【MotoGP現場ぶら歩き】急遽向かったオーストラリアで、フィリップ・アイランドの天候に右往左往!?
2024年シーズンのMotoGP第17戦オーストラリアGPは、わたし(筆者:伊藤英里)が急遽取材に行くことを決めたグランプリでした。ビザの取得を乗り越えて現地に到着すると、聞いていた以上に、天候がころころと変わる島でした。
取材前の、ビザ・ミッション……!!
2024年シーズンのMotoGP第17戦オーストラリアGPの現地に行くとわたし(筆者:伊藤英里)が決めたのは、第16戦日本GP決勝レース後のことでした。

MotoGPを取材するわたしですが、フリーランスゆえ、経費は実費です。やむを得ず現地取材に行くことを諦めるグランプリもあります。2024年シーズンは、日本GP後の現地取材は最終戦の予定でした。
しかし、日本GPの結果を見て、その予定は大幅に変更となりました。Moto2クラスで小椋藍選手が2位表彰台を獲得し、オーストラリアGPでチャンピオン獲得の可能性が浮上したからです。
日本GP日曜日の夕方、あわててドルナスポーツのメディアマネージャーに相談しました。というのも、オーストラリアGPの現地取材でオーストラリアに入国するためには、ビザが必要だからです。
そして、当然ビザの申請をするにはあまりにも時間が無さ過ぎます。彼女(メディアマネージャー)は困ったように「わたし、数カ月前にビザの件をメールしたと思うんだけど……」と言います。
「分かってる。でも、今日のMoto2の結果で、急遽オーストラリアに行かなくちゃいけなくなったから……」

焦りつつそう伝えると、彼女は「ああ!」と言って「なるほどね(アイがチャンピオンになるかもしれないからね)」という顔をしました。
「申請するには時間が無さ過ぎるかな……?」
「いいえ。やってみなくちゃ!(You try!)」
その言葉に後押しされ、入国まで10日を切った状況でビザ申請を開始。結論から言うと、無事にビザを取得することができました。
日本GP取材のあと、書かなければならないたくさんの仕事を抱えた状態でビザ申請に必要な書類を集めるのは、とんでもなく大変でした(ビザの申請にはたくさんの書類と、その書類を取り寄せるための時間が必要なのです)。
今回はビザ・エージェントのフォローがあるなどして幸運にもビザが取得できたので、これは完全なるイレギュラー、とお伝えしておきます。
余談ですが、ビザ取得をサポートしてくれた人とフィリップ・アイランド・サーキットで会うことができました。「本当にありがとう! 日本人のチャンピオンが誕生するかもしれないから、どうしても来なくちゃいけなかったんだ」と伝えると、やっぱり彼女も「なるほどね」と頷いていました。
雨かと思えば晴れ……。くるくる変わる天候
そうして向かったオーストラリアも、フィリップ・アイランド・サーキットも、わたしにとっては初めてでした。オーストラリアのメルボルン空港から140kmほど南下した、橋で渡ることができるフィリップ・アイランドという島にあります。

レンタカーを走らせていると、フィリップ・アイランドが近づくにつれて、のどかな風景になっていきました。「いつかオーストラリアをツーリングしてみたいな」と思うような風景です。
フィリップ・アイランドはとても小さな島で、田舎町といった風情でした。MotoGPが開催される時期、この島が寒く、天候不順であることは知識としては知っていました。「しかしこれほどとは!」実際に体験すると、まるで標高の高い山のように目まぐるしく天気が変わるのです。
到着した木曜日は晴れていて温かく、「良い陽気」と感じる気候だったのが、金曜日には朝から雨になりました。強い雨のため、MotoGPクラスの午前中のセッションがキャンセルになったほどです。それが、昼過ぎには雨が止み、さらに空が明るくなって、あっという間に晴れてしまいました。
そうかと思えば、18時ごろには再び雨。夜には大雨に加えて強風の嵐になり、宿の部屋にいてもごうごうとうなる風の音が聞こえていました。日曜日は晴れて、3クラスともドライコンディションでレースができたのは、幸いでした。
そして、フィリップ・アイランドと言えば動物たちです。フィリップ・アイランド・サーキットは海がとても近いので、晴れた日には頭上をたくさんのカモメが飛び交います。過去には、走行中のMotoGPマシンにカモメが衝突したこともありました。
今回は衝突こそありませんでしたが、鳥がコースを横断したためにセッションが赤旗中断になったり、走行中にウサギがコースを横切ったり、といったことがありました。

Moto2ライダーの小椋藍選手(2024年シーズン)は、鳥によって中断となったセッションのとき「コースインした時からコース内の芝に鳥がいたので、赤旗になるなと思って走っていた」そうです。
フィリップ・アイランド・サーキットでは、「動物がいるかも」という状況も含めて「コースコンディション」なのかもしれません……。
鳥は一般道にもいます。サーキットと宿の往復の間に何度か遭遇しました。鳥たちは全く飛ぼうとせず、よちよちと歩いてクルマを避けるのです。なぜでしょうか? 普段のフィリップ・アイランドでは、クルマが頻繁に通らないのかもしれません。
最初はぶつかってしまうんじゃないかとハラハラしましたが、だんだん愛着が湧いてきて「気を付けるんだぞ~」と、声をかけながら避けて通るようになりました。
ご存じの通り、オーストラリアGPでは小椋選手が4位になり、Moto2クラスのチャンピオンは次戦タイGPに持ち越しとなりました。
わたしはその状況も想定し、オーストラリアGPからタイGPにかけて、連戦で現地取材の予定を組んでいました。
そうして、オーストラリアのフィリップ・アイランドからタイのブリラムへ飛んだのでした。
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。




















