原付は好調!! なのに前年割れの2024年国内バイク市場 2025年の風向きは変えられるか!?
2024年中のバイク登録・出荷台数の実績が公表されました。近年、40万台を超える好調を続けていましたが、50ccクラスの原付バイクの駆け込み需要を除き、すべてのクラスで前年比減と落ち込みました。
あったのに……50ccバイクの駆け込み需要
2024年中のバイクの国内販売実績が、2025年1月30日の日本自動車工業会二輪車委員会のメディアミーティングで明らかになりました。
2024年1年間のバイク登録・出荷台数は、36万7960台で前年比90.8%に留まりました。3年連続で40万台超と成長の兆しを見せてきましたが、再び伸び悩んだ形です。
とくに顕著な落ち込みを見せたのが、排気量125cc以下の「原付2種」です。前年の約15万台から11万2653台(前年比75.3%)となり、その上位クラスとなる排気量250cc以下の「軽二輪」でも、前年約7万2000台から5万7180台(前年比79.8%)に低下しました。
反対に、排気量50cc以下の「原付1種」は、前年約9万2000台から11万126台(前年比118.6%)に増加しました。
原付1種にも適用される排出ガス規制強化で50ccエンジンバイクの新車販売が無くなることに対して、ユーザーがエンジン車の確保を望んだ結果と思われます。
一方、251cc以上の「小型二輪」は8万8001台(前年比96.6%)で、約9万1000台だった前年よりは低下しましたが、小幅に留まりました。
概況を説明した川瀬信昭企画部会長は、この状況について説明しました。
「楽観視できる状態ではないと認識している。自工会として要因の分析を続けるが、引き続き既存ライダーに長くオートバイに乗っていただける施策を作っていきたい」
日本自動車工業会が示す、2024年のクラス別実績は以下の通りです(クラス=台数/前年比)。
・小型二輪=8万8001台/96.6%
・軽二輪=5万7180台/79.8%
・原付2種=11万2653台/75.3%
・原付1種=11万0126台/118.6%
・総合計=36万7960台/90.8%
ボリュームゾーンである小型コミューターの減少、国内市場厳しい
原付1種クラスと原付2種クラスは台数のボリュームゾーンで、減少傾向に歯止めをかけることができる可能性があります。ただ、2024年に原付2種が大きく落ち込んだことは、2025年の国内市場にも暗雲をもたらす可能性があります。
免許取得の費用対効果が影響し、従来の原付2種の実績は大きくありませんでした。それが原付2種に相当する二輪免許制度の簡素化で、原付1種を超えるボリュームまで成長しました。
2023年の原付2種は、低迷する原付1種の救世主となっています。2021年から2023年の変化は次の通りです。
・原付2種=12万5674台→10万1678台→14万9655台
・原付1種=12万7736台→13万1340台→9万2824台
2024年の原付1種クラスが、50ccエンジンバイクの駆け込み需要に支えられたとすると、その減少分を2025年に原付2種クラスが吸収できなければ、国内市場が低迷することにつながります。
エンジン車の販売ができなくなった原付1種クラスを支えていくのは、125ccバイクの一部を50ccバイクとみなす「新基準原付」ですが、税法改正のタイミングとバイクシーズンの到来がかみ合っていないため、新基準原付モデルの投入が、2025年の販売を支えられるか未知数です。電動バイクの発表も相次ぎ、新たな需要を創出できるか、そちらも注目されます。
さらに、排気量126cc~250ccの軽二輪クラスの減少も気になります。
免許制度上で普通二輪や大型二輪に相当するクラスは、ユーザーが一定と考えられていました。しかし、約7万2000台から5万7180台(前年比79.8%)と、過去5年間で最低の実績でした。
実用の小型コミューターに対して、趣味層のエントリーモデルとも称される軽二輪の減少は、将来のユーザー減少にもつながると警戒感が増しています。
「風向きが変わっている」……2024年のバイク市場では不安の声が多く聞かれました。
2025年、この不透明感を払拭できるのは、物欲を刺激するニューモデルの登場と、ストレスなく乗れる利用環境の向上にかかっています。
Writer: 中島みなみ
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。