バイク通学を許可!? 背景にバス減便 鹿児島県全日制高校の75%が
労働人口の減少と働き方改革の影響で、公共交通の減便が目立っています。そんな中で鹿児島県では、高校生のバイク通学の条件を緩和することで、移動の自由を確保しようとする動きが広がっています。原付免許取得後の講習を後押しする動きもあり、保護者の負担軽減にもつながっています。
将来的に続くバス減便、バイク通学の許可条件緩和進む
全国的に通学困難な生徒のために、学校寮やスクールバスの運営に乗り出す例は珍しくありません。高齢社会が直面する問題はさらに進んでいて、これらの対策も、生徒数の減少と共に継続が難しくなっているのです。さらに、ここに追い打ちをかけているのが、路線の廃止や減便です。地域の公共交通は、路線の維持に努力をしているのですが、登下校の時間にしか運行できないケースも珍しくありません。クラブ活動を行なう生徒の送迎は結局、保護者に頼らざるを得ません。

そんな中で、鹿児島県内の高校ではバイク通学の条件を緩和することで、通学困難者に対応する動きが広がっています。同県教育委員会保健体育課の担当者は次のように話します。
「減便前からバイク通学を認める公立高校はありました。その条件を緩和することで、バイク通学をしやすくする傾向があります。例えば、これまで学校から自宅までの距離が10km以上離れている場合に通学を許可していたが、5km以内に短縮して条件を設定するなどの例があります」
鹿児島県内には県立の全日制高等学校が61校あります。同課によると、2024年にバイク通学を認める高校は61校中46校。市立全日制高校は7校中6校でバイク通学を認めています。全日制高校全体の約75%に当たります。また、定時制高校は2校中1校で認めています。
県内のバイク通学は、山間部の通学困難地域だけに限った対策ではなくなっています。地元紙『南日本新聞』は、鹿児島市にも広がっていると、次のように伝えました。
「鹿児島商業高校(鹿児島市西坂元町)は8日から、生徒のバイク通学を許可する。市内の公立高では明桜館に次いで2校目。(中略)登下校や部活動に支障が出ていることから解禁に踏み切った」(2023年5月3日)
鹿児島市交通政策課は「長期的に運転者が増える方向になく、緩やかに減少する」というバスの将来的見通しに備えるため、鹿児島市交通局を含む市内バス4事業者とバス路線の最適化に取り組んでいます。企業間を超えた路線の最適化や、郊外から中心部への路線の中間に交通結節拠点を置いて利用者に乗り継いでもらうことを実現するために、2024年4月から基礎調査に乗り出しました。
親子同伴の説明会など、安全・安心の対策
バイク通学対象者が増えることで、保護者からの生徒の安全に対する不安は、以前より増していることは否定できません。ただ、一方で、送迎できる家庭とできない家庭の格差を縮める意味でやむを得ないという判断もあります。

県教育委員会では、バイク通学生徒に対する交通安全運転講習の義務付けや、教職員を対象とした講習、小学校の児童や中学校の生徒に対する自転車教育などを繰り返すことで、少しでも安全に通学できることを目指しています。生徒に対する講習は、県営の交通安全教育センターでの実技講習も含まれています。
鹿児島県北部の山間部に位置し、鉄道の廃線、バスの減便に見舞われた「県立大口高校」では、通学困難者に対して、バイク通学を全校生徒の20%に認める一方で、年間を通したバイク安全教育を行なっています。
バイク通学者を対象とした自動車学校での実技講習だけでなく、保護者同伴による説明会、通学バイクの整備不良を指摘するための車体検査、生徒による文化祭での交通安全展示なども含まれています。
また、進路実績を国道の横断幕で発表することでも知られる「県立曽於(そお)高校」では、地方自治体の課税標識(ナンバープレート)の下にバイク通学者であることを示すプレートを付けることで、生徒の運転の自覚を促す対策を行なっています。在校生を示すプレート掲示は、地域で生徒の運転を見守る効果も上げて、県内各地の高校で採用されています。
公共交通の再編には時間がかかりますが、生徒の在籍期間は3年間と短いです。バイク通学は生徒の移動に一役買っています。
Writer: 中島みなみ
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。



