モトグッツィ「V100マンデッロ」 伝統のエンジン形式と味わいを維持しながら全面新設計!!
現存するイタリア最古のバイクブランド「MOTO GUZZI」は、完全新設計で排気量1042ccの縦置き90度Vツインエンジンを搭載する「V100 Mandello」を2021年に海外で初公開し、日本市場へは2023年に導入されました。伝統の形式を維持しながら現代の技術を投入した新型モデルの乗り味を確かめました。
ブランド史上初!? のフルモデルチェンジ
2023年から発売が始まったモトグッツィの新型モデル「V100 Mandello(V100マンデッロ)」は、モトグッツィにとって久しぶりの全面新設計車です。どのくらい久しぶりなのかと言うと、2013年型「カリフォルニア1400」以来、2005年型「ブレヴァ1100」以来、などという説もありますが、既存のモデルとの共通部品が皆無という見方をするなら、同社製縦置き90度Vツインの第1号車となった1967年型「V7」以来……なのかもしれません。

そんな「V100マンデッロ」に関して、発売前に大きな注目を集めたのは、ガソリンタンク左右のディフレクターが状況やモードに応じて自動で開閉する、世界初の「アダプティブ・エアロダイナミクス」だったようです。
もっともそれ以上に重要な要素は、縦置き90度Vツインという伝統の形式を維持しながら、現代の技術を投入して大胆な構造改革を行った、新世代のパワーユニットでしょう。
すべてを一新した「コンパクトブロック」
モトグッツィの縦置き90度Vツインには、1967年型「V7」に端を発する「ビッグブロック」と、1977年型「V50」の発展型となる「スモールブロック」の2種類が存在します。そして「V100マンデッロ」は、ビッグブロックの路線を継承するモデルなのですが、同社は新世代のパワーユニットを「コンパクトブロック」と命名しました。

その理由は、既存のエンジンに対してかなりの小型化が実現できたからのようですが(スモールブロックより前後寸法が103mm短い)、スモールが排気量853cc、コンパクトが1042ccという状況には、違和感を覚える人がいそうな気がします。
なおコンパクトブロックには、外寸の小ささ以外にもさまざまな特徴が備わっています。中でも最も注目するべき要素は、既存の吸排気の方向を90度回転させる形で、中央吸気・側方排気を採用したことですが、シリーズ初の水冷システムや現代的なDOHC4バルブヘッド、フィンガーフォロワーロッカーアーム、クランクと逆回転するフリーホイールなども、既存のビッグ/スモールブロックと異なる機構です。
いずれにしても「V100マンデッロ」のエンジンの詳細を知った私(筆者:中村友彦)は、縦置き90度Vツインの未来にかける、開発陣の強い意気込みを感じました。
旧車好きにもオススメできる
この乗り味なら、旧車好きも気に入るんじゃないか。今回の試乗で「V100マンデッロ」(取材車両は上位グレードの「S」バージョン)を初体験した私はそんな印象を抱いたのですが、改めて考えると、それは珍しいことかもしれません。例えばショベルヘッド以前のハーレー・ダビッドソンや、OHV2バルブ時代のBMW Motorrad、ベベルドゥカティなどを愛用している旧車好きに、私が各社の最新型をオススメすることは滅多にないのですから。

ではどうして、「V100マンデッロ」を旧車好きも気に入りそうと感じたかと言うと、昔ながらのモトグッツィらしさが健在だったからです。具体的な話をするなら、アイドリングでスロットルを操作した際はわずかとはいえトルクリアクションが発生しますし(ただしクランクの回転方向が従来とは逆になったので、車体は左に傾こうとする)、低回転域で心身に伝わる大排気量ツイン特有の鼓動感とトルク、中~高回転域で味わえる90度Vツインならではの爽快感も相変わらずです。また、ライディング中にエンジンとバイク全体の“芯”であるクランクシャフトの存在が感じやすいことにも変わりはありません。
と言っても、乗り手を選ぶ特性だった既存のビッグブロック搭載車と比べれば、「V100マンデッロ」の乗り味はずいぶん洗練されているのです。エンジンの反応はどんな領域でもスムーズで優しいですし、シャシーはあらゆる場面でなかなかの包容力を披露してくれます。この特性なら大型車ビギナーでも、ハードルの高さを感じることは無いでしょう。
ただし、それでいて“らしさ”を失っていないのが「V100マンデッロ」の素晴らしいところで、おそらくこのモデルの開発には、既存のモトグッツィの美点と欠点を熟知したベテランが関与していると思います。
モトグッツィの将来に関する不安と期待
改めて言うのも何ですが、私は昔からモトグッツィが大好きで、近年では「V7」シリーズと「V85TT」にかなりの好感を抱いています。ただしその一方で、同社の将来にそこはかとない不安を感じていました。何と言ってもこの2機種の縦置き90度Vツインは、前述したスモールブロックの発展型なのですから。

もっとも、旧車好きの私にとっては40年以上前の基本設計が生き残っている=実に素晴らしいことなのですが、今後の排出ガス規制やライバル勢の著しい進化を考えると、現状の態勢を維持することは難しいでしょう。
そんな中で登場した「V100マンデッロ」は、モトグッツィの未来を背負う希望の星で、おそらく今後は派生機種として、アドベンチャーツアラーやネオクラッシクモデル、クルーザーなどが登場するはずです。
いずれにしても今回の試乗で、「V100マンデッロ」とコンパクトブロックの魅力を実感した私の中では、モトグッツィの将来に対する不安がきれいさっぱり消え去ることとなりました。
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モトグッツィ新型「V100マンデッロ」の価格(消費税10%込み)は220万円、上位グレードの「S」バージョン(取材車両)「V100マンデッロS」は264万円です。日本市場では2023年2月より受注が開始されました。
Writer: 中村友彦
二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。













