクにいながら地味な黒スーツ姿でじっとり汗をかくインナムと、グッチなどの高級ファッションに身を包んだまま殺害した相手の返り血を浴びるレイ。通常ならばインナムを人格者として描くところですが、娘を見つけるためならば残酷な拷問もいとわない、安易な感情移入を許さない人物描写からは“バイオレンス満載のノワールを”という制作陣の覚悟を感じます。

『ただ悪より救いたまえ』(c)2020 CJ ENM CORPORATION, HIVE MEDIA CORP. ALL RIGHTS RESERVED
『ただ悪より救いたまえ』(c)2020 CJ ENM CORPORATION, HIVE MEDIA CORP. ALL RIGHTS RESERVED

 性格は正反対のインナムとレイですが、通った後には血の雨が降るという共通点があり、まさに“歩く厄災”といった危険なオーラを放つ名優二人には脱帽です。これ以上ないだろう最悪な状況に、それを上回る最悪をぶつけるという、まさにサスペンス~バイオレンス、ド派手アクション展開の釣瓶撃ち。思わず「うわっ」と叫んでしまいそうになるほどの激しいスタントは、ハリウッド映画でもなかなかお目にかかれないでしょう。ただ殺し合うだけでなく、タイの古びたビル街でのスリリングな逃走・追跡シーンも山盛りで、手に握った汗が乾く暇もありません。

 本作の武術監督を務めたイ・ゴンムンが、第29回釜日映画賞で同年公開の『KCIA 南山の部長たち』や『新 感染半島 ファイナル・ステージ』を抑えて美術/技術賞を受賞したことにも納得のアクションの数々。序盤の日本~韓国のシーン以外、何かと勝手が異なるであろう海外ロケを敢行したそうですから、制作チーム全体の統率力の高さも窺えます。理想郷を目指すという展開を含め、どこか見覚えのある物語構成ではあるのですが、いま最高にホットなジョンミンとジョンジェの再共演は絶対に見逃せません。

 ジョンミンといえば、大ヒット主演作『ベテラン』(2015年)で韓国産バイク、デイリン・デイスター125(白バイ仕様)で悪漢を追い詰めるクライマックスシーンが印象的でした。今回はまったく正反対の役柄ですが、“なにがあっても目的を達成する男”を体当たりで演じる、鬼気迫るオーラは相変わらずです。

『ただ悪より救いたまえ』(c)2020 CJ ENM CORPORATION, HIVE MEDIA CORP. ALL RIGHTS RESERVED
『ただ悪より救いたまえ』(c)2020 CJ ENM CORPORATION, HIVE MEDIA CORP. ALL RIGHTS RESERVED

『チェイサー』(2008年)や『哀しき獣』(2010年)といった名作の脚本を手掛けてきたホン・ウォンチャンが、豪華キャストを迎えて贈る監督2作目『ただ悪より救いたまえ』は、2021年12月24日(金)よりシネマート新宿、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国公開中です。

『ただ悪より救いたまえ』予告編

【画像】『ただ悪より救いたまえ』の画像を見る(10枚)

画像ギャラリー

最新記事